4-6 無情の刃と復讐者

 1歩、2歩、3歩、そして急加速。ヴァルフレアが尋常ならざる速度で斬りこんできたが、しかしそれを堰き止めたのはレイズが生み出した炎の壁であった。


「ただ炎を放つだけではないか。応用が効く力だ」


 ヴァルフレアが足を止めたその眼前で、炎の壁はすぐに散っていく。火の子が空気に溶け、壁の向こうから――少年のいたずらな笑みが垣間見える。


「行くぜ、剣帝」


 その直後、炎と入れ替わる形で灰色の煙がヴァルフレアの眼前で膨れ上がった。


「煙玉……」


 ヴァルフレアは煙から逃れるために後ろへ跳んだ……と、いきなり煙を突っ切ってなにかが飛んできた。ヴァルフレアの左右をいくつも通り過ぎていくそれの正体を、彼の眼はすでに見切っていた。

 捉えたのは、琥珀色の小さなエネルギー弾であった。


「……やつのハンドガンか」


 ヴァルフレアの脳裏に過ぎったのは、遺跡で自身と対峙したニルヴェアが構えていた小さな銃。また、それがここしばらくで出回っている試作武器であることもヴァルフレアは知っていた――それが女子供の護身用であることも、精度や威力に難があることも。


「あの距離に加えて煙玉越しの射撃……ハナから囮か」


 当たらぬ射撃に付き合う気はない。ゆえにヴァルフレアは弾丸を無視して視線を動かしていく。右へ、左へ。


(どこだ、レイズ)


 それともあえての正面突破か――と、不意に気配を感じたのは。


「上か」


 瞬間、彼が頭上へ向けて跳ね上げたのは左の一刀。そして断ち切ったのは紅の光弾。本来なら着弾後に爆発するはずの光弾は、その中心から真っ二つに斬られてそのまま大気へと霧散した。

 だがヴァルフレアはそれを気にも留めず即座に背後へと翻った。すると、目が合った。すでに背後に着地していた紅き炎の少年と。


「その心臓、貰うぜ」


 紅槍を展開した琥珀銃を右手に構え、低姿勢から体を跳ね上げ突撃してくる。宣言通りヴァルフレアの心臓を狙うその一撃に対し、しかしヴァルフレアはその槍と平行になるよう体を回した。体の向きを変える、その最小限の動きだけで刺突を紙一重で躱し、


「貰うのはこちらだ」


 レイズの伸び切った胴体に斬りかかる。だがその瞬間、レイズは”予め準備していた”左手をヴァルフレアへと突き出した。開かれた手のひらには、すでに光が灯っている。


「アンタとまともに斬り合うわけねーだろ!」


 光が爆破となったその瞬間、「む……!」ヴァルフレアはすでに後退していた。続いて彼の視界にぐわっと炎が拡がった。


(ここまで遺産を制御下に置き、戦闘に織り込むか……想定内ではあるが、だとしてもやはり厄介……)


 奇襲に次ぐ奇襲。炎に次ぐ炎。その全てを退けてもなお、ヴァルフレアは警戒を緩めず眼前の炎へと集中する。


(気配がある。炎の向こうから殺気が近づいてくる)


 炎が散り、気配の正体が露わになる。


(次はどう来る、レイズ……)


 紅蓮の世界をこじ開けて――1本に束ねられた金色の髪が、熱風の中で踊っていた。


「兄上っ!」


 炎の向こうから突っ込んできた気配。その正体はニルヴェアだった。彼女はなぜか空の両手を前方へと突きだしていた。


(無謀な!)


 ヴァルフレアは反射的にそう断じて、刃を振りかざそうとする、が。


「っ!」


 一瞬の判断――結果的に突き出したのは、脚であった。

 ヴァルフレアはそのまま”壁”を蹴り、その反動で後方へと跳躍。とん、と軽く地面を鳴らして着地して、面を上げればそこには在る。


「……『絶対防御』か」


 ピンと突きだされた両腕。手のひらから展開されている蒼い光の盾。展開しているのはニルヴェアであった。

 そしてその隣に寄り添うように、炎の遣い手たる少年が立った。


(二重の遺産による連携コンビネーション。これが、こいつらの……)


 ヴァルフレアは立ち止まった。彼は立ち塞がる光の盾――いわく『絶対防御』へとその目を向けると、自らの記憶を引っ張り出してそれを語る。


「人造偽人が本来持つ力のひとつ。絶対防御とは即ち超高密度のエネルギー障壁であり、その強度は歴代の剣帝であろうと断ち切れなかったと聞く……」

「絶対防御ね……なんだ、知ってたのかよ」

「まさか発現できるとは思わなかったがな」

「貴方がむりやり引き出してくれたおかげでコツを掴めたんですよ。蹴り飛ばしたのは斬れないって分かっていたからですか?」

「……」


 ニルヴェアの挑発にヴァルフレアは答えなかった。

 その代わりに彼は抜き身の双剣を鞘に――鞘型の琥珀武器に収めた。そしてそのまま右手の柄の”トリガー”を引きながら剣を持ち上げる……すると、その細みの剣には不釣り合いなほどぶ厚い鞘が、剣を納めたままホルスターから引き抜かれた。


「断ち切れないものを断ち切れないままで、剣帝は名乗れん」


 ヴァルフレアが鞘ごと掲げてみせた一刀。

 それを見てレイズが思い出したのは、決戦前の作戦会議の一幕であった。


(あんときニアが言ってたな。光の斬撃……)


 ――兄上の剣は、その柄に付いているトリガーを引くことで鞘型の琥珀武器と連結する仕組みになっているんだ。そして……


(トリガーを引くと同時に起動を開始して、鞘から熱線レーザーをぶっ放すんだってな!)


 レイズはすぐにニルヴェアの背後へと下がった。それとほぼ同時にヴァルフレアは鞘付きの一刀を左へと振りかぶる。すでに鞘の先端には琥珀色の光が収束していて、


「遺産の力……測らせてもらうぞ!」


 剣の帝王が、光の斬撃を解き放った。

 軌道は横薙ぎ。射程は部屋全体。琥珀色の熱線は容赦なく部屋の壁を抉り、融解させながらも止まることなくニルヴェアたちへと襲いかかってくる。

 しかしレイズは、そして彼の前に立つニルヴェアは逃げなかった。彼女はその両手に『絶対防御』を展開したまま足腰に力を込めて踏ん張り、そして祈る。


(レイズの槍だって効かなかったんだ。止められる、止められる、止められる――)


 轟! ニルヴェアの眼前、蒼い光の向こう側が琥珀色に染め上げられ、バチバチとエネルギーの弾ける音が耳をつんさく。

 しかし、衝撃は思いの他感じなかった。やがて光の衝突も静かに収まっていった……ニルヴェアが立っている背後以外の壁は抉られ、あるいは高熱で溶けて煙を発していた。それでもニルヴェアは、そしてレイズも無事であった。


「と、止められた……」


 ニルヴェアはほんの一瞬気を緩めかけて「来るぞ!」レイズの声に背中を押されて前を向いた。

 すると空になり鞘から排出された琥珀――を置き去りに、ヴァルフレアが突撃してきていた。いつの間に抜剣したのか、その両手に再び抜き身の双剣を握りしめて。

 透き通る光盾の向こう。天井の光に煌めく二刀が、ニルヴェアの視線を釘付けにする。


(ひとつひとつのアクションがめちゃくちゃ速い……聞いたことがある。鞘そのものを琥珀武器とする都合上、高速の抜刀&納刀技術を会得しているって。これが、本物の剣帝の――)


 ほんの一瞬見惚れかけて、しかしすぐに「のぞむところだ!」絶対防御を張ったまま待ち構えた。

 するとヴァルフレアは、今度は絶対防御に対して真っ向から二刀を同時に振り下ろし――ガガガガガガッ!


「っ――!」


 ニルヴェアの腕から肩へそして足腰へと、強烈な振動が襲いかかった。ニルヴェアは見切れなかったがその瞬間、一刀に付き五閃。合わせて十閃もの斬撃が盾を斬りつけていた。

 しかし、それでも絶対防御は傷つかない。ニルヴェア自身は斬撃に押されて後ずさったが、しかしそれだけであった。


「なるほど」


 なにかを納得したかのようにそう呟いたヴァルフレア――の左から、レイズがいきなり光の槍で奇襲を仕掛ける。

 狙いは再び心臓一点、と見せかけて、レイズは右手に握る銃から光の槍を消し去った。そして代わりに左手を突き出し、爆破!


「またその手の合わせ技か」


 ヴァルフレアもまた、先ほどの焼き直しのように見切り、躱し、下がって、そして気づいた。

 己が体を喰らおうと追いかけてくる、爆破の連鎖に。


「なにっ……!?」


 まるで数珠でも繋ぐように、炎の中から新たな炎が二度三度と膨れ上がり、ヴァルフレアへと向かって爆ぜていく。普通の炎では有り得ないその挙動はヴァルフレアを捕らえることこそ叶わなかったが、しかし彼と少年少女との距離を否応なしに引きはがした。


「やはり、エグニダの報告よりも火力が上がっている……?」


 大気へ溶けゆく炎の向こうで、レイズがその質問に答える。


「俺もおかげさまでコツを掴めてきたぜ。たまには暴走すんのも悪くないな」

(まさか成長しているのか、この戦いの中で……!)


 堂々と立ちはだかるレイズへと、ヴァルフレアは警戒をより深く強めた。

 そしてその一方で、レイズの背中を見つめるニルヴェアもまた、ひとつの確信を深めていく。


(押している。僕らが兄上を押している!)


 琥珀武器による熱線。双剣による斬撃。そのどちらにも光の盾――絶対防御は破れない。

 そしてレイズの炎もまた、ヴァルフレアの接近を許していない。


(僕らの力は兄上にも通用する)


 そこに加えて、ニルヴェアの目は捉える。


「光と炎、二重の遺産は伊達ではないか……」


 ヴァルフレアの表情にわずかだが、しかし確かな陰りができたのを。動揺は隙間だ。隙間はこじ開けるものだ。


(ここだ。あの人が僕らの力に慣れる前に、もうひと押し!)


 ニルヴェアは絶対防御を構えたまま、大声で叫ぶ。


「この程度かよ、剣帝ヴァルフレア・ブレイゼル!」

「…………」


 ヴァルフレアはなにも応えなかった。それどころかその目をニルヴェアからそらし……というより興味ないと言うように視線を外して、自らの腰に付けているいくつかのホルスターのひとつへと手をかけた。そこに収まっていたのは、新品の琥珀であった。

 しかしニルヴェアはニルヴェアで、そんなヴァルフレアに構わず叫び続ける。


「そうだ。貴方は僕に応えない。それどころか遺跡で再開してから僕の名前すらろくに呼んでいない!」


 ヴァルフレアはホルスターから琥珀を取り出して、先ほど撃ち切った鞘型の琥珀武器へとゆっくり嵌めこみ、リロードを行っていく。ニルヴェアの訴えをBGMにして。


「貴方は執拗に僕のことを兵器扱いし続ける。まるで自分が非道だって、僕のことなんて最初からどうでも良かったっていうように! でもそれは『剣帝』のやり方じゃないだろ! 断ち切れないものを断ち切れないままで剣帝は名乗れないっていうんなら、目をそらすな!」


 ――お前がお前で在り続ける限り、お前は俺の弟だ


「僕を、貴方の弟を、ニルヴェア・レプリ・ブレイゼルを殺すって、それくらい言ってみろよ!!」


 ……そして、ニルヴェアは見た。レイズも見た。

 ヴァルフレア・ブレイゼルの双眸が、今度は明確に見開かれた瞬間を。その焦点がはっきりと、ニルヴェアただひとりへと合わせられたのを。


「そうか。そうかもしれないな……」


 ヴァルフレアが再び、ゆっくりと双剣を掲げた……剣は2本とも、鞘に収まったままであった。そして彼はその鞘の先端を2本とも、ニルヴェアへとまっすぐに向けた。


「来る……!」


 ニルヴェアが歯を喰いしばり、絶対防御を掲げた。

 そしてレイズはその後ろで、この一瞬だけ呼吸を殺し、思い返す。


 ――兄上は兄上のままで、だからこそあの立ち振る舞いには矛盾を感じる。だからまずはそこを突いてみようと思うんだ。


 ――ってーことはアレか? 精神を動揺させてその隙を突くってやつか?


 ――いや。正直ちょっと痛いところ突かれたくらいで兄上が動揺したり動きが鈍るとか、そういうのはないと思う。だけど……僕に集中してくれるかもしれない。お前のことが一瞬でも視界から外れるかもしれない。そうしたらレイズ、お前は……


(こっからこじ開けるのは、俺の仕事だ!)


 二対の鞘の先端に光が収束していく。しかしそれに先んじて、レイズが光の槍を展開した。


(さすがに鞘を持ち上げた状態から、剣を抜くことはできないだろ)


 レイズはニルヴェアの背後から飛びだして、その斜線から外れるように回りこんでいく。


(トリガーを引き、鞘と連結した時点でチャージは始まっているんだ。あの熱線の反動も考慮すりゃあ、おそらく姿勢だって下手には動かせない……)


 光槍を構え、ヴァルフレアへと狙いを定めて、一直線に飛びこもうとする。


(2本とも構えたのが仇になったな――ちょっと待て。2本?)


 なにかが引っかかり、その足を止めた――その一瞬。ほんの一瞬、ヴァルフレアの双眸がレイズを捉えた。


「――――!」


 レイズの脳裏を怖気と閃きが同時に貫いた。そうだ、悪寒の正体は!


「ニアッ、逃げろーーーー!」

「え?」


 突然の叫びにニルヴェアが呆けた表情をレイズへと見せて――その表情も、光の中にかき消える。

 世界が、爆発した。

 どこか爆心地かも分からない。部屋全体を覆うような光と、音と、爆風と。それら全てが収まったあと……どさり。軽い音がひとつ、鳴った。

 やがて部屋中を覆う煙が少しずつ晴れていく……その中から、レイズが五体満足の姿を見せた。


「くそっ……!」


 なんとか爆発の範囲から逃れたレイズは、急いで周りを見回した。すると消えゆく煙の間に、荒れ果てた地面の上に、探し人の姿を見つけた。


「ニアッ……!」


 ニルヴェア・レプリ・ブレイゼルが、壁のすぐそばで倒れ伏していた。うつ伏せで倒れているあたり、背中から壁にぶつかったであろうことは想像に難くない――


「この二対の琥珀武器は、微妙にその性質をずらしてある」

「っ!」


 声を発したのはレイズではない。もちろんニルヴェアでもない。もっと凛々しく、気高く、落ち着いた青年の声だった。


「やってくれたな、てめぇ……!」


 レイズが憎々しげな視線を向けたその先に、ヴァルフレア・ブレイゼルは立っていた。二対の鞘をホルスターへと戻しながら。


「特定の2種の琥珀エネルギーをぶつけることで、それらが反応し合って爆発と化す現象……インパクト・ボム。琥珀に近しい力を宿すお前なら、知らぬものでもないだろう」

「ああ、まったくだ……」


 レイズはその幼い顔に強気な表情を保ちながらも、しかしその内心では冷や汗をかいていた。


(まずったな……)


 確かに絶対防御には斬撃も熱線も効かない。しかしその防御は絶対であって絶対ではない。その隙間を突かれたのだ。


 ――物理的衝撃のない熱線はともかく、今のような斬撃では盾こそ破れずとも体勢を崩される可能性はある


 ヴァルフレアの狙いは絶対防御ではなく、それを扱う本人のノックダウンであった。いかに堅牢な盾であろうとも衝撃は防げない。小さな体の軽さだって誤魔化せない。すでに、なにもかもが見切られていた。


(完全に上をいかれた。くそっ、琥珀武器が2つあるならインパクト・ボムを使う可能性も思いつけたはずなのに……いや、そこまで計算済みか!)


 室内なら爆発系の攻撃など使用しないはずだ。あれだけの出力の熱線なら1本ずつしか使用しないはずだ。双剣使いで2対とも同じデザインなら、その中身だって同じなはずだ……


(そういう思いこみを利用された。そんでもって、ニアがあっさりぶっ飛ばされたってことは、あいつもこれは知らなかったはずだ……)


 レイズの思念を読み取るように、ヴァルフレアが言葉を放つ。


「よもやカタログスペックが全てだと思っていたのか?」

「っ――――!?」

「条約に、大陸全土に反旗を翻そうというのだ。公開していない切札のひとつやふたつ持っていない方がおかしいというもの。そもそも、俺はすでに『なにもかもは空虚な嘘だ』と言ったはずだがな……」


 ヴァルフレアは二対の鞘から、今度は剣だけを引き抜いた。


「とはいえたしかに、俺の無意識下には甘えがあったのかもしれない。だがそれもまた単なる障害。いずれにせよ断ち切るだけだ……」


 ヴァルフレアは倒れて動かないニルヴェアへと視線を向け、そして断言する。


「俺の弟。ニルヴェア・レプリ・ブレイゼル。俺は、お前を、殺す」


 言葉と共に、剣帝が踏み込んだ。その剣が狙うは倒れ伏した弟の、


「させるかよっ!」


 すかさずレイズが琥珀銃で応戦。光弾を放ったが、やはりあっさりと斬り捨てられた。


「ちっ、エネルギー弾をぶった切るってどーなってんだよ」


 レイズは舌打ちしながらも、琥珀銃を携えてニルヴェアの前に立ち塞がった。そして迫りくるヴァルフレアへと一喝。


「おい、剣帝!」


 するとヴァルフレアの足はすぐに止まった。それを見てレイズは考える。


(やっぱり。なんでか知んねーけど、こっちが喋りゃ応じてくれるわけだ)


 レイズは背後のニルヴェアへと意識だけを向けて語りかける。


(俺は俺の役割を貫くぞ。だからニア、お前も……!)


 役割を貫くそのために。レイズはヴァルフレアへと問いかける。


「そーいや大事なことをひとつ聞き忘れてた」

「なんだ」

「動機だよ、どーき。条約を壊して王様になる。そりゃなんのためなんだ? 世界征服して喜ぶタマでもなさそうだけど」

「……」


 それに応えて、ヴァルフレアはゆっくりと口を開く――その前に、レイズが先んじて自ら答える。


「死んだ百人の仲間。その復讐か?」

「…………」

「アンタの部下が全滅したっていう鋼の都攻略戦……その真実は神威による実験と虐殺だったんだってな。そんでエグニダから聞いたぜ。アンタは神威を利用した上で潰すつもりなんだって。なぁ、アンタの本当の目的は神威への」

「それもある」


 短い一言。波風立たせぬ声音。だがそれでも、妙に良く通る声であった。


「なに……?」


 レイズが眉にしわを寄せて語りを止めた。その間隙を突くように、今度はヴァルフレアが語り始める。


「常在戦場。眼前では常に脅威が牙を剥いているというのに、俺たちは常に条約という鎖に縛られている。条約が国を領へと貶め、武力さえも縛り、それゆえに領間のパワーバランスを大きく崩す遺産も……例えば人造偽人なども封印されてしまった」

「政治のことはよく知んねーけど……でもしょうがねーだろ。上手い具合にバランスとってみんな仲良くやってきましょうってのが条約の」

「単なる人と人との繫がりなら、それでも良かったのだろうな」


 またもヴァルフレアはレイズの言葉を断ち切った。


「しかしこの大陸には獣という名の暴力が、あるいは神威を始めとする悪意がはびこっている。人外の力そのものと、人外の力を求める者と。それらから目をそらして武力の縮小を強制した結果……ダマスティ領は神威の傀儡となり、そしてあの戦争が起こったのだ」

「じゃあなにか? 条約がなけりゃそもそも戦争自体が起こらず、アンタの部下も死ななかったってわけか。そんで戦争を起こしたのが神威とはいえ、それを隠蔽して事実を捻じ曲げたのもやっぱり条約だ。だからアンタは条約をも恨んで」

「それもある」

「っ!」


 3度目の断絶が、レイズの背筋に悪寒を走らせた。理屈ではなく直感が、説明のつかない悪寒を走らせた。


「ちょっと待て。さっきからそれもそれもって……神威や条約への復讐以外にアンタが王になりたい理由なんて、弟や父親を殺してまで大陸を統べる理由なんてあんのかよ!」

「今も、聞こえるんだ」

「は……?」


 その瞬間、剣のような双眸が静かに伏せられたのをレイズは見た。


(あの目、どこか似てるような)


 ほんの少しだけ脳裏に過ぎったのは、どこぞの女侍の後ろ姿だった……しかし、違う。目の前のこいつは、明確になにかが違う。


「俺自身が選りすぐった精鋭たちは皆、その俺に”未来”を託して死んでいった。将来が楽しみな部下がいた。生涯の友と誓った者もいた。背を預けるに足る仲間も、尊敬すべき師も……俺が彼らを殺した。皆、ずっとここにいる」

「なに言ってんだよアンタ」


 ヴァルフレアの言う『ここ』がどこなのか、レイズには理解できない。


「あのときの声が、託された祈りが、耳に焼き付いて離れないんだ。みんな俺の背中を押してくれている。剣帝になれと、未来を創れと」

「なんなんだ、アンタは」


 そのとき、レイズの耳に声が届く。いくつもの、声が届く。


『僕らの分まで』『君ならば』『お前しか』『貴方様なら』『貴方だけが』『てめぇだけが』『お前だけが』『貴方だけが』


 ――未来の剣帝よ


「!?!?!?!?」


 その瞬間、ヴァルフレアと相対しているという現実が頭から消えた。全てを忘れて背後を振り返ってしまった。

 だがそこには、倒れ伏しているニルヴェアしかいなかった。


「っ……っ……!?」


 声はもう聞こえなかった。代わりに心臓の音がうるさい。喉もからからに乾いている。

 振り向くのが恐ろしくて、それでも気力を振り絞り……やっと、振り向いた。

 ヴァルフレアは変わらぬ様子で、斬りかかることもなく、ただそこに佇んでいた。


(今の、単なるイメージか? こいつの語りが、そうさせただけ? でもこいつには、まさか、聞こえてるのか、あんなものが、ずっと)

「だから俺は忘れないでいられる。過去の誓いも、掴むべき未来も」

「未来……?」

「全部だ」


 レイズは乾いた喉で、ごくりと唾を飲み込んだ。


 ――なんでそこまで頑なになる。それは使命感か? 復讐心か? それとも……


 ――全部だ


(兄譲り、か……!)

「俺は全てを認めない。彼らの死が汚され、忘れ去られることも。このまま武力を縛られ、人外どもに蹂躙され続けることも。条約などという実態無き空虚に己が行く末を託すことも。彼らの命を踏み台にしておきながら、ただの領主として生涯を終えることも……!」


 ヴァルフレアの語気が徐々に強まっていく……それと共に強まっていくものがもうひとつ。


(やっぱりだ。体が、重い……!)


 己の両肩に、なにかがしかかってきている。戦闘前にも感じた倦怠感と同質で、しかしそれよりもはっきりとしたなにかが。


「貫くためなら俺の現在いまを全て捧げても構わない。俺自身を殺したって構わない」

「めちゃくちゃ言ってやがる。正気じゃねぇな、アンタ……!」

「正気ひとつで掴み取れるなら、そんなものはいくらでもくれてやる――それで、問答は終わりか?」

「ぐぅ……!」


 視線一閃。揺るぎなき瞳に斬りつけられて、レイズの四肢が勝手に竦み上がり固まった。しかしそのおかげで、レイズはようやく思い至ることができた。己が体に圧しかかるなにかの正体に。


「優れた剣士は気配すらも剣と成す……だったよな」


 およそ半年、ナガレとして自らを育て上げた女侍。彼女のそれと似て非なる、あるいは非だが似ている威圧感プレッシャー


「アンタは意図的に俺を威圧し続けてきたんだ。例えば視線で、立ち振る舞いで、それにこういう喋り合いでも……だからわざわざ問答にも応じてる。俺の精神を追い詰めるために」

「その通りだ……旅客民のレイズ」

「ああ?」

「お前たち4人の中で俺が最も警戒しているのは、お前だ」


 レイズの頬からは汗が垂れている。もはや1粒どころではなくいくつも、いくつも。


「……そりゃどーも。剣帝に目をつけられた、なんて聞いたらニアあいつが嫉妬するだろーさ」

「齢15というその若さ。その上で旅客民としていくつもの死線を潜り抜けてきた経験。加えてその肉体に埋め込まれた遺産の力……お前の中の”可能性”は、あまりにも大き過ぎる」


 ヴァルフレアは再び双剣を構え、威風堂々と仁王立ちを見せつけてきた。部屋中に充満する、王の威圧と共に。


「ならば俺はあえて受け身に回ろう……お前が遺産の力を振るうなら、真っ向から断ち斬ろう。ニルヴェアを使って精神的に揺さぶりをかけるなら、その全てを受け止めよう。旅客民らしい奇策を講じるなら、むしろ飛びこみ打ち破ってみせよう」


 罠も逃げ場もない闘技場で、全てを断ち切る剣の帝王が宣言する。


「だからお前の全てを懸けて来い、旅客民のレイズ。俺はその策を断ち斬り、その魂までもを断ち斬り……お前の全ての可能性を、完膚なきまでに断ち斬ってやろう」


 狂える暴威のど真ん中。少年がなんとか声を絞りだす。


「やれるもんならやってみろ」


 その声はだだっ広い闘技場の中において、あまりにもちっぽけであった。


(冗談だろ……完全に気圧されてんのかよ俺。なぁおい、勝てるビジョンがなにも思い浮かばねぇんだけど)


 ちっぽけな心と体を覆うのは果てしない無力感。その場に立ち尽くすレイズへと、剣帝が問いかける。


「もう策が尽きたのか? あるいはそれも策の内か?」

「さーね……ビックリ箱は開けてみてからのお楽しみってな」

「一理ある。なら……斬り開いてみるか」


 ヴァルフレアはそう言うやいなや一気に飛び込んできた。半ば跳躍するように地を駆け抜け、双の刃をぎらつかせる。


「っ、来るなぁ!」


 レイズはどこか悲鳴のような叫びを上げて、それでも腰のポーチから淀みなく閃光玉を引き抜いて、ヴァルフレアの手前の地面へと放り投げた――しかしヴァルフレアは”空中”へと剣を一振り。それだけで、終わった。


(爆発……しない!? まさか地面にぶつかる前に斬ったのか、あんな小さい玉を!?)


 しかしレイズが驚愕しようともヴァルフレアは止まらない。彼我の距離が残り3歩ほどまで迫り、


「ざっけんな!」


 レイズが左手を突き出した。そして燃え上がる。

 またも炎を壁にして、足を止めた隙に回りこみながら距離を取っていく。そこにはヴァルフレアをおびき寄せる意図もあった。


(ぶっ倒れてるニアを巻き込むわけにはいかない。だからって、絶対防御がないから近づけもしない)


 ヴァルフレアは消えゆく残り火の前に立ち、回りこんだレイズから見れば背を向けているところだった。


(今はとにかく距離を取るしかねぇ。取ったら取ったで熱線が飛んでくるけど……)


 銃から光弾を3発。トリガーを引いて撃ち込んでいく合間にも思考を続ける。


(あの熱線がいくら強力でも、1発撃たせりゃ空になるのは確認した。そんで双剣使いなら鞘が2本で合わせて2発。だったらむしろ全部撃たせて、その隙に仕掛けるか……!)


 レイズが覚悟を決める中、ヴァルフレアが振り向く。彼は飛んでくる光弾に対して振り向きざまに左の剣を軽々と振るった。

 一閃、二閃、そして三閃。光弾はやはり断ち斬られ、花が散るように消えていく。


「だからなんで斬れるんだ――」


 レイズが文句を言い終える直前にヴァルフレアが振り返りきった。そこで、レイズの視界にようやく映った――”鞘に収まった”右の剣が。

 鞘にはすでに光が迸っていた。


「やっべ」


 そのまま放たれた横一閃。その軌跡は極太の光と化してレイズを薙ぎ払おうとしたが、しかし紙一重でレイズの反応の方が速かった。


(1発目!)


 小柄な身を素早く屈めれば、髪が焼かれるぎりぎりのラインを光の斬撃が通り過ぎた。

 しかしすぐに顔を上げれば、ヴァルフレアはすでに左の剣を鞘に納めていたわけで。


(もうかよ! アカツキの居合みたいなもんか!? だが……)


 ヴァルフレアは間髪入れずに左の剣のトリガーを握り、そのまま一気に引き抜きすくい上げる!

 今度は縦一閃。床を焼きながら迫りくる熱線に対し、レイズは銃を腰のホルスターへと納めた。両手を空にして、それから思いきり跳んで躱す。靴のつま先を熱線がチッと掠めた。


(これで2発目!)


 回避はできたが体勢は崩れた。腹ばいになって床を滑ってしまったが、しかしレイズは冷静に、すぐ起き上がろうとする。


(これで撃ち切り! 今度はこっちの番――)


 ヴァルフレアが、小さな声で呟く。


「崩れたな」


 レイズは床に手をついて、ばっと面を上げた……ところで。


「なぁっ!?」


 驚愕。その瞳にヴァルフレアの掲げた剣が映りこむ。

 それは先ほど熱線を撃ったはずの左の剣。それは鞘に納まったままの状態で、高らかと振りかざされていた――その先端では、すでに光の収束が始まっている。


(おい、待て、マジか!?)


 これぞ、高速の抜刀および納刀技術を応用した、高速のリロード技術である……とはいえこの技もまたニルヴェアが知らない非公開情報であり、ゆえに当然レイズが知るよしもないのであった。


(ま、ず、い)


 レイズの視界の中で、ヴァルフレアが光の斬撃を振り下ろす。その軌道は左上から右下への袈裟斬り……とはいえ軌道もなにも、極太の光はひとたび命中すれば少年の全身などたちまち呑み込んでしまうだろう。良くて致命傷、悪ければ死体の判別すらつかなくなる。


「くっ、そ、がぁ!」


 ぼぅっ! 熱線が来る前に先んじて、床についていたレイズの手のひらから炎が放たれた。その勢いで体を一気に跳ね上げて、そのままぐぐっと姿勢を反らした――直後、レイズの眼前を熱線が横切った。じゅうっと布が焼ける音こそ聞こえたが、それでも紙一重でかわすことができ、


「しまっ……!」


 焼き切られたのは、武器と道具を納めていたベルトであった。それがずるりと腰から落ちていく感触が、レイズの焦燥を一気に膨らませる。


(嘘だろっ、早く回収を――っ!)


 またも背筋を走った怖気。ナガレの直感がベルトではなく、先ほど放たれた熱線の方へとレイズを向かせた。しかし、それでも遅かったのかもしれない。


(はや、すぎる)


 一刀のように美しい銀の髪。一閃のように鋭い眼光。やつの手には、すでに抜き身の二刀が握られていた。やつはすでに、レイズの眼前まで迫っていた。

 やつは最短距離で、一直線に、右の剣でレイズの肉体を突き穿とうとしていた。はっきりと見えている。だが見えていようと、今の無茶な体勢では。


(かわせない)


 凶刃が、迫る。



 ◇■◇



 長く、分厚く、そして速い。片刃の大剣が炎にその背を押しこまれ、獲物を潰し斬らんと一気に迫る。が、


「――遅い」


 刀身に走った閃光。瞬間、そこから刀身が真っ二つ。その上側があっけなく、あらぬ方向へと飛んでいき、大剣の使い手――黒騎士エグニダが舌を打つ。


「ちっ……!」


 エグニダの眼前では、女侍が居合の姿勢で構えていた。

 エグニダは一度跳んで後退しつつ右手をかざした。すると右腕を覆う鎧の隙間からぼこり、ぼこりと赤黒い肉塊がはみ出して、それはすぐに細長い触手となり女侍へと襲いかかった。その数は合計4本。文字通り四方から弧を描いて迫っていく。

 だが、それもまた。


「拙者の言えたことではないが、芸がないな」


 居合一閃。さらにもう一閃。たった2度の抜刀で、触手は全て断ち切られた。


「ぐぅ……!」


 触手に神経でも通っているのか、エグニダの顔に苦痛がにじんだ。そしてアカツキが言い放つ。


「拙者は弟子たちの援護に向かわねばならぬのだ。悪いが、お前にかかずらっている暇はない」


 アカツキは居合の体勢のままさらに深く腰を落とし、そして躊躇なく踏み込んだ。だがエグニダもまた真っ向から挑む姿勢を見せる。


「悪いが俺には用があるんでね。まずは”試運転”に付き合ってもらうぞ!」


 エグニダの叫びに呼応するように、突如その身に纏う鎧が変形を始めた。がしゃんっ、がしゃんっと腕や脚、あるいは肩や腰の一部分が展開して、そこからキィィと風を切るような音が鳴り――ごう!

 響いたのは爆音。開いた鎧の隙間から炎が一気に噴き出して、エグニダの体を加速させた。彼は今までとは比にならない速度でアカツキへと迫ると、先ほどレイズに潰された左手を――しかし未だ黒鎧を纏っている大質量の左手を、まるでハンマーのように乱暴に振るった。

 しかし、それでも。


「秘密兵器、というにはまだ足りんな」


 ほんの一瞬の交差。

 瞬間、アカツキの背後で「ぐうっ!?」絶たれたのは左腕。真っ黒な血飛沫を上げながら宙をくるくると舞い、やがてどしゃりと地面に落ちて転がった。

 左腕を失い、額に脂汗をにじませて、エグニダが振り返った。その視線の先では、ぼろ布が黒の血飛沫を受け止めていた。

 しかしぼろ布はふと甲板を流れてきた風にふわりと連れ去られて、代わりに剣道着を纏った女侍が姿を現した。彼女の瞳は、まるでエグニダの全てを見透かすようにじっと細められている。


「やはりその鎧、それに大剣も。レイズの銃と似た仕組みでエネルギーを転用しているようだな。大剣のブーストを琥珀のリロードなしで使えるのもそのためか。もしやレイズを参考にしてその身に遺産でも埋め込んだか?」


 問われたエグニダはその顔に浮かぶ苦悶を、しかし強引に笑みへと塗り替えてみせた。


「おおよそご名答。神威謹製の『疑似遺産』というやつさ……」

「なるほど。人並み外れた再生力もそのためか? しかしあれだな。エグニダ……おぬしが使えば、それも宝の持ち腐れだな」

「言ってくれるな……!」

「強烈な加速力を持つ大剣と、それを振るえる剛腕。不意打ちから陽動にまで使えうる触手に加えて、堅牢でありながら高速戦闘まで可能とする重鎧……おそらくその全てが神威の改造で手に入れた力であろう。確かにそれ自体は人外の域に達しているようだ。しかし……拙者なら、もっと巧く扱える」

「!」


 エグニダの表情に、確かな驚愕が現れた。


「例えば、だ。その触手は大剣と併せて使えば、大剣だけでは賄えない範囲をカバーした広範囲攻撃になるだろう。それに今のブースターにしてもそうだ。あんなものがあれば戦術のバリエーションなどいくらでも増やせように、しかしおぬしは単純に殴りつけることを選んだ……いや、それぐらいしかできなかったのだろう」

「…………」

「この際はっきり言おう――おぬし、戦闘のセンスがないな?」


 視線が視線を突き破り、射抜いた。エグニダの目は大きく開き、逆に残った右腕がぶらんと力なく垂れた。


「まったく、反論のしようもないよ……これが埋められない力の差、というやつか」

「もう悪足掻きはやめろ。拙者は今すぐ斬り捨てても構わぬが、ブロードがおぬしのことを捕まえたがっておったからな。抵抗を止めるというのなら、逃げられないようにしてそこら辺に転がすぐらいで……」

「復讐者が、ずいぶんと慈悲深いんだな」

「復讐者が見境ないと誰が決めた? そもそも復讐目的ならば、貴様を締め上げて情報を吐かせた方が……」

「こちらからもひとつ、尋ねさせてもらってもいいか?」


 ――飲まれるなよ、アカツキ


 アカツキは1歩ずつ、エグニダの下へと歩き始める。


「言ったはずだ、おぬしにかかずらっている暇などない。降参するかしないか。それ以外の問答は」


 しかしエグニダは構わず、口を開く。


「なぜ黄昏ノ型を――宵断流本来の抜刀術を使わない? お前はかつて俺のことを妖怪と称したが、ならば妖怪退治にアレを使わない道理もないだろう? それで、俺は思ったんだ……」

「言葉遊びか。だが拙者はブロードほど付き合いが良くない。降参以外の言葉を発せば、その時点で今度こそ殺す」


 だがエグニダは、構わない。


「本当は使わないんじゃなくて、使えないんだろう?」


 その瞬間、エグニダの胴を白刃が滑り、人外の黒き血が舞い散った。

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