第115話宮廷魔導士

「火炎壁陣」

「氷結壁陣」

「岩石壁陣」

「風嵐壁陣」

「雷嵐壁陣」

 逃げる王の側近くにいた魔導士が、魔族に憑依された近衛騎士団長を阻もうと、各属性の壁を創り出した。

 地下道を使って逃げるに当たり、地下道を封鎖するのに最適の魔法が使える、選りすぐりの魔導士が王の側にいた。

 圧倒的な魔法は、魔族に憑依された近衛騎士隊長の進撃を阻んだ。

「解除」

 追撃を阻まれたかと思われた魔族に憑依された近衛騎士隊長だったが、人間界に来てから学んだ魔法を駆使して、次々と魔法の壁を解除していった。

「火炎壁陣」

「氷結壁陣」

「岩石壁陣」

「風嵐壁陣」

「雷嵐壁陣」

 だが、また宮廷魔導士が魔法の壁を創り出し、魔族に憑依された近衛騎士隊長の追撃を阻んだ。

 魔族の防御魔法では突破出来ない、強力な各種属性壁を創り出すには、多くの魔力を必要とした。

 だが宮廷魔導士には、最高の魔道具が与えられていた。

 魔法を使うのに必要な魔力を減ずる魔道具や、発動する魔法のレベルを引き上げる魔道具。

 当然だが、予備魔力を蓄えておく魔晶石は大量に貸し与えられていた。

 それらの魔道具を駆使して、宮廷魔導士は必至の防衛を行っていた。

「解除」

 それでも、魔族は諦めなかった。

 着実の魔法の壁を解除し、一歩一歩追いかける。

 この国の王を確保して憑依出来れば、絶対の支配者になれると確信したからだ。

 それほどこの国の魔道具は、魔族にとって有益なモノだった。

 それは同時に、魔族を滅殺する事が出来る道具でもあった。

 だから絶対に、諦めるわけにはいかなかった。

 魔族本体の魔力を大量に使ってでも、ここで王を確保したかったのだ。

「火炎壁陣」

「氷結壁陣」

「岩石壁陣」

「風嵐壁陣」

「雷嵐壁陣」

「解除、解除、解除、解除、解除」

 慎重な魔族がじれた。

 焦ったと言う表現よりも、苛立ったと言う表現の方がいいかもしれない。

 魔族から見ても、このままでは、王達が地下道から逃げ出してしまうと思われた。

 それくらい長い時間、王達に翻弄されてしまった。

 王達から見れば、返り討ちに失敗し、追撃を諦めさせることも出来ない、大失敗なのだ。

 一方魔族から見ても、忸怩たる思いの大失敗なのだ。

 そこで魔力の回復を待たず、魔法の壁を解除するための魔法を連発した。

「火炎壁陣」

「氷結壁陣」

「岩石壁陣」

「風嵐壁陣」

「雷嵐壁陣」

「解除、解除、解除、解除、解除」

「うぎゃぁぁぁ」

「ウグゥゥゥゥ」

 そんな事を何度も繰り返し、遂に宮廷魔導士の魔力が尽きてしまい、最側近の近衛騎士が次々と斃されていった。

 そして同時に、魔族本体にも激烈なダメージが与えられた。

 魔族が油断していたのだが、最側近の近衛騎士は、それなりの装備を貸し与えられていた。

 さっき魔族が斃した後衛の近衛騎士は、ダメージ反射の装備は身に付けていなかったが、最側近は貸し与えられていたのだ。

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