喫煙所
社内の喫煙所は各階に一部屋ある。
少し仕事が行き詰まり、息抜きにと煙草を吸いに喫煙所に入る。休憩時間じゃないからもあり、がらんとしていた。
煙草を一本出して火を点けようとジッポライターのフロントホイールを回す。だがオイルが切れていたようで火花が散るだけで火が点きそうにない。
少し粘ったがやはり火は点かなかった。
思わずため息が漏れる。咥えた煙草を持て余しながら、自分の持ち場に戻ろうかと煙草をしまおうとすると、隣から声を掛けられた。
「あの」
自分の気づかないところで、いつの間にか一人入ってきていたようだ。
「あの……ライター使いますか?」
女性はライターを差し出す。
「ああ、ありがとうございます」
有難く使わせてもらおうとライターを受け取れば、しまおうとしていた煙草に火を点ける。
煙を吸い込んでゆっくり吐き出す。
彼女にライターを返せば彼女も自分で持ってきた煙草に火を点けて吸い始める。
彼女に面識はない。おそらく別の部署に所属しているんだろう。
「休憩ですか?」
何気なく声をかけてみる。
「少し抜けてきました。息詰まっちゃって仕事も捗らなくて」
仕事が大変なんだろう、少し疲れた様子で言葉を返してきた。
「こっちもですよ。みんなぴりぴりしてて」
「なんかこの時期本当に忙しいですよね」
案外話は盛り上がる。それでも時間を忘れたりしないのは仕事の話をしていたからだろうか。互いに一本吸い切れば灰皿に煙草を捨てて喫煙室を出る。
「では、お互い頑張りましょう」
「そうですね。頑張りましょう」
名前も知らない仕事仲間。
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