八章:泡沫のセイレーン(後編)

八章 泡沫のセイレーン(後編)



 まだ間に合う。

 まだ彼女は生きている。

 朝日が昇る前に。

 この巨大な足を動かす。

 悲鳴が上がるが関係ない。

 彼女の為なら怖がられても構わない。

 地震が起きる。

 地面を蹴る。

 指を差される。

 ジャックだ! ジャックが出たぞ!

 関係ない。

 巨人だ! 巨人が現れたぞ!

 関係ない。

 恐ろしい巨人が現れたぞ!


 ウンディーネ!


 手を伸ばせば彼女がいる。

 ウンディーネ。

 オラの愛しい人。


 オラと行こう。ウンディーネ。


「ジャック」


 美しく笑う彼女は、


「これで良かったのよ」


 泡となって消えていく。


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