第15話実技の見学と反省会
午後の授業は体術、魔術コースの実技の授業の見学会だ。ジーグルドとドニと三人で自分のチームの連携具合を見る。
捕獲していた弱い魔獣を放ちそれを倒す。何体か倒すが、倒せはするがバラバラなのが分かった。
授業が終わり、教室に戻るときにティナに話しかかられた。
「難ありチームって何の事かなー」
ティナに無邪気に話しているが、あまり、いい意味ではないので深く考えないようにした方がいいのだが……。
「クセ強い」
「確かに、火力だけなら他のチームに勝っていると思うが、チーム戦となると難ありだな」
ユーリアの意見にベネディクトも賛成する。
「どういう意味だこの僕がいれば全て、勝利するのは当然の事ではないか」
「それ。ステンダメなとこ」
「なにっ!」
「過信。統制ない」
端的にダメなところを言うと、ベネディクトから叱責される。
「分かりやすく説明しないと、ステンには分からないぞ、それはお前の課題なんだろ? 自分で分かってるんだろうけど」
分かってはいるが、素を出さないように話をするには、片言というかロボットが話しているイメージをしなくてはならないのだ。この状態で話せと言われても困るが、素を出すつもりはない。
「もし強い魔獣が出てくる。連携しなきゃダメ。なのに、一人突っ走る。味方後始末」
「僕が、一人で倒せばいいだけだ」
「はあ、二人ともダメだな。ジーグルドは見てて何か分かったか? こういう時は第3者の目から見た視点がいいと思うんだ……」
2人の問答に頭を抱え、ジーグルドに話を振る。
「僕は戦術的な事は分からないのですが、その統制という部分ではなっていないと思います。
ベネディクトさんの声が全く皆さんに聞こえていないのは、分かりました」
ベネディクトは大きく頷き、ジーグルドの肩を掴む。何故か感動しているようだった。
「分かってくれたか、俺の苦労を……今日の反省会するぞ。放課後コジュマのカフェだ。いいな」
コジュマは友達ができて初めて行ったファミレスのような雰囲気のカフェだ。
反省会をしててもガヤガヤとした雰囲気なので、白熱しても周りに迷惑はかけないだろう。
「ユーリアも伝えたい事あるなら、言葉じゃなくて文字でいいからまとめておいて」
ベネディクトはこそっとユーリアに耳打ちすると、ドニと話に行った。
*
放課後、カフェに向かう。ジーグルドは一足早くホームルームを終えたようで、待っていてくれた。「皆さんこちらですよ!」と手を振ってくれる。
商品を注文してティナがジュースで音頭をとる。
「ではでは、チームの親睦を深めましょう。乾杯」
「趣旨変わってるけど、親睦も大事だもんね」
ドニがティナの親睦会ムードに同意してくれる。協調性を育むには必要であるからだ。
「僕は反省会というからここに来たのに、親睦を深めるのか?」
ステンは不満そうに顔をしかめ腕を組む。仲良くする気はなさそうだ。
「ま、いいじゃないかー。楽しく反省しようぜ。たまには息抜きも必要だろう?」
空気が悪かなりそうなところを感じ取ってか、ベネディクトは場を和ませる。
アネットは嬉しそうに頰を赤らめながら、ジュースをストローで一口飲んだ。
「私、鍛錬ばかりであまりお友達ともこういう事した事なかったのです。なので、とても嬉しいです」
つまり、一人で放課後は鍛錬していたという事である。確かにクラスにいる時もあまり友達とはしゃいでいるイメージはなかった。
「で、ユーリア今日の反省点まとめられたのか?」
「一覧にしてある」
ベネディクトに言われた通り、思いついたままに書き連ねたのだ。乱雑ではあるがいろいろ書いてある。
ティナをはじめとして皆驚いていた。
「うわ、いっぱい書いてあるね!」
「僕も一緒に見学してたのにここまで思いつきません」
「本当にユーリアは優秀だね。魔力の使い方まで指摘があるよ。僕も魔術師だけど、ここまでティナの事とか見てなかったな」
*
書いたメモの一覧はこれだ。
ステン
自分の実力を過信。相手の意見は聞かない。自分が一番。率先して動いているが今のままでは前衛には向かない。
魔法、剣技共に優秀だが、合わせ方がまだまだ未熟。工夫が必要。
無駄に綺麗さを求めがち。
魔法を使えるなら万が一のために防御魔法を瞬時に使う練習をした方がいい。
アネット
剣を持つと性格変わる。猪突猛進。周りが見えなくなる。
獲物を見る目が怖い。
動き的には一番前衛に向いているが、守りがまだ浅いため隙ができる。
左の踏み込みが甘い。左からの攻めの返しも弱いため、左から来た敵を弾く時に距離がでない為カウンターにあいやすい。
ベネディクト
チラチラこっちをみすぎる。外野に集中せず自分の目の前の敵に集中すること。
ステンが前へ出すぎることを考え周りを動かそうとしている姿勢は良かった。
剣圧はすごいが剣技はまだまだ。型が不安定のため、素振りや1対1の練習をして体に動きを覚えこませた方がいい。
ティナ
魔力量は豊富。出力の加減を抑えないと最後まで保たない。
技に派手さを求めすぎる。技が大きくなりすぎる。
魔力量を絞っても質を上げれば十分なので、質を向上させる特訓をすべきだと思う。
ステンは指摘されたのが気にくわないのか、そっぽを向く。
*
「僕が防御だと、それに人の話を聞かないとは……全て僕が引き受けるのだから問題ない」
ユーリアは怒った。時間がない中急いで書き留めたのに、さっきから言ってる事が一点張りで主張を変えようとしない。
「防御魔法も貼れないんだ。優秀な魔力持ちだと思ったのに、アネットはそういうのは苦手そうだから、器用そうなステンが使いこなせばかっこいいと思ったのに……。
アネットのカバーをしながら自分にも防御壁使うとか男としていいと思う。
ティナにばかり頼れないしさ……か弱い女の子なんだから……。
ベネディクトの指示も聞こえないなんて……きっとステンは剣を持つと周りが見えなくなっちゃう単細胞だったんだね。
いや、そんな事ないよね今日は緊張してただけだよね。兵法って授業で習うし、単細胞なわけがないもん。
ステンは成績優秀で皆の憧れの魔力持ちなんだから!」
ユーリアは皆の前で初めていっぱい話した。周囲は驚いている。とうのステンは怒涛のように言われた内容を一つ一つ整理しているようだが、驚きもあってかうまくまとまらないようだ。
「私は座学でも優秀だし、女にばかり頼るわけにもいかない。アネットが苦手というのであれば、優秀な私が鍛錬して防御魔法を使いこなし、カバーをしてやろう。私は皆の憧れでなくてはならないからな」
単細胞だという嫌味部分は綺麗に除外されたらしい。
これでステンが使い物になる事を祈る。
「なんというかユーリア、ナイス」
ティナが労ってくれた。皆きっとステンの話に内心ストレスを溜めていたのだろう。
「ユーリアは怒ると喋るんだな」笑いながらベネディクトに言われ、ドニもティナも笑いだした。
残りの3人はあまり接点がないので、私があまり話さないのを知らないので、なんで笑っているのか分からないようだった。
「とりあえずは、個人の能力の向上、ユーリアの視点を参考にやってみるか」
「ステン、よかったら私防御魔法教えるよー。私も魔力の質を上げるの練習したいから、一人でだと寂しいから付き合ってくれると嬉しいな」
「おう、特別付き合ってやろう」
「じゃあ、アネットは俺と左側の克服な。俺の剣技もまだまだだから直した方が良いところあったら教えてくれると助かる」
「はい、承知しました」
ユーリアが爆発した事で、うまくチームが回っていくそう感じた。ティナは躊躇いがちにドニに聞く。
「ドニ魔力どうなの?」
「まだ魔法は使ってないからよく分からないんだよね。明後日が楽しみ」
「そっか、もと通りになっているといいね」
すると、ユーリアが言葉をかける。
「魔力が回るか今試す?」
ドニは何をするか分かったのか顔を真っ赤にして断る。
「い、いや、明後日で十分だよ」
「分かった。魔法使う前確認。ジーグルドよく見る」
「分かりました。僕も楽しみです」
皆が少し打ち解けたところで今日の親睦会兼反省会は解散となった。
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