【4万PV】下着をください
赤里キツネ
第1話 ぷろろーぐ
「ねえ・・・田中君・・・キミが大変なのは分かっているわ・・・私に何かできない・・・かな?」
委員長──
クラスでも人気の女子・・・今回の召喚でも、聖女の職業を得ている。
彼女なら・・・この窮状を・・・救ってくれる・・・
「委員長・・・御願いがある・・・」
「うん・・・?」
濃い黒の長髪に・・・大きな目。
委員長ではあるが、メガネはしていない。
俺の発言に、耳を傾け・・・小首を傾げる。
「委員長・・・身につけている下着を・・・欲しい」
パンッ
俺の頬を思いっきり叩くと、
「・・・最低!」
そう告げると、背を向け・・・まずい・・・何とか・・・何とか・・・
「ま・・・待って欲しい、委員長!」
こうなれば・・・勢いだ。
「頼む・・・分かるだろ・・・?俺だって男子なんだ・・・異世界に来て・・・こっちでは、その・・・処理できない・・・俺はみんなと違って、特異能力にも恵まれなかったし・・・だから・・・」
うっわ。
氷点下だ。
「
「・・・最低・・・ね」
ですよね。
「頼む・・・もう資金も底をついた・・・薬草採取とかで食いつないでいるけど・・・限界がある・・・だから・・・頼む・・・分かるだろ・・・?お前達、恵まれたクラスメートとは・・・違うんだよ」
「・・・部屋に戻れば、替えの下着があるわ。それをあげます」
「それでは困る・・・洗濯した物だったら意味が無いんだ」
「・・・変態」
人間って、ここまで人を
「着替えてくるわ。今つけているのをあげるから・・・問題は起こさないと約束してくれる?」
「ああ、勿論だよ」
俺だって、問題を起こす気など無い。
凄まじい怒気を纏わせ・・・
良かった。
これで・・・なんとか、首の皮が繋がった。
--
クラスごと異世界召喚。
ソレ系の小説はちょくちょく読んでいたが・・・
まさか、自分の身に降りかかるとは思っていなかった。
クラスメート全員が、強力な職業を手にする中・・・
俺に発現した職業は、無職。
一般職に就く事すら許されない、最低な職業。
勿論、ステータスも異世界の一般人以下。
つまり無能者。
無能者だからといって、殺される程酷くはなかった。
でも、支援もしてもらえない。
クラスメート達がカンパしあって、俺に援助してくれる案も出たのだが・・・俺が断った。
冒険者になって、まずは自活してみるよ、と。
冒険者の仕事には、ドブさらいや、薬草採取といったものがある。
そういった仕事なら、上手くやれば無能者でも何とかなる。
強い力を得たクラスメート達が、国の為に特訓をする間・・・
俺は、自由を手に入れたのだ。
そして・・・
支度金で借りた宿屋の一室。
俺は・・・
同じく支度金で買った大量の下着をベッドの上に置くと。
「ガチャ」
スキルを発現。
一つ、黙っていたことがある。
俺には・・・一つだけ、ユニークスキルがあった。
ガチャ。
クレジットを貯めて、回せるらしい。
何が出るかは知らない。
役に立つ能力だったら、自由を奪われる可能性がある。
だから・・・まだ試していないのだ。
一応、表示したステータスのガチャのスキルに意識を集中させると・・・使い方が分かる。
それによると・・・
1.クレジットは、下着を入れる事で、貯まる。
洗濯してあれば0pt。
2.同じ人物の下着を何度も入れると、
得られるポイントは低下する。
3.ある程度交流のある人物の場合、
初回のポイントが2倍からスタートとなる。
4.異なる部位に対する下着は、別種類の扱いとなる。
うん、びっくりするくらい、意味の分からない条件だよね。
レア魔物を倒すとポイントが得られるとか、
レベルが一定ポイントに達する度にポイントが得られるとか・・・
普通そういうのじゃね?
ある意味、能力を正直に言えばまだ動きやすい気がするが・・・
王様とか王女様とか、良い人っぽいとは言え、完全に信用するのは危険だ。
まだ隠しておいた方が良い。
早速下着を脱ぐと、新しい下着を身につけ・・・
投入。
ガチャマシーンの上部が開くようになっていて、そこに入れるようだ。
クレジット:0pt→10pt
これ、0からのスタートってのが厳しすぎる。
尚、単発だと10pt、11連で100ptだ。
再び下着を脱ぎ、新しい下着をつけ・・・
いくら自室とは言え、裸のままでいるのは抵抗がある。
さて・・・どこまで低下するのか・・・
クレジット:10pt→15pt
まさかの半減。
結局、5ptの次は2pt、1pt、0pt、0pt・・・合計18pt。
・・・
--
さてと・・・
店員さんに変な目で見られたが・・・
買ってきたのは、最小サイズのブラジャー。
さて・・・いける・・・か・・・?
クレジット:18pt→28pt
というわけで、無事36ptをゲットした。
これは・・・11連とか言ってられない。
早速回そう。
スキル:
鑑定→収束されました
スキル:
隠蔽→新しい能力が発現しました
タロット:
フライングソード Lv.1 10/10
さっそく、自分に鑑定を使用する。
***************************************
名前:
レベル:
1
職業:
無職
ステータス:
STR 3
DEX 2
AGI 1
VIT 1
MAG 2
MEN 2
スキル:
ガチャ(6pt)
鑑定 Lv.2
偽装 Lv.1
タロット:
フライングソード Lv.1 10/10
***************************************
しょぼい・・・
ちなみに、クラスメート達は、成長率アップに成長速度アップに・・・色々ついていたらしい。
というか、異世界転移者で、成長率アップと成長速度アップがない人は、稀らしい。
さて・・・まだ日が高い。
冒険者ギルドに行ってみますか。
--
冒険者ギルドでは、城から連絡が回っていたらしい。
あっさり申請できた。
異世界人でドブさらいというのは前例が無いらしく、苦笑いされたけど。
やっぱり薬草採取にすべきだっただろうか?
ドブさらいは、道路の脇にある溝の掃除・・・下水道の掃除と違い、魔物に襲われる心配もない。
特に危険もなく、夕方までせいをだし、幾ばくかの報酬を受け取った。
うん。
・・・超しょぼい。
宿代にもならない。
明日は・・・薬草採取を受けるか。
--
翌日、薬草採取へと出かける。
適当に鑑定をかけ、指定された薬草を採取・・・まあ、楽だ。
ぐるる・・・
前言撤回。
超危険だ。
森の情報は、事前情報は得ていた。
だが・・・
フォレストウルフが出る、と聞いていたが・・・
でかすぎる。
高さ5メートルくらいあるんじゃね?
鑑定を行使するが・・・鑑定できません、って出るだけ。
使えねえ・・・
「おぬし・・・我を調べようなど・・・死ぬ覚悟はできていような?」
ほらあ。
魔物喋るじゃん。
何が強い魔物いない安全な森だよ。
この世界の人にとっては安全でも、日本人の俺には魔境。
つらい・・・
先手必勝・・・!
「フライングソード!」
タロットを発動。
ザンッ
微動だにしない狼・・・すら満足に倒せず、右足を吹き飛ばしただけで終わる。
やばい、死んだ。
俺は、ばくばくなる心臓の鼓動を抑え、
「今のはわざと外した。次は・・・その首、貰い受けるぞ」
「ぐ・・・があああ・・・?!」
バランスを崩す狼。
「立ち去れ。そうすれば見逃してやる。向かってくるなら・・・その命、ここで散らす事になるぞ?」
「ぬおおおおおお!我を愚弄するかあああ!」
やべ、はったり超効かねえ。
「フライングソード!フライングソード!」
ひたすら連打。
うわ、全然思った方向にいかねえ。
やがて・・・全弾撃ちつくし、何とか倒せた。
いや・・・動いている。
逃げよう。
足早に、その場を立ち去る事にした。
--
***************************************
名前:
レベル:
31
職業:
無職
ステータス:
STR 34
DEX 33
AGI 32
VIT 32
MAG 33
MEN 33
スキル:
ガチャ(6pt)
鑑定 Lv.2
偽装 Lv.1
チャージ Lv1 1/1
タロット:
フライングソード Lv.1 0/10
***************************************
うっわ、レベルが超上がってる。
成長率増加は無いが・・・恐らく、能力差に応じて成長速度が変わる世界なのだろう。
俺にとっては、修羅の国。
通常なら簡単に倒せるフォレストウルフでも、レベルが上がりまくったのだ。
で。
頼みの綱の、フライングソードが残数0。
きつい。
スキルが増えている。
チャージ?
ふむ・・・使用回数のあるスキルの使用回数を回復させる、か。
タロットもいけるのか?
フライングソード Lv.1 0/10 → 1/10
いけた。
チャージは、1日に1回、回復するらしい。
10日あればフライングソードも回復して・・・
うん、間に合わないよね。
とにかく・・・明日になれば2回まで回復できて・・・
あとは、とにかく敵に会わないように立ち回るしか・・・
--
意外となんとかなった。
フォレストウルフはやばかったが、芋虫みたいな敵や、うさぎみたいな敵は、0.5~1mくらいの背丈。
動きも視認できる程度なので、普通に倒せた。
鑑定で見つけた珍しい薬草を持って行ったら、ぷち騒ぎになったので、冒険者ギルドで売る事ができなくなった。
金貨10枚も貰えたのだけど。
偶然見つけたって言い張るのも限界があるよね。
少しずつ、この世界の事が分かってきた。
まず、鑑定スキルは、意外と知られていないようだ。
異世界転移者の基本スキルなのだが・・・一般には浸透していない。
こういったスキルは、所持を隠すのが基本。
ばれたら、報酬を下げられる可能性があるからだ。
利用しようという輩が来ても困るし。
見つけた珍しい薬草や、高価な素材は、素性を隠して引き取ってくれる怪しい店に卸している。
すっかり常連になってしまった。
問題は。
・・・他人の下着とか、どうやって手に入れれば良いんだ?
お金はあるから、他人から買い取る事はできるだろうが・・・何に使うのかと思われて・・・スキルの事がばれたらやばい。
下着を使うスキル・・・ガチャの存在が知られていれば・・・一発アウトだろう。
同じく日本から来たクラスメートなら・・・俺が特殊性癖を持っている、と告げれば、意外と誤魔化せるんじゃないだろうか?
一応、俺にも友人はいる。
だが・・・同性の下着をそういう事に使う・・・と思われるのはちょっと・・・
まだ、女子に頼んだ方がましだ。
ちなみに、言うまでも無く、女子の友達も彼女もいない。
俺は・・・仄暗い決意を固め、城を訪問する事にした。
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