第21話 タイトル『悪役令嬢とは?』
あたしは本を選ぶ。指でタイトルをさがす。
転生したら悪役令嬢だった。
悪役令嬢となって死刑フラグを回避します。
没落の未来がある悪役令嬢として生まれ変わったので思いきって没落しようと思います。
死んで目覚めたらわたしが悪役令嬢。
悪役令嬢と傲慢王子さま。
悪役令嬢は改心して庶民になります。
どれも面白そう。あたし、こういう本が好き。悪い人なのにいいことをしてみんなに認められて、かっこいい王子さまと結ばれる。転生した主人公は悪役令嬢になりきろうとするけど、みんな良い人だから結局それを見抜いたイケメンの王子さまに選ばれて結ばれる。
今日はどれを読もうかな。
こういったお話には、いわゆる、ざまあみろ、という展開が待っている。
これは作品によって変わってくるんだけど、多くは第一話目で、主人公が婚約破棄にあうの。悪役令嬢だから、ざまあみろ、でしょ?
でもね、悪役令嬢って呼ばれてる人は、大抵ほんとうに悪いことしてる子っていないのよ。
だいたいは、平民の美人なヒロインに、婚約者を横取りされてるの。
男って、そんなにばかなのかしら。
男って、そんなにばかなんだわ。
知らない。あたしはリオンさましか知らないから。
じゃあリオンさまはそんなにばかなのかしら。
ううん。リオンさまはばかじゃないわ。見る目がある人だもの。
王子さまって、恋愛経験がないからばかなのかしら。
でも大丈夫。王子さまがだめ男でも、悪役令嬢にはしあわせな未来が待ってる。個人が持ってるなんともすごい特殊な趣味と知識を駆使して、死刑を回避して、好きな人と結ばれる。
これがテンプレート。
でもね、書いてる人が違うから、ぜんぶ違う物語なの。
いろんな主人公がいて、いろんな魅力があって、登場人物、世界、全てぜんぶオールで惹かれてしまうの。
最後は永遠の愛を確実に掴み取る。
ハッピーエンド。
あたしの大好きな真実の愛の物語。
そうだわ。あたしみたいな女の子の話ってあるのかしら? きっとあるわ! だって、こんなにたくさん物語があるのだから!
あたしは本を探してみる。たくさん読んでみる。あれもこれもみんな面白くてついつい読みふけてしまう。でもね、んー、……どうしてかしら? どれもこれもみんな性格のいい清楚で美しくて可愛い悪役令嬢しかいないの。
性格の悪い妹に一度目の人生の経験から復讐を誓う悪役令嬢。
……それは、悪役令嬢なの?
悪役令嬢は、妹のほうじゃない。
不器用な主人公が可哀想。なにも悪いことしてないのに。
ヒロインに婚約者を横取りされて、追放されたので、その先で快適な生活を送る悪役令嬢。
……それは悪役令嬢? ただの悲劇にあったお嬢さまではなくて? ほら、中身を見てみれば、なんて優しい人なの。嫉妬も妬みも嫉みもない。積極的に働く素敵な人なのね。無意識に人に優しくするからみんなの憧れの的になってる。他人に興味のないあたしには無理。
何度も死んで改心したのに悪いことした反省から死刑になりたがる悪役令嬢。
改心しちゃった。そうよね。悪いことはもう二度としてはいけないわ。じゃあもう悪役令嬢は引退ね。
ヒロインに婚約者を寝取られる悪役令嬢。
浮気性な王子さまに翻弄される悪役令嬢。
平民に恋をする悪役令嬢。
趣味で活躍していく悪役令嬢。
悪役令嬢、悪役令嬢、悪役令嬢、悪役令嬢。
さまざまもろもろいろいろな悪役令嬢。
その世界の悪役のお嬢さまたち。
どれもこれも、みんな純粋で、やさしくて、心がきれいな人たちばかり。美しくて無意識に人を引き寄せる人たちばかり。紳士にもレディにもモテてモテてモテまくる人たらし。少し不器用で悩んじゃうけど大丈夫。困ったときには、だれかがあなたを助けてくれる。
あたしは本を探す。ない。
あたしは指をさして探す。ない。
あたしは目でなぞって探す。ない。
これだけ物語があるのに。ない。
これだけ本があるのに。ない。
これだけお金を払って本を買ってるのに。ない。
どこにもない。
わがままで性格がひねくれてて家族ぐるみで末娘をいじめて平民には傲慢な態度を見せて人を傷つけおとしめて、自分の幸せのためならなんでもしたお嬢さまが幸せになった本は、――どこにもない。
唯一、存在する本がある。
おとぎ話の本をめくってみる。
そこには、まさにあたしのような人が存在する。三姉妹。姉、真ん中、妹。
悪いのは、姉、真ん中。
ヒロインは、妹。
あたしたちは、悪役。
幸せになるのは妹。
おとぎ話には、あたしのような女がどうなるのか、細かく載せられている。
足がなくなり、目はハトにつつかれて盲目になり、燃える靴でおどりつづけ、悲鳴がとびかい、人々に笑われ、苦しみ、傷んで、された分が返ってきて、死んでいく。
ね? ざまあみろな展開、でしょう?
おとぎ話の三姉妹の姉は、だいたい二人とも苦しんで死ぬの。妬み深くて意地悪で、とんでもなく悪い人だから。
悪役令嬢の本を読んでみる。
王子さまを横取りしたヒロインは、悪くても国から追放されて終わる。
その後のことは書かれない。だって、悪役は本来の悪役でも偽物でも、所詮は脇役だから。物語の主人公には決してなれないから。
悪役令嬢は本来の人物とは別人で性格が良くてかわいくて、だいたい前世の記憶をもってて立ち回りが上手だからみんなが憧れて自慢できるようなすてきな王子さまと幸せになれる。
ということは、……そっか。
あたしの考えは間違いじゃない。
転生をしただれかに、体を動かしてもらえば、悪役は幸せになれる。
そこで、ようやく物語の主人公になれる。
そういうことなのよ。
じゃあ、
あたしは、いつ、幸せになれるのかしら。
あたし自身はいつ幸せになれるのかしら。
別の魂が入ってきたら、あたしはどうなるのかしら。
消えるのかしら。
……やっぱりいや。いやよ。あたし消えたくない。
あたしはあたしのままで幸せになりたい。
でも、拒んでたら、このままじゃ、あたしはずっと脇役のまま。
本棚をなぞる指を止める。
転生したら悪役令嬢だったので、脇役目指して頑張ります!
作者に質問するわ。
脇役のなにがいいの?
忘れ去られるどうでもいい役。
相手にされないどうでもいい役。
恋愛においては恋が実らない役。
影の薄い、だれにも気づかれない役。
なにがいいの?
主人公になれない。
なにがいいの?
「物語なんだから個人の自由だろ。嫌なら見なきゃいい」
ええ。あたしは読まないわ。
でも人は読む。それを読んで人は楽しむ。
どうして? 読者に質問するわ。
脇役を目指す主人公のなにがいいの?
悪役を目指す主人公のなにがいいの?
結局、脇役を目指してるのに活躍してしまって、みんなからどんどん愛されていって、最後は人気者となってちやほやされる。
そんな主人公を見たいだけでしょう?
結局、力があるのよ。才能があるのよ。強運があるのよ。人に恵まれてるのよ。優しいのよ。愛されてるのよ。意志が強いのよ。逃げないのよ。立ち向かうのよ。
だから、主人公なのよ。
あたしは、妬んでばかり。陰口は言うけど意志は弱い。自分が好き。自分が可愛い。だから逃げる。辛いことには立ち向かわない。逃げる。ひたすら逃げる。そしたら幸せにたどり着けるかもしれないから、さがすために逃げる。実際逃げたら幸せになった人がいるそうよ。だから参考にして逃げるの。
あたしは主人公よ。逃げたら幸せになれるんだから。
主人公にはなれない。
逃げたあたしに幸せは来ない。
あたしはいつだって脇役。
主人公になりたいと願うばかり。
そしてその願いが叶うことはない。
だから実行もしない。
考えるだけ。なにもしない。
なにかしたところで変わらない。
メニーはいつでも主人公。
リトルルビィは純粋な主人公。
ソフィアは美人な主人公。
キッドさまは華麗な主人公。
リオンさまは素敵な主人公。
あたしは?
脇役。
特殊能力はない。あるのは、たまたま習ってたヴァイオリンを弾けること、そして、経験してきた知識を持ってることだけ。それは特殊な趣味と知識ではなく、みんなが知ってるような当たり前のこと。だから、全然役に立たないの。
だめね。あたし。だからいつまで経っても成長しないんだわ。ううん。この先成長なんてしないんだわ。だって、あたしは脇役だもの。どうあがいたって物語の脇にいる人。ほら、あたしこそ脇役よ。ね。みんなの目指す脇役よ。ほら、ほしいでしょ? いいわよ。悪役も、脇役も、この役を欲しいヒロインにあげるわ。だから、『主人公の役』をあたしにちょうだい。
みんなは拒む。
求めてるくせに。
結局、主人公の座はだれにもゆずらない。
あたしの役を、受け取らない。
どうして受け取らないの?
ほしいんでしょ?
あげるわ。
転生しないとだめ?
わかった。
じゃあ、転生しよう。
入れ替わろう。
そしたら愛される。
あたしは美人になれる。
あたしは聖女になれる。
あたしは『だれか』になれる。
いいな。いいな。幸せになれる。
あたしではなく、だれかとなったあたしが幸せになれる。
あたしではなく、だれかの体で。
あたしのままでは幸せはこない。
改心しないと幸せにはなれない。
態度を改めないと幸せはやってこない。
こんなあたしではだめ。
あたしのままでは愛されない。
そっか。だからあたしは、だれからも愛されないのね。だって悪役だもの。所詮、脇役だもの。誰もほしがらない役を渡されたあたし。いいな。いいな。みんなはいいな。
だってみんなは主人公。
あたしは脇役。
だれかに転生してもらわないと無理なんだわ。
そうしないと、あたしを愛してくれる人はいない。
ねえ、たとえば、嫌いな奴がいる。
でもその子はとても良い子だから、みんなはその子が好き。あたしは嫌い。そうね、笑顔が気に食わないわ。だから嫌いと言う。そしたらみんなはあたしに冷たい氷のような目を向けて、こう言うの。どうしてそんなこと言うの。ひどい女だ。嫉妬してるんだ。最低。嫌いを嫌いって言ってなにが悪いの? 最低だ! 悪だ! みんなはあたしに石を投げる。
改心しないとだめです。あなたはあの子を好きになってください。
あたしはこう言うわ。無理。
だったら、それを口に出さず黙っててください。
あたしはこう言うわ。嫌よ。近づいてほしくないもの。
だったらあなたから距離を置けばいい。
嫌いと言わないとわからないでしょ。
だからどうしてそういうことを言うかね。改心なさい。態度を改めなさい。
あたしのなかにできた感情を否定する。それが改心。でもあたしは否定したくない。じゃあ否定しないわ。これがあたしの正義なの。でもそれは多くの人に受け入れてもらえない。だからみんなはこう思うの。
なんて頑固で図々しい女だって。
あたしの正義は、やがて悪と呼ばれるようになる。
人を殺すのは悪いこと。
ルールを破るのは悪いこと。
人には親切にしなさい。
思いやりを持ちなさい。
いい? 洗脳するなら子供のうちからやっておかないと。でないと、あたしみたいな女が生まれるのよ。
(どうせあたしはわがままよ)
(どうせ図々しいわよ)
そうして育ってきたんだもの。
(どうせ嫌われ者よ)
どうせあたしはだれからも愛されないわよ。
(本のなかの悪役令嬢って、みんな欲がないわよね)
仲良くなったヒロインたちを尊敬し、時にはこう言うの。うわ、超きれい。かわいい。お人形さんみたい。
あたしだったらこう思うわ。
ふん。化粧でごまかしてるだけよ。あたしにはわかるわ。こいつ猫かぶりやがって。性格のいいあたしの勝ちね。
でも男ってみんなかわいい顔の人のもとへいく。美人な女へ近づく。猫かぶってるだけよ。平民に近づく。愛人づくり?
無口な女は顔が良ければ許される。顔がだめならただの根暗。気持ちはわかる。男もそうよ。男のくせにナヨナヨしてる人はだめ。太っちょも結構。やっぱりミステリアスな色気を持つリオンさまが一番だわ。
でも残念。
リオンさまにも選ぶ権利はあるのよ。
あたしは選ばれなかった。
リオンさまが選んだのは、メニー。
ぜんぶ完璧な女。
あたしたちにこき使われて、灰をかぶって、奴隷のように働き続けた女が、美しき姫となる。
下剋上な人生に、平民も貧困民もみんなメニーに憧れた。
はいはい。上から下に成り下がったあたしたちはざまあみろ、ざまあみろ。いつまでも改心しないからそうなるんだ。
じゃあ、だれか教えて。説得して、納得させて。
あたしたちを改心させてみせなさいよ。
石を投げるだけ投げて、自分の正義を突き通す。悪いわね。あたしにも正義があって、あたしたちからすればお前らはただの悪なのよ。
「なにが転生したら悪役令嬢よ。なにが死刑回避よ」
あたしは本を破った。
「なにが改心よ。なにが更生よ。なにが良い子よ」
あたしは紙を破った。
「良い子ってなによ」
あたしは破く。
「あたし、すごく良い子じゃない」
破く。
「良い子は幸せになれるんでしょう?」
牢屋に入れられる。
待つのは死刑の未来だけ。
「ほら、教えてよ。いつ幸せになるのよ」
真実の愛。
「うそつき」
子供だまし。
「うそつき」
嘘百発。
「うそつき」
王子さまと幸せに、
「うそつき!!」
そんな未来は訪れない。
ぜったいに、来ない。
王子さまなんていない。
あたしは牢屋のなか。
外ではあたしを恨む人々。
中身が変わったら幸せになれる。当たり前よ。価値観も正義も考え方も違うのだから。
(だから)
結局、こういうことでしょ?
あたしに幸せはやってこない。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
おとぎ話に登場する姉は、全て悪役である。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
おとぎ話の悪役令嬢は罪を作り出す。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
おとぎ話の悪役令嬢は痛い目にあって、ようやくしてきたことを後悔する。懺悔する。反省する。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
おとぎ話の悪役令嬢がしてきた罪は、永遠にまとわりつき、離れることはない。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
おとぎ話の悪役令嬢は、罪滅ぼしに忙しい。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
テリーは、悪い女である。
テリーは、哀れな女である。
テリーは、かわいそうな女である。
テリーは、見るに耐えないばかである。
テリーは、人を妬むことしかできない。
テリーは、人を恨むことしかできない。
テリーは、自分がかわいい。
テリーは、自分がきらいである。
テリーは、だから自分に憧れを抱かない。
テリーは、自分以外の対象に憧れをもつ。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
テリーは、好きなものがたくさんある。
テリーは、プリンセスが好きだ。
テリーは、王子さまが好きだ。
テリーは、美人が好きだ。
テリーは、可愛い人が好きだ。
テリーは、かっこいい人が好きだ。
テリーは、人に関心を向ける人が好きだ。
テリーは、人の関心に興味がある。
テリーは、周りが輝いて見える。
テリーは、みんなが幸せを持っていると思っている。
テリーは、笑顔を浮かべている人が好きだ。
テリーは、尊敬している。
テリーは、羨ましがる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
テリーは、愛する。
テリーは、自分以外を愛する。
テリーは、自分を愛してる。
テリーは、だからこそ、自分以上に自分を愛してくれる人を求める。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
テリーは、思う。いつ愛されるの?
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
テリーは、思う。あたしは愛するわ。けれど、あたしを愛してくれる人はいないの?
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
あたしは愛されてはいけないの?
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
あたしは愛することしか許されないの?
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
愛し愛する、さすれば君は救われる。
(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)(*'ω'*)
あたしは愛するだけ?
あたしは愛されない。
だれか愛して。
そしたらあたしも愛するから。
あたしは真実の愛を求める。
あたしが満足に愛することができて、
同じ分あたしを愛してくれる人。
真実の愛。
うそのない愛。
証明はあなたでいい。
あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。あたしを愛して。
テリーは、真実の愛を求める。
ちょうだい。
あたしに、真実の愛をちょうだい。
テリーは、ないものを欲しがる。
愛して。
愛するから。
愛して。
もっと。
愛して。
お願い。
愛してくれるだけでいいの。
いいな。いいな。いいな。いいな。
メニーはいつだって愛される。
リトルルビィは周りに愛される。
ソフィアは善人だから愛される。
ニクスは頭が良くて愛される。
アリスは才能があって愛される。
リオンさまは王子さまだから愛される。
キッドさま美しいから愛される。
あたしには、なにもない。
羨ましい。
だれにも勝てない。人は言う。勝ち負けじゃない。
あたしは言う。知ってるわよ。
頭でわかってても、心が求めてしまう。
だれかと自分を比べたがる。
自分を愛さないと人も愛せない。
そもそも人を愛せないと自分すら愛せないわ。ばかじゃないの?
テリーは自分以外を愛する。
羨ましい。
ないものねだり。
人の努力をわかった上で妬む。
だって羨ましい。
ヴァイオリンがもっと上手ならよかったのに。
もっと手先が器用ならよかったのに。
もっと話し上手ならよかったのに。
あの人の目の形がいいな。
あの人の鼻の形がいいな。
あの人の口の形がいいな。
あの人の輪郭の形がいいな。
あの人、細くてきれい。
人の努力を知った上で言う。
あたしもああなりたい。
人の努力を知らない上で言う。
きっと整形してるんだわ。
自分には無理。
そんな努力はしたくない。
どこかで怠けたくなる。
メニーは怠けない。
いつだって頑張ってる。
それが許せない。
いいなって思う。
本のなかにいるヒロインのようになりたい。
ヒロインの本質は悪役令嬢。
悪役令嬢の本質はヒロイン。
みんな見た目にだまされてるの。
悪い顔しておいて、悪役令嬢はとってもいい人なの。
だって、中身がちがうから。
あたしもそうなりたい。
そうだわ。
あたし、
次生まれるときは、メニーになりたい。
ちょっとの間いじめられるけど、
その先で幸せになるし、
リオンさまと結婚できるし、
それなら、ちょっとくらい我慢するわ。
やった。これで幸せになれる!
メニーに生まれ変わったら、幸せになれる!
あたし、メニーになりたい!
次の世では、メニーとして生まれるの!!
否。
ほんとうは、
また自分に生まれたい。
ママやアメリアヌがもっとあたしを愛してくれて、あたしは使用人からも愛されるお嬢さまで、町の人たちからもテリーって呼ばれてあたしは手を振るの。毎日が笑顔で溢れていて、毎日知らない男の子に告白されて、困ったわーなんて言うの。でもあたしは断るの。だってあたしには、あたしだけを愛してくれる、真実の愛を与えてくれる王子さまがいるのだから。
あたしは王子さまを永遠に愛さなくてはいけないの。
二人で仲良く暮らしましょう。
お墓もいっしょに入りましょう。
ずっといっしょにいましょう。
相手も喜ぶわ!
そんなわけない。
そんな夢は叶わない。
だって、あたしはあたしなんだもの。
メニーにはなれない。
他の誰かにはなれない。
わかってる。
わかってるから、また思う。
うらやましいな。
うらやましいな。
妬ましい。
くたばれ。
お前なんて、くたばってしまえ。
あたしは自分がかわいい。
あたしは自分を磨く。
あたし、今日もかわいい!
他の人はもっとかわいい。
あたしは、今日も自分が大きらいだ。
あたしはリボンをにぎった。ひっぱった。するするとリボンがほどけた。二つに結んでた髪の毛が落ちた。
あたしはほどいたリボンを見つめて思った。まるで子どもに見せたくなかった現実の扉を閉めていた縄のようだわ。
あたしはもう子供じゃない。
大人は現実を受け入れなくてはいけない。
あのね、うそなのよ。
全部うそなの。
真実の愛なんて存在しないの。
絵本なんてつくり話だ。
おとぎ話なんてただのホラ話だ。
赤い服を着た魔法使いなんていない。
毎日幸せな日々を過ごすなんてありえない。
成功者は笑う。
失敗者は泣く。
やさしい人は死ぬ。
意地悪な人は生き残る。
死人に口なし。
生きてるあたしたちには関係ない。
税金は高い。
好きな人とは結ばれない。
書籍化できないな。
選考外選考外選考外。
うまくいかない。
選ばれるのは赤の他人。
悲しい。
哀しい。
むかつく。
妬み僻み嫉みやっかみ。
承認欲求は満たされない。
イジメは起きる。
傷つけられる。
傷つける。
裏切られる。
裏切る。
騙される。
虚言を吐く。
死にたい。
生きたい。
謝罪の言葉に気持ちはなし。
謝罪の言葉は届かない。
良いことをしても返ってこない。
努力は報われない。
才能が勝つ。
美人とブスで区別される。
あの子は美人。
あたしはブス。
恨まれる。
恨む。
すべての責任は自分である。
それが大人である。
あたしは汚れていく。
どんどんドロドロ泥に汚れていく。
でもこれが大人である。
汚れたあたしはリボンを見つめる。
見つめても見つめても、真実は変わらない。
真実の愛なんてものは、どこにもない。
「んふふ。可哀想に。現実に失望してしまったんだね」
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