転校じゃくて異世界に?コンテナ携え頑張ります

天神 運徳

序章

第1話 青少年なんだしちょっとくらいエロい夢見たっていいじゃないかよー

 その日、俺こと日野ひのあきらは、これまでの日常となんら変わらない生活をしていた。

 夜深しして眠い目をこすりながら母に起こされて、なんやかんやしてから登校。

 3限目の体育の後の空腹に耐えて終えた4限目。

 腹8分目で満足してポカポカ陽気で寝そうな5限目に、それは起こった。

 集会で聞き流されるだけの中身の薄くて、生徒の忍耐を鍛える事が目的の話しをする校長と。

 まさにメンインブラックを体現した日本人男性が教室へと入ってきた。


「校長、一体どうしたのです? それにそちらの方は……」

「こちらは日本政府から来られた方で、このクラスの日野君を本日ただ今を以て転校させる事になっています。日野君、保護者の方への説明もあるので、直ぐに荷物を纏めて私達について来るように」


 授業をしていた教師が校長に問いかけるも、半分スルーされて話しのターゲットが飛んできた。


「えっ、ちょっと待ってくだ」

「待てません。時間がないのです、質問は後で受け付けますから、手荷物だけ持って移動を開始しなさい」


 俺が戸惑っていると黒スーツにサングラスの男性が話しかけてきた。


「日野明、君の転校については日本政府からの勅令になる。これは異例の事態だが、従わない場合は君の家族共々、国外退去命令が出されると思ってくれ」

「そんな国外退去って追放でしょう、そんな無茶が」

「この会話だけで1分無駄にした。これから強制連行を開始する」


 男が何か合図すると教室前後のドアからだけでなく、窓からも迷彩服の男達が突入してきた。

 それからきっかり3秒後、俺は背中で手錠に拘束されて、口には銀色のガムテープを貼られていた。

 速報、軍人っぽい奴等は手品師だった、って呟きたい。

 俺は足まで手錠をかけられて担架に乗せられ、何処かへと運ばれていった。

 せめてガムテープだけは外してくれ、今日鼻詰まりが酷いんだって!!


「おい、担架止めろ! 対象が呼吸してない!」


 薄れゆく意識の中で、そんな声が聞こえた気がした。

 無呼吸は辛いよ……


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 目覚めるとロープでミノムシにされて、どこかのソファーに寝かされていた。

 頭側の1人掛けのイスには例の黒スーツが。

 向かいのソファーには両親が座っている。


「そんな……それじゃあこの子は、そのどこかも分からないヘンテコな世界に、誘拐されるって言うのですか?何とかならないんですか?」

「今は全世界をあげて研究しておりますが、まだ何の解決策も……ご子息を召喚されたご両親には、政府より見舞金として3億円が振り込まれ」

「明。アンタ、さっさとその異世界ってのに拐われちまいな!」

「んーーーんーーんーーーんーー!!」

(なっ、このクソババア! それでも親かよ!)


 直前まで沈痛な面持ちで頭を抱えていた両親だが、金に目が眩んで俺を売りやがった。

 異世界とか召喚とか、いい大人が頭ん中ガキみたいな事説明されてその気になってんじゃねえよ!!

 とかなんとか言ってやりたいが、生憎と俺の口にはガムテープ。

 鼻にはテレビの入院シーンとかで見る細いホースっぽい感触があるので、呼吸は確保されている。

 何かの契約書か誓約書に両親がサインすると、俺は再び担架に乗せられて運ばれていった。


「税金無しで貰えるって話しだから、2人で折半して人生やり直しましょう!!」

「ああ、そうだな、そうしよう!」

(なんか知らねえけど、ぜってー帰ってきて5千万ずつ要求してやるからな!!)


 ドナドナされながらも、俺は心に誓った。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 担架で運ばれた先で、荷台の持ち上がるトラックみたいなのに運び手達が乗り。

 俺は大型タンカーなんかに積みそうな、巨大なコンテナの上に乗せられた。


「ご両親にも説明したが、これから君は異世界へと召喚されるだろう。無事日本に帰ってこられたらなら、大都市やその周囲でも望む都市に住む家を与え、高額の年金を出すと国から確約されている。また異世界から連れ帰った現地人達が居るなら、君の妻として重婚も許可する。この世界中で見ても比較的平和な日本で、旨い食事と豪華な家、そして異世界から連れ帰った女性達とのハーレム。そんな夢のような生活がしたいなら頑張りたまえ」


 ベリベリベリッ!

 剥がされたガムテープは痛かったけど、俺は人生で過去の笑顔でいい返事をしたと思う。


「はいっ! 頑張ります!!」


 運び手と一緒に黒スーツは荷台に乗り下がっていき、コンテナには俺だけが残された。

 車が離れてから30分くらい経っただろうか?

 まさかこれ、ドッキリかと思い始めた頃、コンテナの下側が光り、魔法陣が現れた。

 そこからの記憶は俺にはない。

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