第172話 僕は超珍しい漢【ウコンパンプ】(37)

「儂は何歳に見える? 見えるだろうか……?」と。


 己の顔に指を向けながら周り。自身の売り場に集まる。群がる。お客様達へと問う。


 問いかける爺さん……。



 そう、これがね、俺【ウコンパンプ】達の隣の販売ブース、売り場で、佃煮の物品販売をしている爺さんの布石の一つ、一つなのだよ。


 だってさ、隣の爺さんが、自身の周りに集まるお客様達へと声をかければ、たちまちにこうなる。こんな状態へと、お客様達は陥っていくのだ。


「う~ん、何歳?」


「何歳だろう?」


「何歳かな?」


「八十歳半ばぐらい……ぐらいかな……?」


「……いや、おじさん。おじさんは、そんなに齢を、年齢をとってはいない。いないよ」


「じゃ、八十歳頭位の年齢、齢なのかな……?」と。


 お客様達は、隣の爺さんの顔、皴、容姿を丹念に見る。見詰め確認……。



 そう、まるで、舐めるようにしながら。隣の爺さんの容姿を丹念に見詰めては観察するのだ。

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