第440話 ここまで来たのに
一瞬、思考が止まったのはぬいぐるみたちだけではない。
「ミコ様の、死だと……? 何を戯けた事を……ッ」
「……ない話でもなさそうなのが癪だね」
(店主も、そう思ってるの……? だから、あんな冷静に……)
「全部、無駄だったッてのかよ……!」
(あの落ち着かれ様……婆様も、察していたのか?)
レプターも、アドライトも、ピアンも、カリマも、ルドも皆、望子の死=魔王の死と告げられて目が点になっていた。
当然と言えば当然だろう。
やっとの思いで最終決戦の地へ辿り着いたというのに、あろう事か
……寧ろ、そうなっていない者たちの方が。
「「「「……」」」」
リエナ、スピナ、ファタリア、そしてキューを含めた四人の方がおかしいのかもしれないとさえ思える程の衝撃。
『ふざけてんじゃねぇぞクソ魔王!! テメェを殺す為にミコが死ななきゃならねぇだと!? 馬鹿も休み休み言え!!』
『そういう戯言は、もう聞き飽きたよ……!』
当然、誰より先に我に返り、そして誰より先に啖呵を切ったのは他でもないぬいぐるみたちであり、かたや業炎、かたや激流を纏って怒号を放つその姿は、とてもではないが何も知らぬ者から勇者の仲間と認識される風体には見えない。
しかし、そんな事は今どうでもいい。
望子を護り、魔王を殺し、元の世界へ帰還させる。
それだけを至上の目的として、やっとの思いで辿り着いたというのに、あろう事か魔王討伐の絶対条件に〝護るべき存在の死〟が含まれていようなど予測出来る筈がない。
……認められる、筈がない。
少なくとも、ウルとフィンにとっては。
『戯言か……お仲間はそう思うておらんようじゃがな』
『……ッ』
『……!? おいハピ! 何とか言えよ!!』
だが、コアノルの指摘に馬鹿正直に従って振り返った先に居たハピだけは、ウルやフィンとは違う受け取り方をしていたらしく、ウルの叫びに呼応するまで二秒程を欲した後。
『……ローアが、いつも言ってたわよね。
『〜〜ッ!! 敵の言う事なんざ真に受けてんじゃ──』
口癖の様に──とまではいかずとも、ローアが道中で望子や自分たちに言い聞かせるかの如き口ぶりで勇者と魔王の存在意義を同一視するかの様に語っていた事を思うと、あながち冗談とも言えないのではないかと美麗な顔を真っ青にし。
──……その瞬間だった。
『──ね、え"……ッ?」
『!! ウルッ!!』
迫り来る砲丸さえ溶解させる程の熱量を誇る化石の鎧を触手が貫き、ウルの胸から腹にかけて大きな穴を穿ったのは。
『……おおかみ、さん?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます