七日目
百余りの革命者たちが、森へと向かっていた。
屋敷は森を抜けた先の小高い丘にある。その尖塔の上に、すないぱーらいふるの使い手がいるはずだ。なるべく塔の死角となるところを俺たちは進んだ。ここからは五つの部隊に分かれての行動だ。まず正面から突撃するのが、アルベルト率いる第一部隊。セグレタや兵士を釣ったところで、次はローガン率いる第二部隊だ。火矢や火炎瓶でセグレタの動きを封じた後、ダニエラ率いる第三部隊が合流。第一部隊と協力して兵士とセグレタを打ち倒しているうちに、俺はひとりで侵入。その間怪我をした場合は、森へ逃げること。第五部隊である医療班が森に待機しており、ディエさんやシエラ、テオが待っているはずである。無理せず、怪我をしたらすぐ戻るように、とのことだ。
「本当にひとりで大丈夫なのか?」
ダニエラと同じく第三部隊に所属するレティーシアは言う。
「なんなら、私もそっちに行くけど」
そう言いながら、彼女は右手の槌を左手の手のひらに跳ねさせた。レティーシアの武器は、なじみのある商売道具、鍛冶屋の槌だった。第五部隊として治療に専念するより、死に瀕しながらも尽くしたい。なんて美しい感情でそうしたわけではないだろうが、彼女は第三部隊に所属している。
槌は彼女用で、片手で握れる程度の小ぶりなものであったが、その重量と鉄を打つような振りは、たしかに一振りで相手を気絶、あるいは死に至らしめるに違いない。心強い味方となることだろう。
だが、と俺は首を振った。
「そんなもん振り回してたら、即バレだろうがよ」
この革命では隠密が求められる。それができるのは、この街にはただひとり、俺だけである。槌なんて出る音が大きすぎる。それに、交わされたら終わりの武器なんて、心許ないに決まっている。
「たしかにそうだな。じゃあ、期待してるぜ、英雄サン」
片目を瞑ったレティーシアは持ち場へ着いた。
屋敷は目前だ。いよいよ、計画していた革命が始まるのである。
俺の主戦力となるのは剣。補助として活躍してくれるのは弓と、投げナイフもいくらかだ。どれも、現役時代に愛用していた武器だ。
――生きて、帰ってくるのよ。
久しぶりの隠密。もううまくはできないかもしれない。
だけど、シエラのぬくもりが宿ったこの剣では、うまくできるような気がしたのだ。
俺は黒装束のフードを被り、マスクを鼻先に引き上げた。
「アルベルト隊長に続けーっ!」
男の合図を皮切りに、第一部隊が突入していった。
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