森の異変

第18話 旅立ち

 意識が戻るとカエデはすぐに服などの必要なものを詰めたバッグを持ち、「いってきます」と少し寂しげに言って家から出た。


 カリーは笑顔で「いってらっしゃい」と送り出した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あっ、カエデー!おはよー」

「ミイア、おはよう。待たせちゃったかな?ごめんね」

 カエデが家から出て、村の出入り口に向かうと、すでにミイアがいた。

「全然待ってないよ。それよりも早く行こう!」

「そうだね。挨拶は昨日のうちに済ませてあるしね」


 この村では旅立つ時には誰も見送りに来ない。掟で決まっているわけではないが、なぜかそういう風になった。



「おーい、カエデ。お前に渡すのを忘れてたものがあったー!」

「おじさん!?その忘れてたものって、なに?」

「村の武器庫の中にあった切れ味のいい良い刀というものだ」

「刀?なんだ。ありがとう、おじさん!」


 そう言いながら鞘から抜いた刀は不思議なものだった。

 刀身を赤黒く染めていた。

 強度を試すためにに近くにある木に峰の部分を叩きつけようとした。木に振り下ろした時には刀を横に倒したはずなのに、刃は下を向いていた。そのため木が縦に切れてた。


 不思議に思ったカエデは、刃が下に向いた状態で横に回転しながら剣を振った。けれど、刃は下に向いたままだった。


 今度は、木に向かってさっきと同じことをした。同じことをしたはずなのに刃はしっかり木を捉えて表面を削り、倒した。



 まるでそれは刀を振った方向に刃が意思を持って動くかのように、

「何だろう。とても不思議」

「まぁ、これは刀の中で数本しかない妖刀と呼ばれるものらしい」

「そういえば刀って片方にしか刃はついてないね」

「それが刀の特徴だ」



 そんな話をしているとミイアが

「その妖刀って呪われてたりしないよね?」

と聞いた。

「いや、そんなことはねぇ。けど、その刀が認めた奴が柄を握った時しかそれは能力を使わない。どうやらカエデのことは認めたようだけどな」

「そうなの?もしかして何かを斬ろうとしたときに勝手に刃が対象に向くやつ?」

「そう、それが刀の能力、『斬りつけ』だ。まだ、たくさん能力があるらしいが…その刀の能力が書かれた紙が破れててな、それしかわからなかったんだ」

「そうなんだ。ちょっと残念。それよりおじさん、そんな貴重なものもらっていいの?」

「おう、村の誰も使えないしな。その刀は、誰にもその刀身を見せなかったんだ」

「そうなんだ。ちなみにこの刀の名前は何?」

「なんだったっけなー。『血姫けっき』とかだった気がするぞ」

「『血姫』か。よろしくね」

 そういうと、刀が震えだした。

 今まで黙っていたミイアが

「もうそろそろ行こ?」

 と言ったのでカエデも

「そうだね。おじさん、行ってきます」

「行ってこい!絶対帰って来いよ」



 そう言って村を出た。

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