最強国家ミレニアム
周(あまね)克(まり)
第1話*神様は男の子
「ねえねえ、千歳。聞いたわよ。一組の蓮君に告られたんでしょ」
「え、うそぉ。サッカー部のキャプテンじゃん」
「どうなの?。付き合ってるの?」
「別に興味ないのよ。恋愛とか」
周りの女子たちからの質問に淡々と千歳は答えた。
「えー。てことは、また振ったんだ」
「これで何人目?。振ったの」
「とりあえず、これでスポーツ部のキャプテンとエースは全滅ね」
そんな盛り上がる中、千歳はつまらなそうにため息をつく。
今、千歳たちがいるのは飛行機の中で、これから修学旅行で東京から沖縄に向かう途中である。そして、飛行機が東京を飛びだってから1時間ほど経ったころ、飛行機が強く揺れる。
「きゃあ!」
女子たちの悲鳴が飛行機の中を駆け巡る。
「なあ、この飛行機墜落ちたりしないよな」
一人の男子が不安を煽る。しかし、その不安通り天井から酸素補給のキットが落ちてくる。
(うそ、本当に死んじゃうのかな)
千歳は心の中で不安を吐露する。そして、視界が白い光に包まれる。
そして、千歳は真っ暗な場所で目を覚ます。
「ここは、そっか。死んじゃったんだ」
「死んでないよ」
「えっ」
突然、聞いたことのない子供の声が聞こえた。
「初めまして。今泉千歳さん」
声のした方を見ると、そこには男の子がたっていた。
「突然のことで混乱しているかもしれないけど、君は死んでないよ」
「ぼく、大丈夫かい?。さっきは怖かったよね」
千歳は男の子の頭を撫でる。
「えっ!?」
男の子は突然の事態に逆に混乱する。
「大丈夫だよ。きっとこれから天国にぼくはいけるから」
そう言って、あやす千歳の手を男の子は振り払った。
「どうしたの?。照れちゃった?」
千歳は優しい口調で話しかける。
「君で最後だけど、初めての反応だ。もう一度言うけど僕は神様だ。君が生まれるずっと前から生きている」
「そうなの?。それはすごいね」
千歳は全くと言っていいほど信じていなかった。
「くそ。信じてないな。これならどうだ」
男の子の姿の神様は指を鳴らすと、二十歳くらいの男性へと成長した姿に変わる。
「どうだ?。これで信じただろう?」
「ちっ。」
千歳は大人へと変わった男の子を見ると、先ほどとは打って変わった冷徹な目を向ける。
「えっ!。ぼく何かしたかい?。どちらかといえば助けたんだけど」
「そう。ありがとう」
千歳から全く感謝している様子を感じることはできなかった。
「う、うん。まあいいや。君はなんと!。これから異世界に転移します」
「それで」
青年の神様がこれはめでたそうに話すが、千歳には微塵の興味も感じない。
「あっ。ごほん。異世界ってわかる?」
「違う世界でしょ」
神様は千歳のあまりの態度の変化と無関心さに不安を覚えていく。
「そう。あってるけど。異世界転移ってどういうことか分かってる?。」
「異世界に行くこと」
「やっ、まぁ、そうなんだけど...さ。ね。普通こういう時ってテンションが上がるか混乱するかのどっちかだと思うんだよ」
今までの転移者とはまるで違う反応に困惑しっぱなしの神様であった。
「そうなの」
「そうなの。でも君。すごく冷静だね」
「興味ないもん」
「だと思った。まあ、君冷静だから。最低限の事だけ言ってから、最後に質問するね」
「そうして」
千歳は淡々と一言だけ返事を返す。神様の顔が若干ひきつる。
「......。君は飛行機事故で死ぬ運命にありました。ですが、地球のある世界とは違う世界からの干渉を受けてその世界に行けることになったので、死なずにそのままその世界に行くことを許可します。
なので、最後に質問です。このまま地球で死にますか?それとも別世界に行きますか?」
「死にたくない」
「......。はい。それじゃあ、異世界でも頑張ってね。バイバイ」
神様はそう言うとそそくさと姿を消す。
「はあ、もう一度あの姿になってくれれば良かったのに」
千歳は愚痴を言ったのを最後に意識を失う。
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