第27話 パーティ②



 レイと共にこのパーティー場にあるすべての料理を食べまわった。どの料理もとてもおいしかった。中には、今まで食べたこともない料理が存在していて興味深かった。


 肉、野菜、魚、米、パン、スパゲッティ、ラーメン、うどん、そばなどなど俺の腹が限界になるまで食べられるだけ食べまくった。ここまで、おいしいものを食べるのは久しぶりではないのかというぐらいだ。ピーチェの宿に泊まった時はおいしいと言っても一般料理だったからここまで豪華なものは久しぶりだ。


 それは、レイも同じで久しぶりにおいしいものを食べたのかどうかわからないが少なくとも俺のはレイがここまで大食いキャラだとは思ってもいなかった。ただ、俺の視線に気づいたのか途中で顔を赤くして食べるのをやめた。



 「どうした? 皿にまだ残っているぞ」



 レイの手に持っているお皿にはまだサラダが残っていた。レイの体調が悪くなったのかと思って聞いてみた。



 「いや、そんなことないです。ただ、こんなに食欲がある女の子ってどうかなと思いまして。ギンさんはどう思いますか」



 「うーん。別に俺は、そのくらいは気にしないけどな。食べたいときには食べればいい。無理に痩せようとしたりする方が逆に体に悪くて心配になる」



 俺は思ったことを素直に言う。ただ、昔同じことを言ったことがあるがその時は女の子の気持ちをわかってよと言われて逆切れされた覚えがある。


 だから、素直に言った時にレイに怒られるのではないかと少し考えてしまったがレイの態度は変わることなくむしろ笑顔になっていた。



 「そうですか。えへ、ありがとうございます」



 その笑顔に俺は少しドキッとしてしまった。ただ、俺としてはレイに関して1つだけ心配に思っていることがある。ただ、重い話なのでなかなか切り出せない。俺とレイの間には微妙な空気が漂っていしまった。


 それから、体感的には長く感じたが実際はほんの十数秒に過ぎない時間が経ってついに口を開こうとした。しかし、それと同時にレイも口を開く。



 「あの、レイ」



 「ギ、ギンさん」



 「「………」」



 むしろ、気まずい空気が濃くなったというか悪くなったというかともかくまたお互いが黙り込んでしまった。



 「ギンさん」



 先にこの空気を破ったのはレイだった。「な、何だ」と俺は動揺しながらも動揺を隠すように言う。ただ、実際は隠せてはいなかった。めちゃくちゃ声がおかしかった。


 その言葉を聞いたレイは笑っていた。ただ、俺には笑うことができなかった。レイもすぐに笑わなくなった。これから、話す真剣な話をするためだ。



 「レイ。これからどうするつもりなんだ」



 これからどうするつもりか、この話の発端はレイの父さんは盗賊団不死の宝石の下っ端に殺されていることだ。つまりは、レイのお母さんは早くに亡くなっているらしいから身寄りが無くなっているということである。このままレイがどう過ごしていくのか俺には心配であり気がかりとなっていた。はたからは迷惑だと思われるが、レイの父さんを守れなかっただけの懺悔にしたいという自己勝手なおせっかいだ。



 「その、実はもう決めているんです」



 レイは答えた。


 もう決めている。レイはこれから先に一体どうするのだろうか。おそらくというか確実にメイという親友がいるからメイと一緒に暮らすのだろう。その時の俺はそのように思っていた。しかし、レイの決めたことは俺の想像を越して斜め上をいっていた。



 「ギンさんと一緒に旅をしてそして、魔術師になります」



 「へっ?」



 思わず間抜けな声が出てしまった。


 魔術師になる。いや、その前に俺と一緒に旅をする。俺と一緒に旅をするっ!?



 「えっ! ちょっと待ってくれよ。ど、どういうことだ。もっと考え直してみなよ。魔術師にならなくてもこの町で暮らしていくことができるだろう」



 必死に本当にそれでいいのか説得してみる。しかし、レイの意志は変わらなかった。曲がることはなかった。



 「よく考えました。今の私がいるのはギンさんのおかげです。ギンさんがいなければ私は盗賊団の人質として一生暮らしていたでしょう。だから、私は恩返ししたい。そして、ギンさんのために共に戦いたいっ。だから、魔術師になることを決めました」



 レイは自分の決意を述べる。その決意はレイの潤んだ瞳からも分かった。もう納得しないといけないのか。これも本人のきめたことだしな。本人の意思を尊重しないとな。



 「わかった。俺はいいが、ピーチェもいるから後で話しておいてくれ」



 俺が了承すると万年の笑みで答えた。



 「不束者ですがよろしくお願いします」

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