スタートライン~70歳だけど、今に見ておれ~

水木レナ

プロローグ

 七十を過ぎての起業は大変である。


 絶えず人の手を借りなきゃなんないし。


 打ち出の小づちを振るのも財布が空っぽだし。



 厚生年金は五十八歳から受けとってるからとっても安いものだし。



 ものつくり。


 美大で知り合った甘夏あまなつ(通称ミカン)という男に影響されて始めた。


 本当は何でもいいのであった。



「ミカン、あなたスワロフスキーの在庫もってない?」


『美春、おまえ、夜中はよせとあれほど……ああ、何でもない。同期のやつ。貴女は寝てなさい……ったく、何だよ、今度は』


「スワロフスキー。安いのでいい」


『んなもん知るか!』


「急いでね」


『オレはおまえが嫌いだ』


「こっちもよ。気が合うわね」



 わね、と言いかけたところで通話は切れた。







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