詩
相沢唯愛
犬
犬
春を喰らう犬がいた。
轟々と哭きながら、春を喰らう犬がいた。
春を呑み込み、口からサラサラと夢を零す犬がいた。
星と月の無い夜と同じ色した犬がいた。
夏を喰らう犬がいた。
呵呵と笑いながら、夏を喰らう犬がいた。
夏を呑み込み、口からドクドクと鮮血を零す犬がいた。
アスファルトを灼く太陽と同じ色した犬がいた。
秋を喰らう犬がいた。
ゴホゴホと咳き込みながら、秋を喰らう犬がいた。
秋を呑み込み、口からゼイゼイと命を零す犬がいた。
朝靄を蹴散らす凩と同じ色した犬がいた。
冬を喰らう犬がいた。
何の音も立てないままる、冬を喰らう犬がいた。
冬を呑み込み、口からボロボロと吐息を零す犬がいた。
凍てつく空に張り付いた雲と同じ色した犬がいた。
私を喰らう犬がいた。
ドクドクと脈打つ心臓を持った、私を喰らう犬がいた。
私を呑み込み、その両の目から涙を流す犬がいた。
私と同じ色した犬がいた。
春を喰らう犬がいた。
夏を喰らう犬がいた。
秋を喰らう犬がいた。
冬を喰らう犬がいた。
私を喰らう犬がいた。
私の心に犬がいた。
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