第17話 メイ




 病気の人が数人いた。お年寄りの3人と大人の男性1人は病気の程度が軽いものであったらしく治癒魔法を少し発動しただけで顔色が良くなった。だが、1人だけは何も変わらなかった。それが、レイと同い年の友達メイだった。



 「ギンさん。メイの様子はどうですか?」



 レイが心配そうに聞いてくる。俺は、その時のレイの潤んだ瞳を見て一瞬かわいいと思ってしまったがこの状況下でこんなことを考えてしまったのは不謹慎だと思い、改めてレイの質問にはとても答えずらかったがこのままではらちが明かないので答えることにした。



 「レイ。すまないがメイの様子は非常に悪い。このままだと1週間は持たないかもしれない」



 「1週間………」



 レイが呟いた。


 横たわった状態で俺達の会話を聞いていたメイが口を開く。



 「私は、もう、死ぬことが、分かっています。これは、たぶん、神様の、裁きなのでしょう。私の、この人生に、対するゴホッゴホ」



 その言葉は弱弱しく死期に近づいている人を連想するものであった。咳もひどい。顔色もとても悪い。健康状態もひどい。


 俺は、メイを助けることができるのか。治療魔法はこれ以上レベルの高いものは使えない。このままだと、メイは死んでしまう。俺は、自分の目の前で人が死ぬ場面をもう2度と見たくないんだ。『彼女』が死んだあの日から2度と。


 ………いや、まだだ。俺にはまだ隠してきた切り札があるじゃないか。まだ、成功率は50パーセントにも満たない。そもそも偶然図書館の最深部で見つけた古井書に書いてあった魔法だ。禁術に指定されているかもしれない。禁術を使用した暁には俺は罪人として処刑に処されるだろう。だが、誰か守るために存在する魔法が禁術のわけはない。だから、


今ここで使おう。メイ、君を守るために。



 「ギンさん」



 レイが俺がメイに何かしようとするのを見たので止めようとした。別に悪いことをするつもりなどなかったがレイは何か感じたらしい。



 「レイ。必ずメイは元気にならせてみせる。だから、町の人たちと共にここから脱出してくれ」



 「えっ!? でも………」



 レイはそれでも食い下がろうとしている。お前は、そんなに熱かったのか。いつもおどおどしている奴だと思っていたんだけどな。



 「レイ。いいから俺の言うとおりにしてくれ。次に会うときはメイが元気な姿で合わせてあげるよ」



 レイはそれでも首を縦には降らなかった。



 「嫌です」



 決意が固い。これ以上言ってもどうしようもならないか。仕方なく、レイには残ってもらうことにした。そして、俺はある魔法を発動することにした。



 その魔法とは………。

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