夢の世界

コオリ🍊

最初の犠牲

「やぁ、元気かい?」


塾からの帰り道、深く帽子を被ったスーツの男が声を掛けてきた


「こんな貧相な体を見てそう思えるかい?」


少年は男に聞き返した


「すまないね、俺は目が見えないんだ」


帽子を被った男はそう返した

少年はつまらなそうに


「そうか」と返した


「まぁ、俺のことはどうでもいい

夢の話をしよう」


帽子を被った男は話を持ち出した


「でも、ここではあれだな、カフェにでも行こうか」


帽子を被った男は淡々と喋り続ける


少年はそうですねと返すと大人しく帽子を被った男について行った



「で、夢の話ってなんですか?」


話題は少年が持ち出した


「良く聞いてくれたね、そのままの意味なんだよ。」


「そのままの意味って?」


少年は再び聞いた


「察しが悪いねぇそれともただ慎重なだけなのか、分からないけど話してあげよう

人は夢を見るよね?」


「うん、まぁ、見ますね

理想とか、幻とか」


「僕が君にあげる夢は寝ている時に見る夢の話しさ、

あれは、君の願望をそのまま映し出している物なんだよ、でも、君は君の思うように動ける世界じゃないんだ、ここまではいいかい?」


突然の質問に少年は


「あ、はい」


と答えた


その答えを無視するかのように帽子の男は

被せるように


「それでね、君には特別に君が夢の世界に入れるようにしてあげようと思ってね、どうだい?」


と尋ねた


「大変魅力的ですがお断りします」

少年は断った


「そうか!受けてくれるか!ありがとうじゃあ、移動させてあげるね!」


男は問答無用で、少年の顔を触り

少年は意識を失った



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


少年は夢を見る前に昔の事を思い出していた




少年は天才、神童という言葉が嫌いだった

少年は努力をしていた、褒めてもらう為に、でも、その夢は叶いはしなかった


少年は努力をし、認められたかった

だが、周りの皆は天才と崇めた


少年は怒りを覚えた


自分の努力が、まるで無かったかのように


生まれた時から持っていた物のように言われたから


そして、努力をやめ、成績が落ちれば

『堕ちた天才』なんて不名誉を与えられる


俺は、普通に認めてもらいたかった


友達と楽しく遊んだりしたかった


今まで見てきた親の顔は


まるで俺を道具かのように


見ていた


金儲けのための道具


と言うのが


親の中での俺の価値らしい


人は自分の理解できないものを否、自分の出来ないことをする人を天才と、勝手に名ずけ

勝手にあいつは天才だから越えられないのはしょうがねぇ、なんて自分に言い聞かせる

結局、天才なんて自分の普通を保つための道具に過ぎない


――ふーん君は本当に天才が嫌いで普通の人として扱って欲しいのかい?


そんな事はどうでもいいんだ



どれだけ頑張っても愛されない


どれだけやさぐれても放置される


そんな家庭よりも


僕は、僕は┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



――もうそれ以上言わなくていい起きな君にとっての幸せが待っているよ?


そうさせてもらうよ


――どうぞ、楽しいひと時を




俺は布団から出て暖炉の前に座る祖父に話しかけた


「ねぇ、おじいちゃん、幸せって何?」


「うーんそうだねここにおいで」


そう言うとおじいちゃんは膝を叩いた


「うん!」


と言いながら俺はおじいちゃんの膝の上に座った


「はい、ホットミルクだよ。熱いから気を付けてね」


そう言っておじいちゃんは俺にホットミルクの入ったコップを渡した


「ありがとうおじいちゃん」


「それで幸せが知りたいんだったね?」


「うん、そうなんだ」


「少し昔のことになるんだけどね、僕は1人ぼっちだったんだよ、愛し続けたカヨが死んで続けて一五郎まで死んでしまってね、莫大な財産とこの家は残っていた

もう、人と話すことも無く死ぬんだろうと思った所にお前を拾ったんだ、お前は僕に色んな事を教えてくれたんだよ

家族の大切さ、愛の与え方、会話をする嬉しさ、そしてかけがえのないもののように幸せなんだお前が居るから、この時間がずっと続けばいいと思っているんだよ私はね」

と、おじいちゃんはに向けて言っていた


だが、純粋な少年は愛に溺れ


さらに深い愛を求め


祖父からの愛情に飽き


他人の愛を求め


俺自身は嘘で塗りたくった


「愛してる」


と言い続け


結局誰にも愛されず


結局大切な人を見つけられず


自ら幸せを手放した


そんな俺は


もう嫌だ


初めて祖父以外に愛された時


愛してくれた人が言った言葉を守り続けた


アホみたいな俺を


誰も愛せない俺を



捨てよう



髪を切って


元の色に戻して


服も


普通のものに変えて


孤児院でも開こう


そうすれば


自分の手で自分を愛してくれる人を作れる


そうだよねおじいちゃん



――へいへい!久しぶりだねぇ


そうだな……


――夢でも変わらない気持ちは?


最悪に決まってる


――でしょうね、君は求め過ぎた


ハイハイ、悪かった


――でも、悪くない!俺らにならねぇか?


どういう事だ?


――俺たちと同じミセスにならないか?


ほう、どうせ断れないんだろ?


――正解、ミセスはお前の番号名前


はいよ、先輩貴方の番号は?


――無顔ノーフェイスのアランだ


出会い頭にそんなこと言ってたな


――あぁ、黒いフードを被ってたろ?


そうだな


――お前の顔だったから驚かすと悪いと思ってね失礼をした悪かった


いいんだよ、それより名前で呼べよアラン先輩?


――そう来なくっちゃ!


俺の視界はまた失われ


目を覚ました時には見ず知らずの女性の前に立っていた



「やァお嬢さん?ォレとゲームしない?」


言葉はスラスラと出てきた


「いいわよ?名前を先に教えて貰ってもいいかしら?」


「イイぜ!俺はミセス、いっぱい楽しもうぜェ!」


俺は最初の犠牲者にとある少女を選んだ



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈to be continued

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夢の世界 コオリ🍊 @yuka128

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