第47話
「はぁ……」
蘭はため息をつく。
薄暗い公園。
ひとりで月を見上げる。
「お?かーのじょ!俺らと遊ばない?」
チャラそうな大学生風の男が蘭に声を掛ける。
「いえ、そういうのいらないです」
「えー?いいじゃんかー」
そういって男が蘭に近づく。
怖い。
蘭はそう思った。
「嫌です」
蘭は震える。
「怖くて怖くて震えるってか?」
大学生が笑う。
「あ、あの……やめてあげてください」
その声に蘭は聞き覚えがあった。
その声の方を確かめるように見る。
やっぱり龍一だった。
「ああん?お前、彼女のなんなのさー?」
大学生が龍一の方を睨む。
「なんでもないです」
「あ?なんにもないのなら声かけんなよ」
「そうじゃなく、彼女とは知り合ったばかりで……
その……」
「ああん……?
って、あー。そゆことね」
大学生がニッコリと笑う。
「うん?」
龍一が首を傾げる。
そして、蘭の方を見る。
蘭は全速力で走っていた。
「追いかけろ!」
大学生が大きな声でそういった。
「え?」
「黙って追いかけろ!」
大学生が怒鳴る。
龍一は、困った。
どう対処していいかわからない。
「じゃ、こうしよう。
ぶっ飛ばされたくなければ追いかけろ!」
「なんで?」
大学生の言葉に龍一は戸惑うばかり。
「彼女。泣いてただろうが!」
その言葉を聞いた瞬間、龍一の体が動いた。
小さくなった蘭を追いかけた。
「はぁ。柄じゃねぇんだけどな」
大学生がケラケラと笑う。
「頑張れよ。
名も知らぬ少年!」
そういって月を見上げた。
月は満月。
そして、ほんのりと赤かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます