海陽より。僕もまた。
文長こすと
(1)知らないさ。どうせ何も。
高速バスの車窓のカーテンを開けたそこには、全部が全部、
海岸沿いの国道からガードレール、歩道、そしてどぶ鼠色のごつごつした堤防の盛り上がりを超えた先に、浜辺とテトラポットがほんの少し覗いて、あとはずーっと海が続く。
海の果ての水平線から上は、その青さがほんの少し薄まって、青空と白雲の領域がそこから始まっていく。
7月20日14時の夏晴れ。どこまでも、どこまでも、そうなっている。
僕の父の故郷であり、祖父母の故郷ではあった。
――なのに、何が“
――「お前は何も知らない」
いつか誰かに叱責されたそんな言葉が、ふと脳裏に甦ることが最近増えた。
ああそうだよ、と僕は開き直ってため息をつく。
どうせ僕は何にも知らない。例えば、この町のことも。
高校2年生の夏を迎えて、これからどうするべきなのかも。
高速バスは、人間よりもむしろ冷房で冷え過ぎた空気をたんまりと運びながら、あと5分ほどで目的地に到着する。
◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます