第4話 昔の仲間とえんやこら。
エイブラムが来てから半年。
てっきりすぐに明日からでも、って話かと思いきや、学園自体がまだ開校してなくて。
研修という名の元に招集がかかり、昔の懐かしいメンツに会ったり、体術や魔術のおさらいだったり、誰がどの教科を担当するか話し合ったり。
なんだかんだと忙しい日々が過ぎていった。
この学園は、完全な新規の入学生ももちろんいるが、現在組合に所属している『使えない』人達も多数入学してくるらしい。事前に組合で筆記、実技の試験があり、合格できなかったものは強制入学とか。
現在の勇者事情に全く明るくないリリアは、昔の仲間たちからレクチャーを受けた。
「てかさー、私達の頃って、誰かに何かを教わって勇者になったわけじゃないよね? 教わらなくてもその辺のちっちゃい魔物倒していってレベル上げていって、お金も稼いで装備やアイテム揃えたり。それを教わらないとできない若者ってなんなの?」
「リリアはあいつらに会ったら一発ぶちかましそうだもんな。…やるなよ?」
笑いを含んだ声で忠告してきたのは、人一倍身体の大きい極太マッチョのアーサー。元剣士で、剣術を主にした武術を担当するらしい。
「リリアの理性がどこまで保つか、みものね」
そう言うのは短髪黒髪ストレートですらっと背が高く、妙な色っぽさを持っているユラ。彼女は魔術担当だ。
「えーなんか怖いなあ」
「大丈夫ですよぉー。根は悪い子達じゃないいしぃー。ちょっと頭が悪いだけでぇー」
鼻にかかった甘ったるい声に、砂糖菓子みたいなふわふわした髪の毛のちょっと人間離れした少女が、ティナ。見た目はお人形さんみたいに可愛い彼女だが、たぶん怒らせると一番怖い。そしてこう見えてマッドサイエンティストだ。彼女の担当は薬の調合や回復アイテムの作り方や強化。
「あんたにだけは言われたくないと思うわ」
「えーどういう意味ですかぁー」
ふてくされるティナに笑いが沸き起こる。
「で、私は何の教科を担当したらいいの?」
「カロリー…いえ、リリアさんには総合監督と落ちこぼれクラスをお願いしたいな、と」
「総合監督?」
「リリアさんは何かに特化してるわけではなく、というか全てにおいて特化しているので、教科を固定するより、より高度な技術や他の講師陣のサポート役をお願いしたいと思いまして」
「それはわかったけど、落ちこぼれクラスっていうのは?」
「開校してみないとわからない部分でもありますが。明らかにやる気のない生徒、できないくせにやればできるとか思い込んでる生徒など、他の真面目に取り組んでる生徒さんに悪影響を及ぼしかねない生徒を一つのクラスにまとめますので、性根を叩き直して頂きたいと思いまして。このクラスに関しては、どのくらいの人数になるかわかりませんが、リリアさんと私とで担当したいな、と」
「学園長自ら担当するの?」
「あくまで私は補佐ですけどね。リリアさん一人で手に余るようでしたらお手伝いしますよ、ってことで」
「なるほど」
「まあ、どんな生徒がどれだけ来るか、まださっぱりわかりませんからね。しっかり準備だけは整えておきましょうか。みなさん、授業で使うものとかで必要なものはありますか?」
「はいはぁーい! 実際に作ってみて作り方おさらいしときたいからぁ、もうちょっと薬液ほしいー」
「木刀用意してもらったんだが、もうちょっとソフトな練習剣作れねーかな? 木刀でも骨の一、二本簡単に折れちまうからなあ。剣も握ったことない素人さんが振り回しちゃ危ないからな」
「わかりました。他にはよろしいですか? それでは、開校まであと少し。みなさんで頑張りましょー!」
「「「おー!!!」」」
こうして、開校に向けて準備が着々と進められていった。
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