第118話 話しは飛ぶが、齢九二歳の昭和の昔話……。(20)

「ああ、昔は、良く遭ったみたいだぞ。儂の知り合いや身内、親戚では、人攫いに遭ったと言った話しは聞いた事はないが。儂が幼子の頃に、先程儂等の目に映った子供達のように、親許から離れチョロチョロすれば。必ずと言ってよい程家の両親から人攫いに遭うから離れるなと、注意を受け、諫められたものだ」と。


 昭和一桁産まれの御老体は、また苦笑いを浮かべ、苦笑を漏らしながら家のおじさんへと呟いてきた。


「フム、そうか?」


「ああ、そうじゃよ。儂等の幼い頃は、人にぶつかるから危ない。怪我をする。他人に迷惑がかかるから親許から離れるな、も。確かに両親や親戚のおじいやおばあぁが言ってはいたが。今の子供達のような、自転車や自動車に跳ねられるから危ない。や、両親や親戚達が、チョロチョロと落ち着き無い幼い子達への最後のとどめ。恐怖心を煽り、擦り込む為に使用する台詞である。バイク、自動車に跳ねられ飛ばされて大怪我、死ぬから。儂等、うちら、親許から離れるな、ではなくて。人攫いあうから。遭っても知らんぞ? だった……」と。

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