侵略者の夏休み

青白い魚

第1話

 暑い夏の日だった。中山俊介なかやましゅんすけ 歳は17の高校生

現在夏休み中である。趣味である水生生物捕獲に町の一角にある自然公園へとやってきた。捕獲など歌っているがその姿は、大きな麦わら帽子をかぶりおしゃれとは無縁の白のタンクトップにこれまたおしゃれとは無縁なジャージを着ていた。その子供のようにはしゃぐ姿は、絵のようにまた写真のようによく映え夏の風物詩そのものだが同時にこんな暑い中よくやるなというのが公園に来ている大半の意見だった


「なんだこれ」中山は網を片手に人口川の黒い影を見つめていた

 その影は魚のように泳いでいるが魚ではない。はたまた水中を魚のように泳ぐイモリでもない、手足がないから、手足もなくて、魚のように泳いでいるのだから蛇だと中山は思ったが、それも違った。蛇にはない背びれのようなゴツゴツした突起があった


 中山はゆっくりと網をその黒い影へと振り下ろすと容易に取れた。網に入っていたのは穴が開くほど見た水生生物図鑑には載ってはいない生き物。爬虫類図鑑にも、父親の書庫で見た地球生物図鑑でも乗っていなかった未知の生物。その生物は僕のことをじっと見つめあくびみたいなことをしていた。中山はその生物を太陽の光で温かくなった空のバケツに冷たい人口川の水を入れその中に未知の生物を入れると家路へと帰っていった


「なぁーに。捕まえたの?」その家路の途中、中山の幼馴染。豊富香織とよとみかおりが何かを隠しながら走っていた中山に声をかけた

「な、なにも……」僕は、いつものように捕まえてきた生き物を隠した

「へぇー。まぁいいや!今度見せてね!」僕は珍しく香織が帰っていくのと同時に僕は走り出した。中山にはいつもなら強引に見てくるに珍しいと思った


 家に帰り、とってきた生き物を慎重に温度合わせと水合わせを行い120cmほどの水槽に投入した。


 全身10cmほどしかなく足のないトカゲのような、かといって蛇ではない。だが黒い鱗は蛇のようだが、蛇じゃないことを決め付けたのは口や背びれみたいな謎の突起だ。口は蛇のように細くはなくトカゲのように広い。だから初めて見たときにトカゲかなと思った。それを見れば見るほど、ほかの生物には言い表せない存在だと僕は悟った


 ますますこの生物の正体を知りたくなり父の書庫へと行き恐竜図鑑を取り出した

「体は、Tレックスの幼体に似てる。でも足もなければ手もない」僕は本を返し前に漫画で見たある言葉を思い出した。

混沌こんとん……ふふ」僕の懐かしの中二病は昂り一つの名前が浮かび上がった

「そうだ!名前はカオスにしよう」僕は濾過槽から出る水で遊んでいる生き物を見ていった。するとカオスはこちらを見た後に水面に顔を出し「ピャー」と鳴いた


 カオスを飼ってから数日たった

カオスの主に魚を食べる。特に好きなのはマグロである。小さな体に100gのマグロの刺身がすっぽとおさまってしまう。そして何よりも食いつきがいいのはザリガニでその反面、エビやカニが嫌いだった。魚でもないトカゲでもイモリでもない行動ばかりするもんだから中山はだんだんとカオスに魅了されていった


 中山はベッドに寝ころび就寝しようとしていたところにチャイムがなった

 時刻はもう22時を回り、あと数分もすれば23時になりかけた深夜、せっかく眠りにつこうとしていた体を無理やり起こすような出来事が起きた

 まぶたがコクリコクリと閉じかける中、なるはずのないチャイムがなった。中山はこんな深夜にいったい誰だろうと体を起こし恐る恐る覗き穴をみた

 だが誰もいない。不思議に思って開けてみると中山はその光景に驚きに似た恐怖を覚えた


 それはその開けたドアの前に立っていたのは、とても愛らしい少女だったから


 星がきらめく空の下。その少女は立っていた。

 アニメのような漫画のような白銀の長い髪に雪のように白い肌。雪ウサギのように真っ赤な宝石のような瞳をしていた。中山はこんなにも小さな子が深夜を歩いているのだからよっぽどのことと思うのと同時に犯罪の匂いがし今すぐにでもドアを閉めたい気分になった

「えっと……どなたさん?」中山はその子を確かめるように言った後「親は?ここら辺には見ない顔だね」と玄関から顔を出しあたりを見た

 その様子を中山から一切目を離さなかった少女はゆっくりと口を開いた。


「私の怪獣。返してくれませんか?」

 中山は聞き返した。「今なんと?」そう聞くと少女は中山のわきを小さな体ですり抜けると水槽に入ったカオスを見て言った

「帰るよ。私の怪獣。あなたにはやってもらうことがあるんだから」そしてその少女は水晶玉ほどの緑色の球をどこからかとり出すと眩い光が辺りを包み込んだ






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