ガンダムの影響と「呪縛」

時化滝 鞘

第1話

「機動戦士ガンダム」。

どんなにアニメに疎くても、一度は耳にしたことがあるであろう、ロボットアニメ作品だ。

このアニメの、何が画期的であったかは、他に詳しく書いているサイトなどもあるため、あえて詳細は書かない。


日本のロボットアニメ史を振り返ると、いくつかの「ターニングポイント」が見えてくる。

最初はやはり、「マンガの神様」手塚治虫の「鉄腕アトム」だろう。この作品で、「ロボットとは何か」ということを知った少年たちは多く、今もなお、影響を受けて機械技術職を目指す人も少なくない。

その後、「人が操作するロボット」として、「鉄人28号」や「ジャイアントロボ」等が生み出されていき、「マジンガーZ」、「ゲッターロボ」等で、「人が乗り込むロボット」が誕生した。


「マジンガーZ」は第2のターニングポイントだと言える。

「スーパーロボット」という言語を生み出し、装甲に使われた「超合金」という言葉も、子供たちを引きつけた。おもちゃの「超合金シリーズ」はロボットホビーの典型となり、ロボットアニメが作られる度に、「超合金○○」が作られた。

しかし、そんなスーパーロボットも、「強い敵が現れる、スーパーロボットがやって来て、その敵を倒す」という定型句からマンネリ化してきた。


そんな中での、第3のターニングポイントが、「ガンダム」だった。これまでの典型から外れた様々な要素が、主に中高生の支持を集めた。初公開時の視聴率が振るわず、おもちゃの売り上げも伸びないことから、打ち切りを食らった作品だったが、その後展開された「ガンプラ」は大ヒットとなり、下っ端から上役まで、ほぼ24時間態勢で工場をフル稼働させて、なんとか需要を満たしたという。

アニメも再放送時には順調であり、劇場公開や続編にまでこぎ着けた。


それ以降、「スーパーロボット」に対峙する言葉で「リアルロボット」というジャンルが生み出される。リアルロボット作品はブームとなり、玉石混交の様々な「新しい」ロボットアニメが作られてくることになる。


第4のターニングポイントは、「新世紀エヴァンゲリオン」だろう。

謎に満ちた、複雑なストーリーや、生物と一体化したような兵器たち。あらゆるものが刺激的であり、ロボットアニメに新たなインパクトを起こすことになる。


しかし、こうやって築かれてきた日本のロボットアニメにおいても、「ガンダム」を超えるほど、ロングセラーヒットになった作品はない。

ガンダムは続編を繰り出すたびに成功し、新しいガンプラが発売されれば、飛ぶように売れていく。他のメディアやゲームなどに進出して風呂敷を広げても、ほとんど受け入れられてしまう。


ガンダムは言わば、「金の卵を産むダチョウ」だろう。

すでに誕生してから40年経ち、当時のアニメを見ていた少年たちが、様々な企業で、企画などを決める要職に就いている。

そんな環境で、「ネクストガンダムを作りたい」という意見が出ることは、何の不思議もない。


そこで、だ。バンダイサンライズは、「ガンダム」を切り離せるだろうか。

それは無理というものだろう。制作会社も、ボランティアでアニメを作っているわけではない。

会社である以上、利益を出し、従業員に給料を与えて、会社全体の屋台骨を支えなくてはならない。


これこそが、ガンダムの「呪縛」の正体だ。

断っておくが、バンダイもサンライズも冨野監督も、「ガンダムブーム」にあぐらをかいていたわけではない。

「伝説巨神イデオン」「戦闘メカザブングル」「重戦記エルガイム」「聖戦士ダンバイン」etc…実に多くのロボット作品が生まれてきた。ガンダムに代わるニューフラッグシップとして、「機甲戦記ドラグナー」も企画、放送されたが、結局「ガンダムにはどんなロボットアニメも通用しない」という空気をたまに感じる。


消費者も生産者も、「ネクストガンダム欲しいよね」という現状では、ガンダムシリーズを作っていくしかないのだ。

この輪廻は、そう簡単に崩れるものではない。冨野監督がノイローゼにかかるのも、納得できるというものだ。


では、ガンダムを切るとしたら、どうするべきか。僕は3つのパターンを考えてみた。

1、今度こそネクストフラッグシップを作り、ガンダムの展開を徐々に減らして、自然消滅させる。(理想的だが難しい

2、ファンたちの熱が冷めるのを待つ。(あまりよろしくない

3、問答無用で「ガンダムはクビ」宣言する(やってはいけない


ガンダムに対するニューフラッグシップができたとして、すぐにガンダムを切ったりはできないだろう。

最低でも10年。ガンダム並みかそれ以上のヒット作を制作しなければ、フラッグシップも立ち消えるだろう。


そうでなくても、僕の推察だが、ガンダムはもう新しいコンテンツを作らなくても、10年以上は保てるかな、と思う。

根拠は、グッズ。ことにガンプラだ。

ガンダムに登場するモビルスーツ(MS)の中には、未だキット化されていない機体も多々あるし、あってもいわゆる「旧キット」でしかなく、新しくリテイクできる機体もごまんとある。これらをver.2、ver.3…と続けるだけで、古参のファンたちはある程度食いついてくるだろう。


今回はあえて「呪縛」という悪いイメージの言葉を使ったが、要するに、ガンダムに代わるネクストフラッグシップを作るのは難しく、我々は一生、この呪縛に取りつかれるだろう、と言うことだ。


そして、この呪縛に取りつかれることも、決して悪いことではない。

縛られるほど夢中になれるものがあるということなのだから。

僕もこの呪縛に縛られ続けよう。

なんってったって、ガンダムが大好きだから、ね。

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