異世界冒険者 サブの冒険譚
贅沢三昧
第1話 勇者一行
古びたアメリカのバーのような両開きの扉の奥に冒険者ギルドはある。扉より奥に進むと受付カウンターと呼ばれる飲み屋で言うカウンターが円状に配置されている形だ。そこに見栄えの良い美しい女性が受付嬢として並んでいる。
カランコロンと両開きの扉を開く音が聞こえた。
入ってきたのは黒髪黒目見たことのない服装と二人の美人を率いたひょろい小さな少年だ。
俺は一目でわかった。今回のターゲットはこいつだ。
少年は奥のカウンターに進んでくると受付嬢に話し始めた
「あのーすいません冒険者になりたいんですが登録するのにはどうすればいいんですか」
「ではこちらの冒険者受付票にご記入いただき魔力測定をしていただきます」
受付嬢に渡された用紙に冒険者ギルドの登録事項を記載している少年。その後にお決まりのように持って来られる水晶玉が魔力測定器だ。
受付中に勧められて右手に置いて魔力を測定し出した時にパンという音とともに水晶は砕け散った。
どうやらターゲットで間違いがないようだ。そろそろ俺の出番だ
「おいおいどうなってんだよ。このギルドはクソガキしかいねーじゃねーか」
この台詞を何度喋ったかも分からなくなっている。少年は意外にもこちらを睨みつけてきた。俺の背丈は割と大きく筋肉も隆起しているため、がたいがいいと言うのだろう
「ちょっと割り込まないで下さいよ」
案の定少年は食らいついたようだ
「なんだてめぇは俺を C ランク冒険者のサブと知ってのことだろうな」
言ってる俺が恥ずかしくなるようなセリフだ。いくらギルドの依頼とは言え嫌になる
「知らないわよそんなの」
少年の連れの割と美しい少女が俺に口答えをしてくる。
「割と綺麗なお嬢ちゃんじゃねえかどうだいお近づきに一杯やらないか」
からかいながら少女の胸を揉み砕いてやった
「ちょっと何すんのよ」
胸を隠す仕草をしながら少女は俺と距離を置いた
今度は少年が前に出てきて俺に告げる
「僕の名前は佐藤ゆうき異世界から来た勇者だ。女性にわいせつな行為をするとは許せない」
毎度のことながら責任感だけが強いやつらだ。
「いい度胸だこのサブさまと戦いたいと言うなら表に出やがれ」
ハッキリ言おうこの少年は弱すぎる。自称CランクだがSランク登録の俺にとって余裕とも思えるスピードだった。
さて、そろそろわざとやられるか
相手の剣をよける振りをしながら、ワザと切られる。 切られた瞬間にヒールをかけて薄皮一枚だけ切られたように見せかける。
今度の勇者で37人目だ。魔王に挑んで言ったものの誰一人帰ってこない。きっとこいつも帰ってこないだろう。
一人目の勇者は俺にビビっていたのが懐かしいくらいだ。最近現れる勇者はモブだとかテンプレキタとか言って笑っている。
今度の勇者は弱い。こいつを送り出してもいいのだろうか。
だが仕事は仕事だ。残念ながらワザとやられることにする。
「カッコいい」と一緒の女性に言われながら次は許さんと去って行く勇者一行。
そんな勇者一行を遠くから眺めているだけだった。
酒場で後悔しながら酒を飲む俺ははっきり言って悩んでいた。いくら自信をつけさせる為とはいえ、死地に送り込むのはうんざりだった
「やってらんねーぜ、バローメ」
そんなグダグダな俺にバーのホステスがこういった。
「そんなに気になるなら助けに行けばいいだろ」
はっと気が付いてしまった。そうか助ければ良いんだ。いや助ける前に俺が魔王を倒しておけば良いんだ!!!
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