第6話

 僕の初めての恋は、小学生の頃だった。

 きっかけは、共通の友だちの転校したことが、きっかけで少し話をした。

 そして、もうひとつのきっかけ……

 それは、その共通の友だちが引っ越したことで席が開くので席替えをすることになった。

 そこで、僕は彼女と隣になった。

 彼女は、物静かだったけどその共通の友だちと仲が良く、その子とはよく話をしていた。

 僕も彼女とは少し話をしたことがある程度で、深い仲というわけでもなかった。

 話すと言っても挨拶程度……

 可愛いといえば嘘になりブサイクと言われればそうじゃない。

 ショートカットで、優しい顔をした女の子。

 そんな彼女が、席が隣になって一週間くらいしたとき、休憩時間に声をかけてきた。


「姫野くん、元気にやってるんかなー」


 彼女は、そう言って苦笑いを浮かべた。

 僕は、なんて答えたら良いかわかんなかった。

 わかんなかったけど、こう答えた。


「アイツは、なんだかんだ言ってどこでもやっていけると思うよ」


 そう言うと彼女は、ニッコリと笑ってこう答えた。


「そうだよね」


 多分、彼女は姫野のことが好きだったんだと思う。

 よく泣くヤツで、かっこつけだったけど女子にはこっそりと人気があった。

 それに反して僕は、どちらかと言われると嫌われている方で、あまり人から話しかけるってことはなかったし嫌っている人とは話したいとは思わなかった。

 挨拶をするだけで精一杯。

 それが僕だった。

 それに毎日いじめられて泣いていた。


 靴を隠されたり喝上げされたり虫を口にねじ込まれたり……

 無視は、少なかった。

 むしろ、構うようにイジメを繰り返されていた。

 一通りの嫌がらせを受けていた。

 今更ながらに思う。

 よく耐えたよ僕。


 それから、僕と彼女は毎日、話すようになった。

 僕は彼女に少しずつ心を開くようになった。

 そして、それと並行するかのように嫌がらせは僕にではなく……

 彼女にへと少しずつ移っていった。


 一緒に遊ぶことはなかった。

 だけど、休憩時間に話す時間は長くなった。

 僕と話すことで彼女は、嫌われていくのに……

 僕は、彼女と話すのが楽しくて話してしまっていた。

 彼女の優しさに甘えていたのだ。


 気がつけば、僕は彼女の他に友だちが何人か出来ていた。


 一緒に遊んでくれる友だちができていた。

 放課後、友だちと遊ぶのがこんなに楽しいのかと思うくらい楽しかった。


 そんなある日……

 僕はその友だちに言われたんだ。


「な、これからアイツのこと無視しようぜ?」


 僕は何も言えなかった。

 嫌だといえる勇気がなかった。

 ただ、僕は黙って彼女の悪口を聞くことしか出来なかった。

 その次の日も彼女は優しい口調で話しかけてくれていた。

 僕は、相槌をうつくらいしか出来なかった。

 そして、それから数日後……

 彼女の顔は切なく、そして寂しそうにこういったんだ。


「私って、貴方と気が合うと思う」


 その言葉を聞いた僕は、なぜだか胸がチクりと痛んだ。

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