第3話 鬼火が舞う部屋の中の様子は?

 鬼火が二階の窓から屋根の上へと、フラフラと、行ったり来たりと出入りを繰り返している部屋の中を覗き様子を窺うと。


 やはりいた!


 何かがいた!


 この世の者では無い、何かがいたのだ!


 そう、この日本の蒸し暑い夏の夜を涼しくしてくれる風物詩の一つである者……。



 見た者を恐怖のどん底へと陥れて畏怖させる者や、魅入り虜にしてあの世、冥府、極楽浄土、桃源郷へと誘う者達……。



 この蒸し暑い日の本の、暑さを吹き飛ばし、背筋を凍らしてくれる者達……。



 幽霊、妖怪、精霊、地霊と。


 まとめて物の怪呼ばれる者の姿がある。


 だから少年は、先程絶叫を上げたのだ。


 自身の瞳に映る。


 どころ、ではないのだ!


 そう、少年の目の前──。


 それも、彼と物の怪との距離間は、二人の顔、唇が、いつ触れ合ってもいいぐらい近接した距離間。


『零』と、呼ばれる距離かんで対峙、向き合っているのだ。


 だから少年よ! 直ちにその場から逃げなさい! 退却をしなさい!


 今直ぐに! と、申したい衝動に駆られるのだが。


 彼の、少年の様子を凝視、窺えばわかる通りだ。


「うっ、うう、うっ、うううぅっ」と。


 少年が言葉にならない、声を漏らしている通りだ。


 彼は先程、絶叫を上げた後、物の怪に……。



 そう、褐色色の肌をした妖艶、優艶、麗しい物の怪の女性に対して不謹慎にも絶叫を上げ、畏怖──。


 恐れおののいてしまい。


 怪訝な表情──無愛想をしてしまったから。


 物の怪の彼女の逆鱗にふれてしまい。


 彼女に険しい顔で睨まれ。


「喝ー!」


 そう、喝を入れられてしまい。


 刹那──!


 その後は金縛り。


 だから彼は、言葉にならない台詞しか漏らす事しか出来なくなっているのだ。


 お可哀想に。


 まあ、そう言う事だから。


 再度彼に『南無……』と、御経を唱え、祈ってあげる事にする。



 ◇◇◇

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