第134話突入

「王都の周囲を巡り、破壊されている城門を確認する」

「「「は」」」

 アレクサンダー王子の命を、三人は拝命した。

 王子と一緒にロジャーが右回りに王都外周を確認し、パトリックとマーティンが組んで左回りに王都外周を確認した。

 王子一人で一度だけ確認するのではなく、時間短縮の為に半分ずつ役割分担して確認するのでもなく、二組が目を変えて二度確認する事で、見落としのないようにしていた。

「八つの城門の内、一カ所だけが破壊されていた」

「はい。他の城門も開放されたままですが、破壊の痕跡はありませんでした」

「開け放ったままだと、盗賊団が侵入した痕跡を見つけるのは無理だな」

「はい。入ってみなければ分かりません」

「四人一団となって、城壁内周を巡る」

「「「は」」」

 王子の命で、四人は一緒に最遠部の城壁を見回った。

 特に破壊されたような状況もなく、盗賊団とも遭遇しなかった。

「一気に王城に行く」

「「「は」」」

 王子は、一番広大な庶民地区や中産地区を見廻らない決断をした。

 その間にある城壁の確認も止めた。

 最大限にまで引き上げた身体能力を駆使して、濠と城壁を突っ切り、最短距離で王城を目指す事にした。

 途中で魔族やアンデットと遭遇するかもしれないが、魔族が父王と王太子を標的にしているのなら、出会うとしたら王城近くになると考えたのだ。

 富裕層が護衛を使って城壁や屋敷を守っていれば、富裕地区で魔族やアンデットを食い止めているだろう。

 士族が本来の役目を全うしていれば、士族地区の城壁や屋敷で魔族やアンデットを食い止めているだろう。

 上級貴族や下級貴族、高貴なる者の義務を忘れていなければ、家臣団を指揮して、貴族地区の城壁や屋敷で魔族やアンデットを食い止めているだろう。

 だが、その願いは虚しかった。

 庶民地区・中産地区・富裕地区にアンデットの遺骸はなかったのだが、士族地区辺りから、アレクサンダー王子が放ったターンアンデットの一撃で昇天した、アンデットの遺骸が少しずつ倒れていた。

 下級貴族地区からアンデットの遺骸が増え始め、上級貴族地区では一面にアンデットの遺骸が散乱していた。

 情けない話だが、上級貴族達は自分達でアンデットを防がず、王城に逃げ込もうとしたようだ。

 その為に、堅牢なはずの上級貴族の屋敷に籠城することなく、大通りでアンデットに襲撃され、自分達がアンデットに化してしまったのだろう。

 中には領地にいて不在だった上級貴族もいたはずだから、全ての上級貴族が臆病で無能だったとは言えないが、王家王国が期待していた、外城や砦としての役目ははたしていなかった。

 王城内から裏切り者が出たのか、大貴族が無理矢理開けさせたのか、王城の城門まで開け放たれていた。

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