明るい病人計画♪

@satoyomi

第1話

 「ピヨピヨ、ピヨピヨ」

 鳥の声で目が覚めた。まだ私の意識は向こう側にいる。薄ぼんやりしている私の目の前で「ピヨピヨ」は泣き続ける。

 (スマホの目覚ましじゃないの)

 私は枕元に置いたスマートフォンに手を伸ばして「ピヨピヨ」鳴いているアラームを消した。スマートフォンの画面に浮き上がった時刻は、午前5時半。私が起きる時間だ。まだ辺りは暗い。私は病気で動作が遅いので、健康な人より時間に余裕を持って支度をしなければならない。だから、朝はいつも早起きだ。簡単な朝食を作ることさえ、ままならないから。

 まだ寝ている子どもを起こさないように、そうっと起きて身支度をし、階下にあるキッチンへ向かう。階段の手すりにつかまり、踏み外さないように一段ずつゆっくりと。

 私は、足が効かない。もともとは手が効かなくなったところから、私の持病は出てきた。

 膠原病。おそらく聞いたことのある人が多いと思われる病気。それが私の持病だ。治ることはない。私の命がついえるその時まで、一生付き合うことになったその病気。判明したばかりの時に、半ばパニックになりながら病気のことを調べてみた。なんだか複雑な難しい病気に思えたし、患者はいつまで生きられるのか気がかりだった。罹患率は人口の10%。つまり、1000人に1人の確率で発症する。症状は沢山あり、患者によって違うとまで言われている。

 朝食を作り、自分の化粧やら何やら外出する支度を整え、軽く部屋を掃除している頃に子どもが起きて来る。その頃には太陽も出て、辺りが明るくなっている。

 「おはよう」

 紗月が起きてきた。まだ眠いらしく、目をこすっている。時計は朝七時を回っている。ピンク色の地色に薄いグレーのチェックが入った長袖のパジャマは、袖や身頃の裾がクシュクシュとまくれている。肩についた髪がところどころピンと外側にはねていて、寝相の悪さを物語っている。お気に入りの白い犬のぬいぐるみを抱えている様子は、まだ小学生らしくて微笑ましい。可愛い、と思うと体の痛みや不自由さなんて、どこかに吹き飛んでしまう。

 「おはよう」

 わたしも挨拶を返す。

 新しい一日が始まる。

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