第14話*開戦

 千歳は王宮の正門の前に集った転移者達を城のバルコニーから見下ろす。



「みんな。おはよう。昨日は眠れた?。私はね。ぐっすり眠れたよ。まぁ、雑談をしている時間がないから、はっきり言うけど、私はこれからこの国の元々の所有者たちから国を奪うための戦争をしようとしてます」



 千歳の発表に皆驚くことはなく、真剣に言葉を聞く。



「みんなは、もう私のダンジョンの住人だから、死んでもポイントさえあれば生き返るけど、きっと斬られたらいたいし、最悪殺されずに連れ去られるかもしれない。

 私たちが地球にいたころ勉強した歴史の考え方を持った人間達が私たちの敵です。残虐で自己中で、でもそれは人間が持っている本性でもあるし、私達がしようとしていることも自己中で残虐なことかもしれないけど、私達を勝手につれてきて、思い通りになると思った奴らに、この世界に私は抵抗する。

 私達は平和な国からやってきた、こんな血なまぐさい世界で一生を迎えるなんて絶対に嫌だ。だから、ここを、私のダンジョンを、日本のような平和ボケした国にするために、力を貸してほしい。お願いします」



 千歳は皆の前で演説すると頭を下げた。



「俺は、もともと戦うつもりで仲間になったんだ。今さらだぜ」


「そうよ。私も」


「ぼくも」


「俺も」



 正門の前に集まった転移者達が歓声を上げる。



「みんな。異世界に来てたった二日で戦争することになったけど、みんなは神に選ばれた存在だから、この世界で強く生きるためにチートをもらった存在だから、きっと勝てる。平和への第一歩をみんなで掴もう」


「お~!」



 大歓声を転移者達があげると、王宮の正門が開き城壁まで続く長く大きな一本道が現れる。そこには、王都に住まう住人が道の端に集まっており、さらに、帰属化した冒険者たちも装備を整え待っていた。



「あんたが、新しい王様か」



 戦闘に立っている冒険者が千歳の方に声を掛ける。



「話は聞いたぜ。いいじゃねえか、平和ボケした国って夢。俺達は生まれた時からこの腐った国にうんざりしてたんだ。例えあんたが、人類の敵だろうと構いやしねえよ。あんたの夢俺達も乗らせてもらうぜ。なあ、みんなぁ」


「うおおおお!」



 集まった冒険者達が歓声を上げる。



【領域支配を発動しました。レオルタ国国王、テラー・ベルン・レオルタにより抵抗されたため、戦争状態を開始します。

 失敗すればポイントによる蘇生も叶いませんのでご注意ください】


「だいじょうぶよ。私達はずるい存在何だから」






 ベルン城壁の正門の前にはレオルタ王国の王軍が隊列を組んでいた。その後方では冷気を帯びた馬に乗った王と、その横に重厚な鎧と大きな大剣を背負った騎士が会話をしていた。



「王よ。如何にして落としましょうか?」


「まさか、自分の城を落とさねばならない日が来ようとはな。だが案ずるな」


「と、申しますと?」


「ダンジョンマスターから挑戦状が来た。この私に死ねと言ってきよったわ」


「なんと無礼な!」


「こちらから攻めずとも向こうから来るだろう。我々はいつも通り迎え撃てばいいだけのこと」


「相手は帝国の勇者達のような力を持っているのでは?」


「ふん、帝国の勇者達とて初めは雑魚の集まりだったと聞いておる。ダンジョンマスターがいたとて所詮はまだまだガキの集まりだろう。帝国の勇者すら退ける。私の騎士達が入れば問題なかろう?」


「その通りにございます。第一近衛騎士アインツである。この私が必ずやダンジョンマスターの首を取って見せましょう」


「期待しておるぞ」



 王が近衛騎士の発言に機嫌をよくすると、大きな門が開き始める。そして中から冒険者たちの姿が現れる。



「戦争に参加しないなどと言っていたくせに、よりによって王に歯向かうとは」



 近衛騎士が出てきた冒険者たちに怒りを表す。



「この戦いの後、家族もろとも反逆者として全員処刑してくれる」



 そして、冒険者達の後ろから、まるで緊張感のない服装の人間が出てくる。



「あれが、勇者達か我らを完全になめてるな」



 近衛騎士の怒りが頂点に達した時、王の命により戦闘開始の笛が鳴る。



「反逆者どもを殺せええ!」



 近衛騎士がそう言った時だった。空に巨大な竜が現れた。




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