第211話 僕は大変に身体に良い。薬膳料理にも使用されるくこの実(7)

「ああぁ、ママ。ママだけずるい。ずるいよ」と。また幼い絵里ちゃんが、家の怖い顔のおじさんへと不満を漏らしてきた。……だけではすまない。すまないのだ。家の怖い顔のおじさんへの不満を漏らす。呟く人達はね。


「ああぁ、おじさん、先程から、そこの綺麗で若いお姉さんにばかり試食。それも、丁寧に渡しているよね。その小さな娘(こ)の言う通りで……」と。


 幼い絵里ちゃんに続き、このお客さま達の山、群がり。集いの中からこんな不満が漏れれば、収まりがつかなくなる。


「ああ、確かにおじさんは。そこのベッピンさんにばかり試食を渡している。いるよね?」


「うん、うちも、何か可笑しいと思いながら見ていた」


「あああ、俺も」


「私もおじさんは、そこの女性(ひと)ばかり見ている。見詰めていると思っていたよ」


「うん、そうだね。僕がおじさんに両手を出しても無視。無視ばかりしているからね」


「ああ、それうちも」


「儂は自分で試食をとれと言ってきたぞ。この店のおじさんは……」と。


 その他にも、この場、家の怖い顔のおじさんの販売ブース、売り場に集まる。集っているお客さま達は色々、多々と、ワイワイ、ザワザワと。家の怖い顔のおじさんへと不満を告げてくる。申してくるから。




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