25 初霜

 明け方、ぐんと冷え込んだと思ったら、今日は各地で初霜が観測されたらしい。

 食堂で朝の天気予報を何とはなしに見ていたら、朝の掃除を終えたふみさんがニコニコ顔で現れた。

「今日はキンと冷えて、空気が澄んでいますね。お庭にも霜が降りていますよ」

「ほんと! 霜柱は?」

「まだです。もう少し冷え込まないと」

「早く霜柱出来ないかなー! 踏んで遊ぶのに」

「待て待て。折角文さんが整えている庭を踏み荒らすな」

「えー? だって霜柱は踏んだ感触を楽しむものでしょー?」

 あたる先生と手鞠ちゃんの賑やかなやりとりを横目に、朝食を掻き込む。寒いからといって、授業は待ってくれない。

「侑斗さん、今日はいっそう冷え込むようですから、これを。ようやく編み上がったのですが、ちょうど良かったですね」

 そういって差し出してくれた手袋とマフラーは、なんと文さんのお手製だ。色や柄も希望を聞いてくれて、サイズもぴったり。何という心遣いだろうか。

「ありがとうございます! 本当に助かります!」

 これさえあれば、霜だろうが雪だろうが氷柱だろうがドンと来い、だ。

「浮かれてるな、青少年。この調子じゃ街中もあちこち凍り付いてるぞ、足下に気をつけてな」

 ぐさりと釘を刺してくる中先生に、気をつけます、と頭を掻いて。

「行ってきます!」

 初霜の朝も、初雪の夜も。

 この松和荘は、いつだって暖かい。

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