第50話 御対面?(12)

 だから何事? と、言うか? 何が二人の間に起きたのだと思いながら梁の顔を確認してみたのだ。


『えぇえええ~。うそ~?』


 そう、梁の美しい顔を見て最初に出た言葉がこれなのだよ。


 だってさ、いつもの美しいお顔の梁さまではなく。自身の眉間に皺を寄せ、強張った顔……。




 そう、般若面と言うか? 嫉妬に狂った女性の顔とでも言った方がいいのだろうか?


 まあ、とにかく? 古の大英雄であり、未だに中華最強の武人なのではないか? と、語り継がれ。世に絶賛されている一騎当千万夫不当の武士(もののふ)である覇王項羽が、りょうさまのお顔を凝視して驚嘆……だけではなく。


「ヒッ」と、恐れ慄くような声まで漏らしながら、己の肩をすくめて。


「ど、どうぞ……」と声を漏らして、梁殿へと道を譲ってしまうほど。


 今の梁の顔は本当に恐ろしい形相をしている、だけではなくて。


 梁自身の身体中から、大変に恐ろしい威圧と勢いも感じられるので。


 その恐ろしい威圧と勢いに押されて、覇王項羽も身を竦めてたじろぐのであった。


 まあ、それぐらい今の梁は恐ろしい形相と容姿──嫉妬に狂った魔物と化してしるのだ。


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