第15話 目的
俺は、エードに向かって走り出した。
エードは、俺を見て一瞬だけ笑みを漏らしたかのように見えた。
「もらったぁぁ」
俺は素早くエードの前に着き魔法を発動させる。
「ファイアーボール!」
大きな火の玉がエードの顔の前で爆発する。相当至近距離で撃ったのだから結構なダメージを受けただろう。火の玉を放ったことでエードの周りは煙に包まれていて様子が見えなかったが、徐々に晴れてきた。そこには、まったく無傷のエードが立っていた。
「なっ!?」
どうしてだ。今のは結構なダメージを受けても仕方ないのに、もしあったとしても完全に俺の魔法を防ぐことはできないはずじゃ。
俺が動揺している様子を見たエードは微笑を浮かべた。
「なんだ? そんなに私が無傷なのが驚いたのか? だったらその認識じゃ甘いぞ。いいか、今の私はあの時とまだ同じだと思うなよ。これでも、成長しているんだ。次は私から行くぞ」
ゾクッ。
「っ!」
これは、相当な殺気だ。昔のエードからは信じられないほどの力を感じることができる。あの時、一級魔術師に昇格すると言われていた実力をはるかに超している。これは、おそらく現神に選ばれし13人の13人よりも強いかもしれない。
だが、この状況はかえって燃える。強い奴と戦えるなんて最高じゃないか。
「スプラッシュボール」
水属性の魔法! これは、俺の弱点をついてきたな。こんな小さな泡状の球体なのに俺の技が利かないなど。ない! 火だって水にも勝てるんだ。
「ファイアーボール!」
エードの放ったスプラッシュボールと俺の放ったファイアーボールがぶつかり合った。大きさ的には俺のファイアーボールの方が大きいはずなのに小さい泡状のスプラッシュボールに押し負けていた。そして、そのまま2つの球は爆発して辺り一面霧に追われた。
「見えない?」
俺の目の前も後ろも見えなかった。どうやら、さっきの爆発でこの部屋全体に霧が覆われ視界が失われてしまった。
これは、エードの作戦なのか? もし、エードが霧が発生することを前提として戦っていたのなら俺は、不利な状況に一瞬で持って行かれる。集中してエードの動きを見ないとな。
──しばらくして。
「おかしい」
あれから3分は経った。なのに、エードは一切動きを見せない。何か作戦があるのかということを疑ったがいかにせよ、何も状況は変わらない。
それから、しばらくしてようやく霧が晴れてきた。霧が晴れてきて俺が目にしたものは想定外のものだった。
「盗賊が死んでいる?」
先ほど、俺を相当しつこくストーキングしてくれた盗賊たちが1人残らず死んでいた。近づいてみると体がぬれていた。ぬれていた? まさか、これをやったのはあいつなのか。
ギンがいる部屋から少し離れた通路。
「ギン。お前が来てくれてうれしいよ。これでようやく任務を果たせるから」
その通路を1人で歩いていたのは先ほどまでギンと戦っていたエードであった。エードは、実は行方不明になったわけではなかったのだ。彼は、上、政府から言い渡されている極秘任務があった。
「では、私の本当の目的。この不死の
そう言って、アジトの最深部に向かって歩いていく。
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