未定
ささ。さん
【第1話それを、告白と呼ぶには、まだ遠いい。】
プロローグ
「告白」それは、心の内に秘めていたり、表に出すことに抵抗があった事実や気持ちを表明すること。恋愛においては主に、恋心を持った相手や付き合いたい相手に、その気持ちを表明することを指す。
多くの場合、告白する側にとっては重大かつ傷つきやすい局面であるため、しばしば多大な緊張を伴い、勇気を必要とするもの。
1話
俺の名前は、秋田蒼真16歳。この春から、ここ、南田東田高校に通う一見普通の高校生だ。ただ一つラブコメ好きを除けば。
ここで言う普通ってのはつまり、勉強面、運動面に置いて非常に平均点な成績であり、顔立ちも良くも悪くもない。かと言って彼女がいる訳リア充でもなく、唯平凡な日常を送る何ら変わりもない凡人ってことだ。
面接や自己紹介で好きな物は何か?と聞かれたら何と答えるだろうか?
きっと俺は、ラブコメを思い浮かべるだろう。Loveだけに。この親父ギャグはスルーしてくれて構わない、俺の中の鉄板ギャグなだけで、笑わせるつもりは毛頭ない。
ラブコメを知らない人に簡単に説明すると、登場人物の恋愛描写を主体に置いた喜劇・笑劇作品の事だ。更に分かりやすく言ってしまうと、世間一般では「オタク」なんて括りで親しまれてるこの名。それが俺の正体である。
突然だが、ここで今置かれている俺の状況は、人生で3番目くらいに、やばい瞬間だと言う事は、紛れもない。
なぜなら俺は、人生で初めて告白をするからだ。
もうそろそろ、太陽が沈み始める頃だろうか。
静まり返った放課後の教室。
お互い頬を赤色に染めた、少年と少女。
時より目線を逸らし、また見つめ合う。
そこには、2人だけの空間が広がり、周囲の物音は掻き消されてゆく。
例えばそれは、バットに打たれた野球ボールの音や刻まれる秒針の音。それら何もかもが、2人の聴覚を伝わない。
唯一聞こえてくるのは、自分の心臓の鼓動音だけだ。
それは、徐々に、早く、大きく、高鳴っていく。
2人の緊張がピークを迎える。
少年は、深く息を吸い、深呼吸する。
「ふぅー、ふぅー...。よし!」
そして、少年は覚悟を決めて告白をする。
「先輩!あの...。僕、先輩のことが...ことが...。」
「ずっと...ずっと好きでした!俺と付き合って下さい!」
「...ゴメンなさい」
「ーーーーー。」
こうして秋田蒼真の初告白が一瞬にして終わる。
秋田蒼真のステータス【初】シリーズ一覧に、新たに「初失恋」が更新されました。
ステータス【初】シリーズ一覧
*初寝坊
*初告白
*初失恋new
頭の中が真っ白になる。
え...何?俺、振られたの?なんで?どうして!?
まさかの返事に、メンタルがズタボロになる俺を横目に、1つ年上の白崎結は下を向いたまま必死に笑いを堪えている。
「クス...クスクス···」
「ハイ!カットォーー!!!」
「ちょっと!今のセリフわざと間違えたでしょ!?ねぇ、絶対そうでしょ?」
声を荒らげて、怒鳴り散らしてきたのは、2つ年上の安藤七海だ。
「ぷっはははははっ」
白崎結の笑いが溢れる。
「結、フラれた蒼真のライフは、もう、ゼロよ」
「え、何?俺もう早々に、死ぬ設定かよ?」
「次回、蒼真、死す。」
七海先輩が、ノリで受け返す。
一見真面目そうな印象を受ける彼女だが、実は以外にも、1番ノリのいい先輩である。
白崎結がとぼけ声と共に、舌を出して答える。
「あれ?間違えちゃった?てへぺろ」
わざとらしいその言い訳に加えて、「てへぺろ」なんて、古臭いセリフ。可愛いければ許されるとでも思っているのだろうか?
そうは、言っても許してしまう僕らを誰が責めるだろうか。
ちなみに、彼女は、学年で1位2位を争う女子なら誰もが羨む美貌の持ち主だ。それ故に今の舌出しもめちゃくちゃ可愛い。
「もー結、次は、絶対にふざけないでよね!」
「はいはーい、ふざけない様頑張ります!」
ふざけないに、頑張る必要があるか?今の返事 、自分の頭の悪さを物語ってるぞ。
とまぁ、思いつつも、言う度胸が無い自分が恥ずかしい。
「秋田くん、そんなに落ち込まないでよ」
「誰のせいだ!いくら演劇って言っても、結構傷付くんだわ!」
とりあえず、ここでさっきの話は取り消そうか。
初告白ではあるが、別に失恋した訳では無い。あくまでも演劇部の演劇に過ぎないのだから。断固として、俺の「初失恋」の文字は、ステータス表記から削除とする。
ステータス【初】シリーズ一覧
*初寝坊
*初告白
*初失恋⇐ 削除しますか?
・はい ⇐
・いいえ
「もしかして、秋田くん女の子に告白するの初めてだった?」
「初めてだったら、何か悪いですか?」
「いやいや、悪いとかじゃなくて、顔真っ赤にして告白してきたからさ、もしかして?と思っただけ」
「仮に初めての告白じゃなくても、顔真っ赤にするでしょ、普通。増しては先輩に初告白なんて、」
「そー言う可愛い所、嫌いじゃないよ(笑)」
今の一言で、世の男は一瞬で、彼女の虜になってしまうだろう。こんな勘違いしても、おかしくは無い返事に、俺も一瞬、心を奪われそうになる。
危ない危ない。
「先輩、今の答えは、世の男性に誤解を招くので辞めてください」
「ん?世の男性...?誤解...?」
「いや、何でも無いです。こっちの話ですよ」
さらに付け足すと、この人、何も考えないで、こー言う事、平気で言ってしまうタイプの人間なんだ。
一体今まで、何人の男を騙して来たのやら...。とまぁー、これが白崎結って人物かぁ。
「パンパン」
丸めた台本を片手に、手で合図する七海先輩に、注目をする。
「じゃー今日はもう遅いから、ここまで!」
「そうですね、このままじゃ、また俺が振られるだけですし」
「だから、次は頑張るって言ったでしょ!バカ!」
結先輩の蹴りが俺の腰に、ジャストミートする。
忘れてた、案外暴力的だったりもする。
「うぅっ」
「もぉー秋田くんが振られるような言い方するのが悪いんでしょ!?」
「え、俺のせいですか…そうですか…」
「そう君のせい、だから明日は違う告白してきてね」
「それ、ふざけた理由になってませんけど?」
「なに?もう一度蹴り喰らいたい?」
「おっしゃる通りですよ、結先輩」
「よろしい!」
M男では無い俺だが、何故か先輩に蹴られるのは、心地が良い、とまで感じてしまう。流石に、ここで蹴って下さい!なんて言ったらそれこそ、M男認定されてしまうので、渋々後に引く事にした。
きっと明日も結先輩に振られるのがオチだろう。
「台本通りにやってくれなきゃ、大事な台本の意味がないでしょうが結」
その大事な台本を跡が付く程に、丸めて机を叩いてるのは誰ですか?説得力に欠けてますよ七海先輩。
「分かりましたよ〜七海せ〜んぱい!」
「うむ!それで、よろしい!」
まさに七海先輩の言う通り。俺は別に悪くない。あくまで、俺は、台本通りにやったまでだ。
「あと、あんまりからかっちゃ蒼真が可哀想よ、結」
「だって、秋田くんが面白いリアクションするから、ついつい」
七海先輩にペコペコと頭を下げる姿も、これまた可愛い。
「まぁー確かに、良いリアクションだったわよ」
「ハハっー七海殿、有り難き幸せ」
「苦しゅうないぞ、蒼真。表を上げい」
「ハハっー」
さてと、これで江戸時代劇の完成だ。無論、1番身分が低い俺は、農民役。その次に、結先輩が貴族役。七海先輩は姫殿役って振り分けだろうか。
「秋田くんその下っ端の役似合ってるじゃん!」
「次は、時代劇の台本でも書こうかしら」
もうこの場で俺が反論した所で、農民役の俺に、異論は認めないだろう。待っているのは、刀で斬られるシーンだけだ。
秋田蒼真は、早々に教室を後にした。
下校途中、こんな演劇部員の元で、後3年も、高校生活送るなんて、入部する部活間違えたようだ。と、月が登り始めた空を、見上げながら、静かにため息を付いた。
でも実際の所、なんやかんやで先輩達と一緒に過ごす時間は、苦とは程遠く、楽しいとさえ思ってしまう自分が居るのも事実。心做しかそう確信する。
「ちょっと秋田くん、行くの早ーい!」
「部長を置き去りにするなんて、良いご身分なことね」
後ろから追いかける先輩2人に、背を向けたまま歩く俺は、ほのかに思った。このたわいもない時間が幸せなのではないかと。
ーーーここから、秋田蒼真の波乱万丈演劇部の物語が開演するのであった。ーーー
未定 ささ。さん @sasaryu
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