妹のいないシスコン兄と兄のいないブラコン妹

諏訪野ヒロ

第1話

 僕は昔、すごく仲のいい女子友達がいた。いつ頃だったかな、幼稚園の頃かな。その子は今どこにいるかは分からない。小学校入学前に県外へ引っ越してしまったからだ。


「『拝啓、神様、実妹でも義妹でもいいので、僕に妹をください』なーんて考えてんのか、この妹のいないシスコンさんよ、朝からぼーっとして」

「は?いやそんないつでもそんな事考えてるほど末期じゃねーよ。たしかにそんな事考えた事ないと言えば嘘になるけど。というか、『妹のいないシスコン』って何だよ!?」

「え?知らないのか?お前のあだ名だよ。確かに俺も長いなーとも思うがまぁいいだろう、間違っちゃいねーし」

「えぇ······」

「だってお前 " 妹 " と付くもの全般的に好きじゃん。大好きの域を超えてるかもしれんが。いや、超えてるな!」

え、そんなに!?

「自覚なかったのか·····まぁいいや、映画館へ急ごうぜ。時計見ろ、上映まであと15分だ」

「うわっ、やべっ」



 何でもない高校入学前の春休みの1日が、まさか神様が本当に願い事を叶えてくれたかのような1日になるとはこの時は夢にも思わなかった。



 今日見る予定の映画は、好きなアニメの本編の前日談にあたる内容の映画だ。既にこの映画を見たネットの友達たちは、「泣けた」や「感動した」とか「神作かよ」と言ってて、かなり期待している。さてさて、どんな話なのだろうか。


━━━━約2時間後━━━━


「な、なんだよこの神映画は」

「それな、最高すぎるだろ」

 映画は予想を遥かに上回る良さで、金欠な僕でも円盤を買いたくなった。いや、よし、金を貯めよう。この映画の円盤は買いだ。


「ん?」

「お?どうした?」

「誰かに服を引っ張られたような気がしてさ」

と、後ろを見てみると·····

「うわっ」

 小学校に入るか入らないかくらいの小さな女の子がそこにいた。

「ど、どうしたの?」

「あっ、あの、えっと、お姉ちゃんどこかで見ませんでした······か······?」

「ごめんね、見てないね。うーん、結斗、迷子センターにでも連れて行くか?」

「まだ近くにいるかもしれないし、少し探してみよう」

「そうか?わかった」

「えっと、君の名前を教えてくれるかな?」

「さ、沙侑です······」

「沙侑ちゃんね、よろしく。僕は結斗で、こっちが友達の健ね」

「結斗お兄ちゃんと健お兄ちゃん·····?」

「ぐはっ」

「えっ!?」

「あ、この妹のいないシスコn·····おっと、結斗お兄ちゃんは大丈夫だよ。死にそうになってるのはいつものことだから。あ、そうそう、お姉ちゃんの名前は?」

「沙弥お姉ちゃんです。お姉ちゃんは中学生で···す···」

 中学生のお姉ちゃんね、なら同じくらいか、少し低めくらいの身長の子ってことだね。


「あれ、沙侑じゃん、どうしたの?また迷子かー?」

 誰だろう。同い年か少し上くらいの人が来た。

「あ!日和お姉ちゃん!」

 知り合いかな?

「おー、こんな所に1人でって、また沙弥とはぐれたなー?」

「えーっと······?」

「あ、沙弥を探すのを手伝ってくれたのかな?沙弥も友達で連絡先も知ってるから、私が連絡しておくよ、ありがとね」

「おーい日和ー?あれっ、いない」

「おっと、綾乃を待たせてるし行こっか」

「うん!」

「ありがとう、結斗お兄ちゃん、健お兄ちゃん」

「いえいえ、気をつけてな。ってまた死にそうになるなよ」



「やっぱ、『妹のいないシスコン』ってあだ名はぴったりだったな」

「はぁ、もういいよ、何でも」

「いや、今回の場合ロリコンか····?」

「何でもいいと言ったがそれはやめろ。最低でも中学生以上だ」

「はいはい」

 なーんてなんでもないような話をしながら家に帰っていた。


「あのっ、人違いなら申し訳ないのですが、もしかして、結斗お兄ちゃんですか?」

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