第98話 覇王妃さまのお昼の情事?(1)

〈ニョキ、ニョキ〉


『キョロ、キョロ』


 ……ん?


〈ニョキ、ニョキ、ニョキ……〉


『キョロ、キョロ』


 あれ? いない? と。


 虞美人草のような、奥ゆかしく、か弱い乙女心を持つ美しい覇王妃さまの声がしたね?



 それもさ、籍の部屋から夜半ではなく。お昼──。


 そう、真っ昼間から聞こえてきたのだ。


 だから『あれ?』、『何故?』と、思う。


 まあ、思ってみているのだから致し方がない。


 と、いうか?



 彼女は? 妖艶、物の怪。精霊さまであらせられるダークエルフの女性。幽霊巫女さまなのに、何で真っ昼間から彼女、覇王項羽さまが現れることが可能なのだろうか? 


 だって基本、物の怪、お化け、幽霊と世に言われる悪しき者達……。




 特に覇王妃さまのような妖艶、官能、麗しい幽霊のヒロイン達は、真っ昼間から、怪談話の男主人公、ヒーローと呼ばれる殿方の許に現れ、優艶に逢引き、夜這い。濃厚接触、交わり、重なり逢いをしない筈なのに彼女──覇王妃さまは、籍のパソコン・液晶画面の中ら『ニョキ、ニョキ』、『ズルズル』、『ニョキ!』と。


 それも?



 己と主の愛の巣であるこの部屋──。六畳一間の部屋に、覇王妃さまは、己の主である籍がいると思いながら。


『おいで~、おいで~』と。




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