1-5 黒の虚実と蒼の真実
「お迎えに上がりましたよ、ニルヴェア・レプリ・ブレイゼル様――貴方の兄上、剣帝ヴァルフレア・ブレイゼル様の命により、ね」
黒騎士が恭しく頭を下げると、その鎧ががちゃがちゃと音を立てた。だがその雑音はもうニルヴェアの耳には入っていなかった。
「貴様、今なんて言った……兄上だと!?」
ニルヴェアの頭には一瞬で血が上り、それが怒りの声を叫ばせた。しかし黒騎士は眉ひとつ動かすことなく言ってのける。
「ええ。そこの彼から聞いていませんか? 俺の主が誰なのかを」
「それはっ、貴様が勝手に……!」
騙っただけ。そう言いたかったが、
――だって俺は、お前が尊敬するその兄上……『ヴァルフレア・ブレイゼル』こそがこの騒動の黒幕だって考えてるんだからな
想いは喉でつっかえて、声にならなかった。
しかしニルヴェアがためらっている間にも、黒騎士はすでに行動を始めていた。彼は自らの腰に付けていた布袋へと手を入れて、そこから何かを取り出してみせた。
「これでは証拠に足りませんか?」
黒騎士はその手に掴んだなにかを高らかに掲げた。それがニルヴェアの瞳に映ったその瞬間、
「なっ――」
彼女は絶句した。絶句せざるをえなかった。
その視線の先。黒騎士の手の中で月光を浴び、虹色の光を煌めかせるそれは……大陸でも非常に希少な鉱石で造られたペンダントであった。
そしてそこに彫られているのは『剣を象る十字と、その背に抱く日輪の紋章』……知っていた。その紋章が、そのペンダントが持つ意味をニルヴェアは知っていたのだ。
「ブレイゼル領章……『剣ノ勲章』……!?」
ニルヴェアが愕然と呟いたそのすぐそばで、レイズもまた「ちっ」と舌打ちをひとつして。
「越境勲章の上位互換みたいなもんだったか。あれよりさらに希少な鉱石に領章を模した彫刻を掘った勲章……たしか九都市の領主が直々に、直接認めた相手にのみ送る勲章だって話だよな。実物は初めて見たけど……おい、なんであんたがそれを持ってる!」
レイズは威嚇するように大声で問い詰めた。だが黒騎士はあっさりと答える。まるで常識でも語るかのように。
「なにを言っている? そんなもの、かのお方……剣帝当人から頂戴する以外にないだろう?」
「嘘だっ!」
否定したのはニルヴェアだった。彼女は黒騎士の言葉、その真偽を考えることなく叫び、そして捲し立てていく。
「そんな貴重な物を兄上が貴様なんかに渡すものか! どうせ偽造したか、あるいは正統な持ち主から奪ったか――」
「ひとつ。これが偽物かどうかは、この光を見れば明らかでしょう?」
「っ!」
ニルヴェアの視界の中で、『剣ノ勲章』がちかりと光った。その色は七色の虹。その輝きに気圧されるように黙ってしまったニルヴェアへと黒騎士は語る。
「この鉱石が放つ奇怪な虹色は、大陸中を見渡してもこの鉱石にしか出し得ない色です。そしてその唯一無二の特性と希少さゆえに現存するその全てが『九都市条約』によって管理されている。加えてこの鉱石を領章という緻密な形を再現して削る技術もまた、条約により秘匿下にある……そう。全てはこの勲章を、強固な信頼の証として機能させるために!」
黒騎士はまるで演説しているかのように両手を広げて、高らかと語り続ける。奇妙なほどよく通るその声には、他者の口を挟ませない覇気が確かにあった。
「ふたつ。言うまでもないがこれはとても貴重な物だ。これを渡す権限は領主当人にしかなく、これを渡されるというのはすなわち領主から直々に、これ以上ない信頼を置かれているということだ。そしてこの場合における信頼とは立場や人格……いや、それ以上に純粋な”力”こそが要となる! なにせどこぞの馬の骨に奪われでもしたら、それだけで領の行方すら左右しかねない代物だからな……ゆえに、逆にお尋ねしたい。もしやとは思いますが……ニルヴェア様はあの剣帝ヴァルフレアが、そんな重要な物を託す相手の”力”を見誤ると。そう易々と奪われるような弱者に託すとお思いで?」
「ぐ……!」
ニルヴェアは歯噛みした。誰よりもヴァルフレアを信頼している彼女は……結局、選ばざるをえなかった。この問答から逃げることを。
「そんなもの詭弁に過ぎない! 偽造も強奪も、可能性はゼロにはならない!」
「おやおや、身も蓋もないことを。これでは議論すら成り立たない……」
黒騎士は肩を竦めながらも、しかし口を回すことは止めない。
「ではとりあえず、俺の言い分というものも聞いては貰えませんか?」
「なんだと……!?」
「おそらくはすでにそちらの彼から、この事件のあらましを聞いたのでしょう? だがそれはあくまでも一方的な言い分に過ぎない。貴方の言葉を借りれば、彼が嘘をついている可能性だって決してゼロにはならない。そうでしょう?」
「それは……」
ニルヴェアの額からは、じわじわと脂汗がにじんできていた。彼女が感じているのはある種のプレッシャーであった。
黒騎士の声音、抑揚、口調……その全てが嫌な説得力を醸しだしているのだ。目をそらしたいのにそらせない。耳を塞ぎたいのに塞げない。『この男の言葉には一考の価値がある』そう思わされる。まるで心を侵食されるように。
ゆえに押し黙ってしまったニルヴェアに対して、黒騎士は再び口を開く。まるで心を喰らうように。
「ゆえに俺は思うのですよ。両面から話を聞いて、その上でフェアに……ブレイゼル家に産まれた者として何ができるのか、そうお考えていただければと」
その瞬間、ひとつの声が盾のように割り込んできた。
「あんたのペースには乗ってやんない」
それは少年の声だった。聞こえた瞬間、ニルヴェアにかかっていたプレッシャーがふっと緩くなった。
「お前……」「おやおや」
ふたりが同時に視線を向けた先には、赤銅色の髪を持つ少年が立っていた。己が愛銃を黒騎士へと向けて、プレッシャーを跳ね返す強固な意志を瞳に宿して。
「質問すんのはこっちからだ。黒騎士」
「ふむ……」
黒騎士は少しだけ考え込んだ。が、しかし次の瞬間にはあっさりと言う。
「いいだろう。きみには問答無用で殺そうとしてしまった詫びもあるしな」
それはあんまりにも、いけしゃあしゃあとしか言いようのない開き直りだった。ニルヴェアは思わず「ふ、ふざけてるのか……!」と憤慨したが、一方で殺されかけた当の本人は。
「んじゃまずはひとつ目だ」
こっちもこっちで面の皮が厚かった。ゆえにニルヴェアひとりだけが頭を抱えた。そんな中、奇妙な質疑応答が始まる。
「黒騎士。あんたは偽の依頼で俺を騙して、殺そうとした。それは明らかだし、その理由もおおよそ予想はつく……あんたは俺の死体を屋敷に残して、この一連の騒動の罪を俺に被せるつもりだったんだろ?」
レイズの推理にニルヴェアは驚く、間もなく。
「素晴らしい。この状況からよく辿り着いたものだ」
黒騎士当人がいともあっさり認めた上、軽い拍手までして見せた。だからニルヴェアは心底驚く。
(なんなんだ、この会話! というかなんなんだこいつら!?)
ついていけないのはニルヴェアひとりだけであった。黒騎士はどこか楽しそうな声音で白状を続けていく。
「きみの推理に免じて白状しよう。今回の筋書きは『愚かなナガレの少年が金品欲しさに犯罪組織と手を組んだが、土壇場で裏切られて殺された。そしてニルヴェア様は犯罪組織に攫われて行方不明……』というものだった」
「な、なんだよそれ!」
ニルヴェアは当然怒った。なにせ人を勝手に拉致して、偽造工作まで行うつもりだったのだ。
しかしその一方で、偽装工作のために殺されかけた少年本人は未だ動揺ひとつ見せない。
「そんなこったろうと思った。『俺が屋敷に忍び込んだ』って事実はすでにあるんだ。後は死体とセットで揃えれば、大体それっぽくなる……つっても、ひとつだけ疑問もある」
その瞬間、レイズの視線が一段と鋭く尖った。そして彼の語気もまた、一段と重くなる。
「俺の死体が欲しいなら、俺だけを殺せば良かったはずだ」
突き付けている琥珀銃。その引き金はいつ引かれてもおかしくない――二ルヴェアは直感的にそう感じて、同時に思う。
(こいつ、本当に怒ってくれているのか)
そんな内心をよそにレイズは問い続ける。
「屋敷から離れたところで受け渡して、そのとき罠にでも嵌めればそれで良かった。なのになんで、わざわざ屋敷に無駄な騒乱を」
「無駄ではないのだよ!」
レイズの声と気迫を掻き消すほどに張りのある声が響いた。無論、黒騎士のものである。
「騒乱が大きければ大きいほど犯罪組織の、神威の匂いが深まる。それが今回の作戦に欠かせなかったのさ」
その白状に、ニルヴェアの唇がぶるりと震えた。
「なにを、言って」
彼女にはなにも理解できなかった。屋敷内の兵士の同士討ちも、アイーナの死も、全部必要なことだった? そんな馬鹿な!
だがレイズには見えているらしい。黒騎士の描く筋書きが。
「なるほどな。屋敷の内部から裏切って、腹の中から金品も人質も全部喰い破ってとんずらか……いかにも神威のやりそうなことだ。犯罪組織としての知名度だってこれ以上ないしな。『これは神威の仕業だ』と決め打ちされれば、その時点で剣の都……ひいては領主様がマークされなくなる。か」
そして黒騎士当人もそこに追従する。
「きみの死体ひとつ見つかっただけだと、『果たして誰と手を組んだのか』という線で捜査を進められてしまうかもしれないだろう? それでも構わないといえば構わないのだが……おそらく捜査には越境警護隊の手も入るだろう。あれは小うるさい犬どもだが、犬だけに嗅覚だけはあながち馬鹿にならない。だから我々が”神威に扮して”その匂いを残していく必要があったのだ」
あまりにも易々と白状された全容に、ニルヴェアは愕然とした。
「犯罪組織の、偽装? 自分たちが目を向けられないために? そんな、そんなもののために……!」
脳裏に過ぎる、兵士たちの同士討ち。そして己を庇い、死んだ少女が、
「お前たちは! 人の命をなんだと思ってるんだ!!」
それはありったけの感情が籠った叫びだった――が、黒騎士は全く動じない。むしろそれによって背中を押されたと言わんばかりに堂々と、分厚い黒鎧に覆われた両腕をぐわっと拡げて。
「領にとって民もまた財産! それがこの大陸の共通理念! ゆえにこんなもの、数千の犠牲に比べれば!!」
「なっ! 数千の、犠牲……!?」
「嘘をつくコツは
黒騎士はわざとらしいお辞儀を一度見せて、それから語り始める。
「神威と前領主との繋がりも、前領主の儀式も、封印の霊薬も全ては本当のことだ。あれを止めなければ数人程度の犠牲では済まない。数千、いや数万を越える大陸最大の災厄と化す!」
「そんな、馬鹿な……」
「その現実はすでに間近に迫っている。秘密裏に阻止しながら前王の目を欺くためには貴方の身柄が今ここで必要なのだ! そうでなくとも……貴方の兄上は、剣帝ヴァルフレアは領主である前にひとりの兄として心配なさっているのですよ。弟君である貴方をね」
「兄上、が」
「彼は本家の人間の中でも唯一、分家である貴方を強く気にかけてここにも足繁く通っていたとお聞きします。もっとも彼が前領主、父上のあとを継いで領主になってからはその責務ゆえに疎遠になったとも聞きますが……それでも、その程度であの御方は愛情を捨てるような薄情者ではない。そこについては貴方自身が誰よりもご理解なされているのでは?」
「多くの、犠牲……僕の身柄、防ぐために……兄上、僕は」
ニルヴェアの頭の中では思考の断片が纏まらず、ぐるぐる回り続けていた。そしてそれに追い打ちをかけるように、黒騎士の声が頭の中へと染みこんでいく。
「もう一度言います。ブレイゼル家に産まれた者として、何が正しいのか。貴方自身でご決断いただければと」
(ブレイゼル家に産まれた。僕は、兄上のためにするべきこと、僕は……!)
考えが全く纏まらない。
視線がうろうろとさ迷い……不意に、レイズと眼が合った。
彼は黒騎士に向けて琥珀銃を構えたまま、しかし顔はニルヴェアへと向けてただ静かにほほ笑んでいた。
その途端、ニルヴェアの脳裏に言葉が過ぎる。
――結局、大事なのは自分がどうしたいかだ。俺はいつだって俺がやりたいように動いている。だからお前も好きにしろ
(僕は、何がしたい……?)
視線が再びさ迷って、さ迷って……そして。
「あ――」
ようやく視線が止まった。そこには先ほど黒騎士が剣を叩きつけたことにより、陥没した地面が広がって……そして、ある物が転がっていた。
それは十字の墓、だった物。
蔦で十字に編まれていた枝は黒騎士の一撃の余波を受けてバラバラになっており、そこに掛けられていたアイーナのペンダントもまた無造作に地面を転がっていた。
それは泥にまみれながらも月光を浴びて、クリアブルーの輝きをニルヴェアに見せた。
その瞬間、ニルヴェアは思い出す。
――ニルヴェア
それはいつかの昔、誰よりも敬愛する人から託された。
――お前はお前だけの剣を
「――断るっ!!!」
ニルヴェアは理性よりも先に、感情をもって叫んでいた。だけど追いついた理性もまた、その感情を否定しなかった。
彼女の中で、もう答えは決まっていた。
(きっと、屋敷が騒乱に巻き込まれたときからずっと)
ニルヴェアは黒騎士に向き直ると、両足をぐっと広げて仁王立ち。
(僕がやりたいことはひとつだったんだ!)
腹の底から決意の声を張り上げる。
「人の命を必要な犠牲だなんて軽んじるやつを、僕は決して認めない! たとえそれが、僕の身を救うことになるとしてもだ!」
しん……と空気が静まり返った。
だがそれもほんの一瞬。黒騎士が、いやに淡々と問い返す。
「それは、剣帝の命であっても? 万を超える命を天秤に掛けるとしても?」
「兄上が貴様のようなやつに剣ノ勲章を与えるなんて到底信じられない。その犠牲とやらもお前のでっち上げとしか思えない。だけど万が一……万が一、その全てが本当だったとしても、本当の敵が誰であったとしても!」
ニルヴェアは臆さず言い切る。もう迷いはないから。
「その陰謀の全ては、己が
――お前だけの剣を信じろ。いつだって、真実はそこにある
それこそニルヴェアが自身の兄、ヴァルフレアよりかつて託された言葉であった。
たとえ体がどう変わろうとも、たとえ状況が混迷の中にあろうとも。蒼の双眸は託された言葉の通りに己の在り方を信じ、貫き、黒騎士を射抜いていた。
だが、その揺るぎない視線に。
「……はっ」
黒騎士はつまらなそうに息を吐き、そしてうつむく。
「ニルヴェア・レプリ・ブレイゼルの名において……か」
次に黒騎士が面を上げたその瞬間、ニルヴェアはようやく気づく。最初にその眼を見たとき感じた、謎の悪寒の正体に。
(――そうか、僕が恐ろしかったものはこれなんだ)
黒騎士の黒い両目が、今ではまるで底なし沼のように見えていた。
(こいつはきっと、本当は人を殺すことをなんとも)
ニルヴェアの全身が、今度は明確な恐怖に震えた。その直後、
「
漆黒の巨体が、尋常ならざる速さで踏み込んできた。
「っ!?」
己よりも遥かに大きい巨体が一気に迫る。その威圧感は凄まじく、それに気圧されニルヴェアの反応が遅れる中で、黒騎士の大剣がぐわっと持ち上げられた。おそらくは右から左へ横に薙ぐつもりだろう。視えたが、視えただけだった。脚が全く動かない。
(まずい。死――)
だがその予感はそこで止まった。ニルヴェアの眼前で、赤銅色の髪がいきなりなびいた。
レイズが、2人の間に割り込んできたのだ。
身を屈めた低姿勢で飛び込んできた彼は、そこから一気に跳躍。体を捻って、大剣――ではなく突っ込んでくる黒騎士本体へと蹴りを放つ!
(駄目だ! 体格差があまりにも!)
ニルヴェアは思わず息をのんだが、しかしレイズの蹴りが当たったその瞬間、その打点が爆炎をごうっと巻き上げた。
「うわっ!」
吹き荒れる風に踏ん張るニルヴェア。一方のレイズは爆破の勢いを利用して反対側へ跳躍。ニルヴェアの目の前へと着地した。
(まただ。あの爆発……)
黒騎士から逃げるときに見せた跳躍。そのときと同じく、跳び戻ってくる彼の靴裏からは煙がたなびいていた。つい反射的に問いかけてしまう。
「なぁ、今のは」
「下がってろ」
たった一言で止められた。レイズは未だ前を見据えて警戒を崩さない。ニルヴェアもそれにつられて視線を向けると、レイズが上げた爆炎。その残滓である煙の中から。
「危ないじゃないか。両足だけじゃなく、胴体まで斬ってしまったらどう責任を取ってくれる?」
「おいおい、『ニルヴェア様』に対して随分と大層な扱いじゃねーか。黒騎士さんよ」
問答している間に煙が晴れきって、黒騎士がその姿を見せる。
「無論、彼女の命には敬意を払っている。我々にとって大事な”鍵”なのだから」
黒騎士は、全くの無傷であった。
しかしレイズは動揺することなく琥珀銃を構えると、再び戦闘態勢へ……
「ああ、それとレイズくん」
「ああ?」
ふと黒騎士が呼びかけてきた。彼の口調はこの場この状況だというのになぜか妙に気さくで、その調子のまま彼は軽々と言い放つ。
「我々と手を組まないか?」
…………。
しばらく沈黙が続いて、それから。
「なっ!?」
いの一番に驚いたのはニルヴェアだった。
しかし、勧誘を受けたレイズ本人はというと。
「…………」
ただ黙したまま、戦闘態勢も解かない。ゆえに黒騎士は言葉を重ねる。
「ここまで逃げおおせたきみの実力は、ここで殺すにはあまりに惜しい。正直きみが単なるナガレとして収まっていたのが不思議だと思ったくらいだ。だから俺はきみを仲間に誘いたい。無論、報酬は高く用意しよう。その若さでナガレとして旅を続けるなら、それ相応の理由があるのだろう?」
「!」
反応したのはまたしてもニルヴェアだった。
(そうだ。僕はこいつがこの依頼を受けた理由をまだ知らない。金か、名誉か、それとも)
ニルヴェアの胸中に不安が渦巻いていく中、黒騎士の語りが続く。
「きみが欲しいのはなんだ? 金ならばいくらでも積もう。居場所なら土地を与えよう。地位が欲しいなら、こちらから剣帝に」
「もう、黙れよ」
引き金は、すでに引かれていた。
「む――」
琥珀銃から放たれた光弾が黒騎士の顔面へと飛んだ。だが黒騎士は鎧を纏った腕で無造作に防ぐ。着弾、そして爆破。
「子供だから楽に殺せるって舐めやがった」
黒騎士の分厚い鎧には、またしてもろくな傷がつかなかったが。
「ナガレだから物で釣れるって舐めやがった」
しかしレイズに傷つけるつもりなど最初からなかった。
「一々癪に障るんだよ。あんたはもうとっくに」
喧嘩を売る合図になれば、それでよかったのだから。
「――俺の敵だ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます