職業が「重戦士」で女らしくないとバカにされ追放された女性冒険者は母になる

風間 シンヤ

第1話:突然のパーティー追放とその理由

「カレン。お前はクビな」


「はぁ?」


突然言い渡されたパーティーをクビにする宣言に、思わず素っ頓狂な声をあげるカレン・フィリアル。あまりの出来事にポカンとするカレンに、このパーティーのリーダーであるバッカス・クレンダルはニヤニヤと笑いながら続ける。


「追放される理由に心当たりはあるだろ?」


「いや、全くさっぱり心当たりないんだけど……」


カレンはパーティーのお荷物になった事など一度もない。むしろ、魔物の撃破率だったらリーダーのバッカスよりも遥かに高いと自負している。むしろ、パーティーにはかなり貢献してきたつもりだ。追放される理由などどこにもない。

だが、一応カレンがパーティーを追放される理由として、カレンには一つだけあった。それは……


「やれやれ……だから、頭が脳筋な「重戦士」はこれだから困る……」


呆れたような溜息をついてそう言うバッカス。そう。カレンの唯一のパーティーを追放される心当たり。それは、カレンが冒険者適正職業「重戦士」である事だった。



冒険者は誰も彼もがなれる職業ではない。冒険者ギルド等で、その人に冒険者適正職業があるかどうか鑑定してもらい、その際、適正職業があれば冒険者になれるのだ。

だが、その適正職業も自分が思っていた職業になれるとは限らない。いくら魔法を使うのに憧れていても「魔導師」か「魔剣士」などの魔法扱う職に選ばれなければ、魔法を扱う事は出来ない。

そして、カレンが選ばれた職業は「重戦士」だった。魔法は全く扱えないが、大剣や斧などの大型の武器を振るって敵を粉砕する。パワーが取り柄の職業だ。

カレンは最初の内は自分が「重戦士」であるのを気にしていなかった。カレンはとある理由から、かなりの稼ぎを得られる冒険者になりたかった。だから、職業がなんだってどうでも良かった。

しかし、周りの冒険者達の反応は違った。「重戦士」とは男性が選ばれる職業である。しかも、パワーが自慢の職業だけに、筋骨隆々な男性が多い。そんな中で、女性でありながら「重戦士」に選ばれたカレンは、周りの冒険者達から、色々バカにされるような事を言われ続け、カレンも自分が「重戦士」であるのが恥だったのだと気づき始めた。


そんな中でも、そんな事は関係ないと自分をパーティーに勧誘してくれたバッカスに感謝し、これまで奮闘してきたのに……カレンは拳をギュッと握りしめていた。


「興味本位で女でありながら「重戦士」のお前を誘ったが、やっぱりダメだわ。「重戦士」なんて女らしくないわ。華がない。やっぱり女は「魔導師」とか「治癒術師」、同じ前衛職でも良くて「戦士」か「魔剣士」だわ」


カレンが「重戦士」であるのを散々罵るバッカスのその顔面を無性に殴りたくなったが、それをしたところで、自分が追放されるのも「重戦士」であるのも変わりはしない。


「……分かった。今すぐここを出て行くわ」


色々諦めたカレンはバッカスの追放宣言を受け入れた。


「懸命な判断だ。あぁ、それと、道具や装備は置いていってくれよ。それらはパーティーの共有財産なんだからな」


追放だけでなく、自分が獲得した道具や装備まで置いていけと言うバッカスに、今度こそ殴ってやろうかと思ったカレンだが


「安心しろ。有り金全部と、その大剣を置いていけとは言わん。置いていかれても、そんな大剣扱える奴なんてうちのパーティーにはいないしな」


バッカスの言葉に、カレンは思わず「良かった」とホッと安堵の溜息を吐いた。この大剣まで置いていけと言われたら、カレンは怒りのあまり目の前の男を真っ二つにしていたかもしれない。それだけ、カレンにとってこの大剣は大切な物だった。


だが、それで安心した為か、怒りが完全に諦めに変わったカレンは、大剣や私服以外の装備や道具も全部バッカスに引き渡してパーティーを去って行った……

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