第2話*職業診断

(どこ?。ここ) 



 千歳が意識を取り戻すとそこは宮殿のような大広間だった。



(みんなもいる)



 辺りを見回すと、同級生達や、恐らくあの時飛行機に乗っていた人達もいる。

 

 ほぼ同じタイミングで意識を取り戻したのか、まだみんな状況を飲み込めていないように見えた。


 

(そうか転移?したんだっけ。あれ?)



 だが、段々と意識が覚醒していくと周りに千歳たちとは違う人がたっているのに気付いた。何やら、中世の写真で見たことのあるような鎧を着ている人たちが千歳たちを囲んでいた。



(どういうこと?)



 自分たちが訳もわからない人間に囲まれているのに気付いたからか、ざわつき始める。そして、そんな状況で突如大広間に声が響き渡る。



「お待ちしておりました。異界の勇者様御一行」



 その声に全員の視線が同じ方向を向く。そこには豪華なドレスを見にまとった千歳より少し年上のように見える美しい女性が立っていた。



「ここは、レオルタ王国。そして私は第一王女のエリザート・ベルン・レオルタと申します。

 恐らく、この世界に招かれた際に我らの地母神にお会いされたかと思われますが?」


(地母神?。誰のこと?。あの神様のこと?)



 千歳が困惑していると、一人の男性が答えた。男性はスーツを来ていて、エリートサラリーマンのように見える。



「ああ、確かに地母神と名乗る女性の神にはあった。

 だが、そのとき言われたのは自由に生きろと言われたぞ。

 勇者とはどう言うことだ?」


(女性?。じゃあ違うんだ)


「ええ、神はいつも召喚時にはそう言うと聞いております。

 ですが、どうかこの国を救う手助けをしていただきたい」


「…‥どう言うことだ?」



 エリートサラリーマンは少し考えたような素振りをしたあと質問をした。



「この国は現在他国による侵略を受けておりまして、滅亡寸前といった状況なのです。

 此度の召喚もこの状況を救ってくださることを願ってのこと。

 しかし、皆様の自由も尊重させていただきます」


「つまり?」


「つまり、共に戦わず、お好きなように生きて下っても構いません。

 ただし、どうかこの国に牙を向けるようなことはしないでいただきたいのです」


(非常に良心的な案ね)



 千歳は王女の話を聞いてそう思ったが、後ろでCランクの男子がなにやらこそこそ話していた。



「これはダメなパターンではないだろうか?」


「確かにその可能性は高そうでごさるな」


(ござる?)



 千歳はまさか自分の学校に忍者がいるとは思わなかった。



(ダメなパターンってどう言うことなんだろう?)



 千歳が疑問に思っていると、どうやら王女とエリートサラリーマンの会話が一区切りついたようだった。



「ですので、この国のために戦ってくださるのでしたら生活は保証させていただきます。

 それと、この世界に参られた方々全員の職業を今から持ってくる水晶で調べたいと思います。

 この世界は職業が絶対といっていい世界でして、例えば魔法系の職業でしたら、魔法の才はありますが、剣術の才能は皆無です」


(生まれながらに職業が決まってるなんて嫌な世界ね)



 日本人である千歳からしたら当然の感情であった。

 そして、王女にエリートサラリーマン以外に同じ高校の女子が質問をした。



「あのー。友達がいないんですけど」


「恐らくそれは、召喚されなかったというとなのでしょう」


「そんな!」



 女子生徒は王女の返答に驚き哀しんでいる。



(きっとあのとき死ぬことを選んだのね。もしかしたら、死ななかっただけかもしれないし)



 どうやら周囲の反応からして何人かはこの場にいないようであった。



「それでは水晶で職業をお確かめください」



 王女がそう言うと水晶が運ばれて来た。そして、エリートサラリーマンが率先して手をかざすすると、水晶が輝き光が収まると一枚の紙が浮いていた。


 エリートサラリーマンはそれを手に取った。そして、王女が質問する。



「何という職業でしたか?」


「賢者と書いてあるが?」


「なんと、賢者はおよそ一万人に一人と言われる上級職業です」



 エリートサラリーマンの職業にこの世界の人たちは驚きの声をあげた。


 そのあとも次々と職業を調べるが尽く皆が上級職業であった。


 そんな和気あいあいとした雰囲気の中で王女は王宮筆頭魔導師と話していた。



「かつて、これほどまでに大規模に召喚されたことは他国の記録にもございせん、王女様」


「ええ、我らは非常に運が良い。これならば土地を取り戻すだけでなく…‥ふふふ」



 そしてそんな中ついに職業勇者が現れる。それは先日千歳が振ったサッカー部のキャプテンだった。



「おお、あなたが勇者様でしたか。どうかこの国のためにお力添えを」


「もちろんです。頑張ります」



 勇者となったサッカー部のキャプテンは快く承諾した。


 その後も次々と職業を確認していき遂に千歳の番なった。

 すると千歳は同級生達の視線が千歳に集まるのを感じた。



「やっぱり、千歳なら勇者とか竜魔導騎士見たいな最上級職業なんじゃない?」


「そうに決まってるわよ。学校のマドンナの千歳よ」



 こそこそと何やら噂されてるなと思いながら手をかざした。



「反応しない?」



 今までは必ず白く光っていた水晶が反応しなかった。

 壊れたのかと思い水晶に触れると水晶が赤く光だし、警告音のような音が鳴り響く。



「なにこれ?」



 そして、紙が出てくるのではなく、ARのように空中にとても大きく皆が見えるように職業が書かれていた。


 千歳はその文字の意味がわからなかった。



「ダンジョンマスター?」

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