第9話女戦士1
山賊は無理に幌馬車に近づくことなく、遠くから沢山の弓を射て、自分たちが傷つくことなく商品を奪おうと考えていた。
だが一人だけ、雨あられと降り注ぐ矢にひるむことなく山賊の群れに突っ込み、獅子奮迅の活躍をする女戦士がいた。
南方からやってきたのだろう、黒い肌を露出するような装備ながら、前腕・脚・肩はプレートメイルで固めている。
一方武器は、並の戦士ではとても使いこなせないようにハルバードを、楽々と振り回して山賊をぶち殺していた。
黒い瞳に怒りを宿し、アップした長い黒髪を振り乱し、左右につけた紅玉の髪飾りが揺れる度に数人の山賊が血しぶきを上げなら倒れていく。
「援軍だぞ! 援軍が来たぞ!」
ダイは自分一人しかいないのに、多くの兵が援軍に来たように見せかけた。
声上げると同時に、負傷して倒れている隊商を助けるべく、鉄級の治癒魔法を使い、1度に十人の負傷者を回復させた。
「ウォー!」
好機と見た女戦士は、大声を上げて山賊を威嚇すると、今まで以上に暴れまわり、山賊たちの戦意をくじいて行った。
「何をしている、馬鹿正直に正面から戦うな、向かって来るなら左右に散れ、そして幌馬車に向けて矢を射続けろ」
山賊の親分なんだろうが、まるで軍の指揮官のように手下に指図している。
手下も、まるで訓練された兵士のように親分の指示通り動き、女戦士が向かってきたら逃げ出し、女戦士のハルバートが届かない位置にいる山賊が幌馬車に矢を射続けた。
このままではまた元のような戦況に戻ってしまうと判断したダイは、鉄級の対人攻撃魔法を使い、十人の兵士に向かって魔法の矢を飛ばした。
一気に戦況を有利にしようと、山賊の親分とその周囲にいる九人の兵士に向けられた魔法の矢は、弾かれることも避けられることもなく、見事に親分を含める十人の山賊に命中した。
親分とその側近を失った山賊は、女戦士に恐れをなしていたことに加え、強力な援軍が現れたこともあり、恐怖の叫び声を上げながら逃げ出した。
だがダイは、山賊を逃がさなかった。
訓練された兵士が山賊になったのか、軍が山賊を装っているのかは分からないが、街道を襲うような者たちを見逃せば、この後も多くの人が大切な荷物を奪われ、時には殺されてしまう事が明々白々だからだ。
ここで山賊に情けをかけることは、多くの人が殺されるのを見て見ぬ振りするのと同じことだから、逃げ出した山賊に魔法の追い討ちをかけ、皆殺しにした。
「ありがとう。助かった。おかげで命拾いした」
返り血で真っ赤に染まった女戦士が、片言のフィン語で礼を言いながらダイに近づいてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます