第17話 喉元過ぎれば…。

一週間後。


学園を去り組合に戻って警邏隊として働くことを決めた者は4人。

24人の生徒が学園に残ることになった、のだが……。



「ちょーだるくなぁーい?」

「眠い」

「なーなー、次の休み、みんなでどっか行こうぜ」

「いいねー! いこいこー」


全く変わらない、どころか。


仲良くなった分、酷くなっているのは気のせいか?

リリアは咳払いを一つすると、額に青筋を立てながら満面の笑みを生徒達に向けた。


「今まだ授業中、なんだけど?」



「まあ、あいつらの不真面目さは昨日今日始まったことじゃないしな」

「筋金入り、だもんねぇ」

「驕りや妙な自信はなくなったけどね」


講師室でお茶を飲みながら雑談するアーサーたちに背後に、下級魔族であれば尻尾を巻いて逃げ出すくらいの殺気を纏ったリリアがものすごい仏頂面で立っていた。


「お? おつかれ」

「リリアちゃん、顔死んでるぅ」

「とりあえず座ったらどうだ、リリア?」


リリアは仏頂面のまま乱暴に椅子を引くと、勢いよく座り、そのまま机に突っ伏した。


「あいつらクビにしたいというかいっそのこと消したい。…消していい?」

「いや、それは駄目だろう、流石に」

「気持ちはわかるけどぉ」

「大人になろうか、リリア」

「私、すっごーく我慢してると思うけど? 大人になったと思うけど? これ以上どうしろと!?」

「いっそのこと素でやったらどうだ?」

「はい!?」

「無理して講師らしくしなくていいんじゃねえの? 勇者時代のハチャメチャな感じで、お前らしく授業すりゃいいんじゃね?」

「そうね。人妻だったり母親だったりで勇者時代は封印しているのかもしれないけど、あの子達には『普通』は通用しないわよ。リリア・マロンじゃなくて、カロリーナ・マロンとして教壇に立ってみたら?」

「…この学校潰すよ?」


潰れるよじゃなくて潰す、と言い切るリリアに、一同は顔を見合わせて笑った。


「潰されちゃうと困るだろうがな。エイブラムもこの学校の、特にお前のクラスのシールドだけは、組合のご老体も巻き込んで念入りに張ってたからな。多少の事なら大丈夫だろう。構内が厳しければ、裏山へ行けばいい。あそこだったら多少暴れても問題ないだろう」


リリアは少し考え込むと、深いため息をひとつ吐いた。


「ま、ちょっとエイブラムと相談するわ。一筋縄じゃいかないのは、よぉーーーーっくわかったから」


リリアはそう言うと、踵を返し、学園長室へと足を向けた。


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