マジックカンパニー~魔術師派遣会社の雑用担当は最強の近接戦闘者~
一秒未来
依頼00 プロローグ
~荷物持ちの雑用担当~
私は、イラついていた。
その原因は私の横でニコニコとした顔をして、大きな荷物を背負っている
――ハル=ノーツと名乗った少年だ。
うちのパーティーに所属していた魔術師は怪我を負って療養中だ。
その交代要員として臨時に
「あんた、その荷物重くないの?」
「これくらいへっちゃらですよ。いつも鍛えてますから!」
「下級魔術師って身体も鍛えるのね?」
下級魔術師、基本的な魔術しか使用する事が出来ない者達。
正直言って、私達の様な中級者のパーティーからしたら”お荷物”でしかない。
その意味も込めて全員分の荷物を背負わせているのだけど、一向に効果がない。
「……いざという時に信用出来るのは自分の身体だと師匠に言われましたから」
「そ、そうなんだ。いい師匠を持ったのね」
「はい……」
急に死んだ魚のような目をするから思わずたじろいでしまった。
きっと、師匠と呼ばれる人はこの子に魔術の才能がないから、追い出すために無茶なトレーニングを要求したのね……。
そして、この子は今と同じ様にその意味に気が付かず、盲目的にトレーニングを続けたのだろうとなんとなく察した。
「ミミ! それと
ダンジョンの最奥――通称ボスフロア。
古代文明の遺産である、
私達冒険者は莫大な価値がある
「ここのボスはキラーエイプだったな。以前攻略したダンジョンのボスと同種だし、まぁ三人でもなんとかなるだろう」
というのはリーダーのノイシュだ。
私も彼の見立ては間違っていないと思う。
以前よりも数段実力を付けた私達ならお荷物を抱えていても三人でどうにかなるだろうと思って――しまった。
§§§
「おい、ノイシュ! 立て! そのままだと……死ぬぞ!!」
パーティーの中衛を務めるテッドが叫ぶ。
彼の視線の先には血まみれで倒れるノイシュの姿があった。
私達は予定通りボスフロアに足を踏み入れた。
しかし、そこで待っていたのはキラーエイプではなく、凶悪な
なぜ? と疑問に思う暇もなく、私達を発見した
最初の一撃でノイシュを吹き飛ばした
「テッド! どうにか”アイツ”を引きつけて! ノイシュは私が回復するわ!」
「む……無理だ。俺じゃ一撃で死んじまう……」
「でも、このままだとノイシュが! おねが「僕が行きましょうか?」
地獄の様な状況の中で、相変わらず緊張感の無い顔をした少年が何かを言っている。余計な混乱を避けるために、「何もするな」と言われ、大人しくしていたのになんで今……・。
「依頼主の言うことを聞くのがルールなんですけど……流石に死なれるのは不味いですよね」
「どういう……」
”こと”という前にハルは背負っていた大きな荷物を地面に降ろし、こっちを見て
「これ、お願いしますね」
そう言って、目にもとまらぬ速さで
下級魔術師程度が勝てるわけがない……そう思い、止めようとしたが、もう遅い。
急速に近付いてくる小さな影に
ノイシュが一時的にでも助かった事に安堵したが、それも一時しのぎに過ぎない。
なぜなら今、目の前でハルが
「何が起こっているんだ……」
「私が聞きたいわよ……」
一体、何が起こってるの……?
言葉にすれば簡単な事だが、目の前で見ている私にとっては信じられない事だった。
お荷物だと思っていた下級魔術師の少年が、中級者の私達ですら恐怖する
わけがわからない。
尻尾を弾いたハルは素早くドラゴンの首元に飛び込む。
飛びながら振り上げられた右腕は、視認出来ない速さで太い首へと振り下ろされた。
「え、どういう事……いまので終わったの?」
音もなく地面に降り立ち、相変わらず緊張感の無い顔でこちらに歩いてくるハルを見て、思わず口から言葉が出てしまった。
ドスンッという音がして
一撃で……首を落とした!?
そんなの上級魔術師にだって無理……彼は一体……。
「すみません、余裕そうな事を話していたので、助けに入るタイミングが遅くなっちゃいました……」
「違うわよ……こいつは
少年は困ったような表情でこっちを見て、口を開く。
「え、ごめんなさい! モンスターとかあまり詳しくなくて……リーダーさんには悪い事しちゃいましたね」
「大丈夫よ。あれくらいなら私の回復魔術で治せるから……それよりあなたは一体……?」
ハルは困ったように笑い、私をみて――
「最初に言った通りですよ。僕はハル=ノーツ、下級魔術師で……
それを聞いて、私はある噂を思い出した。
『
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