第43話 ステージ続行?

日付が変わってもまだ天候は回復しない。

雷とひょうはおさまったが、風と雨は強い。

あまりのひどい天候に、ゲルに避難させてもらったエントラントもいたそうで、ゴールしているライダーは半分ほどだ。


翌日のステージが実施されるかどうかも、まだ発表はない。

本来ならば、明日のための準備や、マシン整備もしなければならないが、そんな余裕もなく、みずきもまだ回復している様子もないので、僕はみずきの寝ている、高さ50センチほどの寝台とベッドののような寝具によりかかり、ウトウトしていた。


「小林君。お疲れ様。」


呼びかけに目を開けると、K女史がカップを持って立っていた。


「あ・・・。どうも。」


カップを受け取り、甘いお茶をすする。

疲れた体に染み渡るような気がする。


「うん。落ち着いたみたいね。」


K女史はみずきの額に手を当てると、僕の方を振り返って言った。


「みずきちゃんが目を覚ましたら、シャワー室に来るよう言ってあげてね。」


ここはホテルではなく、あくまでツーリストキャンプ。なので、シャワー室が各部屋についているわけではない。


「ありがとうございます。明日のステージはどうなるんですか?」


僕立ち上がってK女史に尋ねる。


「そうねえ。」


彼女は腕を組んで、考え込むしぐさをしつつ言う。


「まだわからないのよ。確かにゴールしていない人は多いけど、天候が悪化する前にゴールした人もいるしね。

彼らはそれなりのスピードでレースをしているし、明日の準備もきちんとしているわけだから、簡単にキャンセルなんてことはできないの。」


確かにそのとおりで、リスクを犯して、今日のステージで、せっかく前走者とのタイム差を詰めて、明日のステージにかけているエントラントもいるわけだから、簡単にキャンセルもできない。

ただ、ラリー全体で考えるのであれば、未着者多数を置き去りにして、次に進んでしまうのは難しいし、何より、悪天候の中、ラリーを続行することのリスクも大きい。


「とりあえずインフォメーションボードをよく見ていて。公式発表はそこに掲示します。」


そう言って彼女は部屋を出ていこうとするが、僕はもうひとつの懸念事項を聞いてみる。


「NO20・・・。シェリルはゴールしましたか?」


「ああ、あのアメリカ人の女の子ね。」


K女史はちょっと表情を曇らせる。


「彼女はね。」


「緊急ヘリで運ばれたわ。」

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