第7話しつけ

「収入は減ったけど、家を売った時の御金がまだ三千万残っているから、気にする必要もないか」

 妖狐達の食費や備品購入費で、男の生活費は倍増していた。

 薄利多投稿の動画や小説の投稿も半減しており、ここ一ヶ月は貯金を切り崩す生活になっていた。

 だがそんな事は全く気にならなかった。

 この一ヶ月でメキメキと成長した妖狐の仕草が、余りにも可愛かったからだ。

 足腰がしっかりしてきて、少し早く動けるようになってきた。

 耳が大きくなり、位置も頭の上の方になってきた。

 口元も広がり、少し強くなったのだろう。

 上手に食事が出来るようになった。

 健康で物怖じしない性格の緑の子は、好奇心旺盛で、どんどん行動範囲を広げている。

 狩りをイメージしているのか、買い与えたおもちゃや、桃色の子に向かっていったする。

 それどころか、身軽に家具に登ったり、おもちゃにジャンプして飛びついたりしている。

 昔弟が飼っていた猫を思い出すと、あまり速いスピードには反応出来なかったように思うが、緑の子は速いスピードにも反応している。

 妖狐なのだから、猫とは比べられないが、それでも猫よりも反射神経がいいのだろう。

 だが猫と同じように、念の為に買っておいた爪とぎを使っている。

 借家だから、柱を爪とぎに使われると困るので、男はほっとしていた。

 子猫と同じように、遊びは手か口を使うようで、兄弟で互いに噛みついたり、引っ掻かれたりしている。

 本当は兄弟で噛み合う事で、痛さの限界を覚えるのだが、緑の子が桃色の子を一方的に攻撃している。

 桃色の子は気が弱いようで、無抵抗だ。

 余程痛い時にだけ、悲しそうに鳴くので、その時は緑の子も攻撃を止める。

 桃色の子も攻撃して加減を覚えてくれないと、本気で怒った時に相手に怪我をさせてしまうかもしれない。

 まあ、大人しいモモが攻撃するくらいの時なら、少々怪我させても仕方ないとも思うが、殺してしまうと問題がある。

 裁判沙汰など経験したことがないから、少し臆病になってします。

 まあこんな田舎の一軒家だから、誰かが訪ねてくることもない。

 隣まで原付で三十分もかかるから、加減を覚えなくても、御隣のペットや家畜を殺してしまう心配はないだろう。

 でも男も、大人になった桃と緑から、自分が本気で噛まれるのは嫌だから、今から手に噛ませて、強すぎる時には叱って加減を覚えさせることにした。

 男は自分の手や足に桃や緑が噛みついてきたら、動きを止めて待った。

 桃と緑の目の前ですばやい手や足を動かすと、遊びの対象になって余計に噛みついてしまうことがあるので、ゆっくりとした動作で教えることにしたのだ。

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