第2話 親龍からの提案と聖白龍の誕生
移り変わってゆく洞窟から見える景色にも飽きてきた頃、ある日親龍から提案があった。
(ねぇ我が子よ。そろそろ次の子を創生しょうかと思うのですが・・・)
(お母様の御心のままに・・・。でも、何故今なのですか?)
すると驚きの返事が返ってきた‼
(この星の環境も大分良くなってきたし・・・子供を沢山作りたいのよ)
((ってオイ‼ 私はあんな劣悪な環境で産まれたのに、これから産まれる子には随分と過保護な環境だわよねぇ))
てな顔で無言のままじぃ―っと、見ていた龍の子。
(あら、あなたは暗黒龍なのよ。私と同じで、どんな環境でも生きていける性能があるじゃない)
(初耳ですけど、お母様)
ズイッと顔を近づける。
(あら、そうだったかしら・・・)
((スッとぼけられた))
最近の2人の念話では、多少時間がかかったが親龍の言葉の知識も随分と多くなり転生前の龍の子の母親とそん色ない程度の念話使いとなり、随分母親らしい物になって来たと誇らしげに思っていた龍の子はお母さんからお母様と変え、尊敬の念を含めて呼んでいた。
((そうか、あらゆる環境に耐える身体か・・・でも以前太陽光線で・・・あぁアレは産まれて直ぐの時か・・・ま、いいや))
(それでお母様。次はどんな子を創生するの?)
(一応、あなたも含めて考えた計画はね・・・)
((計画って・・・))
(先ずはどんな環境でも生きている。死なない身体の暗黒龍。それがあなたよ)
(ええっ私、死なない身体なの?・・・)
驚く龍の子を置き去りにして、勝手に念話する親龍だ。
(闇の次は当然光よねぇ。清らかで暖かな光を司る聖白龍でいきましょう)
(えぇ~、そっちが良かったなぁ〜)
聞こえないように小さく念話で話したつもりだが、しっかりと聞き取っている親龍。
だが、あえて聞こえなかったフリをして念話を進めた。
(その次が火と風を司る龍。で次が水と氷を司る龍。最後が土と木を司る龍ね。この星の成長に合わせて性能と能力を分けて創生するの)
(お母様?私を創生してから次の子まで随分と時間が経ちましたが、他の子も同じ間隔で創生されるのですか?)
(それはぁ・・・様子を見ながらよ)
((私が創生されから、感じている時間の間隔では500年位経ったかなぁ?))
実際は数千年経っているが龍の子に実感は無かった。
多少身体が大きくなり、翼もそれなりの大きさになって飛行できる様になりました。
因みに飛行は体内に宿る特別な力で【魔素】を使います。
しかし親龍の説明では良く解らなかった。
(グゥッと力を込めてバァッと翼から発散するようにすればヒュゥッて飛ぶわよ)
などと感覚的な言い方で、固有名称を使わず具体的な説明を行なわなかった為だ。
その為、龍の子が前世の記憶の元に呼んでいる呼称の【魔素】を使う事にした。
翼が大きいと言っても、翼だけで体重を重力から引き離すのは不可能なのだ。
最初は戸惑ったが、そこは”元魔法師見習い”だった龍の子。
コツをつかむと自在に飛べるようになり最速を目指してしまうのだった。
(あなたは初めての創生だったのから、
(そのような大事な事は、説明して下さい! 何も聞いてないですけど、お母様ぁ?!)
チョット天然な親龍に、今更と思い文句を言いながら
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
ある時、龍の子は重要な事に気がついた。
何故この事に気が付かなかったのか不思議でならない。
(お母様)
(なぁに我が子よ)
(宜しければお母様のお名前をお聞かせくださいますか?)
ビックリしたような親龍、しばらくの沈黙・・・
(忘れていましたわ・・・)
((忘れてたんかい!))
(私の・・・私の名前は・・・確か・・・えぇっと・・・スプレムス・オリゴーです)
((スッゴク思い出しているよ))
そしてもう1つ重要な事を尋ねた。
(お母様・・・私には名前が有りますか?)
(勿論よ)
((だったら早く教えてくれれば良いのに・・・))
(あなたは暗黒龍、テネブリス・アダマスです)
(テネブリス・アダマス・・・お母様? どのような意味が有るのでしょうか?)
(フフフッ 私の大切な暗黒結晶。それが貴方です)
((やっぱり暗黒なんだ私・・・なんで今まで名前を思いつかなかったのだろう・・・))
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
そんな事を考えながら自由に外出できるようになり、洞窟の中で試せなかった事をコッソリと隠れて実験しようと考えていたテネブリスだった。
それは魔法。
テネブリスは前世の魔法を密かに試していた。
前世とは違い、膨大な魔素量を持つ龍なので尻尾を振ったり、腕を大地に叩きつけるだけでも、かなりの衝撃が有る。
まして”思うだけ”で魔法の様な効果も現われるのだ。
しかし、炎を思い浮かべるよりも魔法を使う方が明確な場所に範囲や効果が表れた。
((やっぱり魔法の方が楽ね。ちょっと確かめないと・・・))
前世で使えた魔法、それは・・・
転生前の属性魔法である
それとは別の属性魔法は
現在の言葉はガギグゲゴで魔法名称が発音できないと思っていたが詠唱は必要無い。
念じれは魔法が顕現するのだ。
そして親龍の目を盗んでは実験を行い、その結果が
以前とは比べ物にならない威力だった。
他にも生活魔法と戦闘補助魔法も少し使えるので試して見る。
((なんか微妙。この身体で魔法事態が必要なのか疑問だし要らないかも・・・でも使えるだけましか・・・))
転生前に使用していた空飛ぶ乗り物を操作する為の魔法は、現在は使う事は無いと思った。
((まだ戦闘補助魔法の方がこれから使う可能性が有るかもしれないわ))
一通り魔法を試したテネブリスは物思いに
((でもどうして前世の魔法が使えるのかなぁ・・・私は転生者だから? いつの日かお母様であるスプレムス・オリゴーにも言わなきゃ。でも、今はまだ秘密にしていよう))
荒涼とした大地で一匹、蒼穹に浮かぶ月を見上げながら思いを込める黒い龍だった。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
聖白龍の誕生。
転生したテネブリスは、自身の創造主でも有る親龍スプレムス・オリゴーから、
(我が子テネブリスよ、まずは想像するのです。自らの分身を思い描くように姿形を想像するのよ。そして性格、属性などを細かく思い浮かべるの。その子の力となる魔素を周囲の空間から全身で集めなさい。魔素量が溜まったかな~っと感じたら両手で放出して混ぜるように形にしていくの。この時が一番集中するわ。想像力を膨らまてぇ・・・集めた魔素と放出時間でぇ・・・この子の力と強さが決まるのよ)
親龍スプレムス・オリゴーの手から出ている魔素の先には光り輝く球体状の
暫くして魔素の放出が終わる。
(ふぅ、出来たわ)
(凄い、凄い、凄い)
テネブリスが騒ぎ出す。
純白に光り輝く卵はテネブリスとは違い、聖なる神気を帯びていた。
(お母様、どのくらいで生まれるのですか?)
(そうね・・・あなたの時はどうだったかしら・・・忘れちゃったわ・・・)
(あぁあ、可哀想な私・・・ハイハイ聞いた私が間違っていましたよ。この子は私が面倒見て良いかなぁ?)
(あら。あなたが見てくれているなら助かるわぁ)
((私は単に姉として後学の為に知りたいだけだけど・・・私の時はどうだったのだろう・・・多分、放置だ。あの調子じゃ、ほっぱらかしで居たのだろう・・・あぁ可哀想な私))
テネブリスは創生された卵を大事に大事に見守った。
来る日も来る日も・・・
爪を立てないように周りを拭いてあげて、抱え込むように温めてあげた。
そんなテネブリスを親龍スプレムスはたまに様子を見に来る程度だった。
そしてある日、ピシッと音がした。
殻が割れたのだ。
テネブリスは親龍スプレムスを呼んだ。
(お母様、卵が割れました!)
地響きを立てながら、こちらにやってくる親龍スプレムス。
テネブリスはヒビの入った卵を持ちあげた。
(もう少し優しく歩いてくださいお母様)
(あら、ごめんなさいね)
卵を見おろし、暫く見ていると真っ白い首が殻から顔を出した。
(キャ―可愛いぃ)
テネブリスが叫ぶと首が引っ込んだ。
((しまった! 怖がらせたかな・・・))
そして・・・バリッと殻を破り可愛い白龍が出てきた。
((キューキュー言ってる・・・可愛いな・・・私もこんな感じだったのかな?))
(お母様!)
(なぁに?)
(この子の名前は決めているの?)
(勿論です。この子は、聖白龍アルブマ・クリスタよ)
(白龍アルブマ・クリスタ・・・お母様、因みにどのような意味が・・・)
(フフフッあなたと同じく私の大切な聖なる結晶よ)
((なんとなく、そんな気がしたけどね・・・))
聖白龍アルブマ・クリスタを見ていると、視界に入ったモノが有った。
(お母様! 殻はどうするの?)
(どうすると言われても・・・)
(私の時は・・・私の殻はどうしたの?)
(ええっあなたのは・・・あなたがウロチョロして捕まえるのに大変だったわ・・・)
(それで? 殻は?)
(・・・潰しちゃった)
(ハァ・・・解りました。アルブマの殻は私が大切に保管して置きます)
そう言ってテネブリスは大切に洞窟の端に持って行き、こっそりとエスパシオ・ボルサを発動してアルブマの殻を収めた。
産まれたばかりのアルブマは周りをチョロチョロしている。
(アルブマこちらへいらっしゃい)
テネブリスが思念で呼びかける。
アルブマはピタリと止まってキョロキョロ辺りを見渡す。
テネブリスは顔を近づけて教えた。
(アルブマ。私はあなたのお姉さんです。こちらはあなたのお母様ですよ)
キューキュー鳴いているアルブマに念話のやり方を教える。
かつて自分がそうだったように。
(言葉では無く頭に思うのよ・・・)
(・・さ・・・・ね・・・・ねえさ・・・・・・・・おねえさん)
((そんなっ! 産まれたばかりなのに言葉を理解するの!? はっ、まさか。私と同様にこの子も転生者なのかな?))
でも迂闊にその事を聞くにはやめる事にしたテネブリスだ。
もしも違っていたら・・・もしも転生者だったら・・・二つの可能性が有るので様子を見る事にした。
もしもアルブマも転生者であれば、親龍スプレムスが何かしらの力を使い関与した可能性が有ると考えたテネブリスだ。
だが、まだその事を確かめるには、まだ早いと判断して手なずける事にしたお姉ちゃんだった。
(良く出来ました。そうよ、私があなたの姉のテネブリスよ。解らない事は何でも聞いて頂戴)
今のテネブリスからするとかなり小さなアルブマがとても愛らしい存在だった。
なぜなら、こんなに小さいのに意思の疎通が出来るのだから。
テネブリスは前世の息子を思い出し、現世での愛情を注ぐ対象者を見つけたのだった。
成長日記
暗黒龍・・・テネブリス・アダマス・・・生後30,000年、体長31km
聖白龍・・・アルブマ・クリスタ・・・卵の大きさ・・10km・・生後8km
転生前から97万年前の出来事。
テネブリス誕生からアルブマ誕生までは本来長い時間を要するが、龍種の時の流れは惑星の成長や知覚と同じとし、後に発生する生命体とは感受周波が違うものとします。
瞬き一回を数十年とするならば、睡眠は長期間となり地上で産まれて来る生命体とは隔絶したものとなる。
また、今後発生する小さな生命体と意思の疎通を行なう時は、思考速度を相手に会わせる必要がある。
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