第64話デリラ視点

 失敗してしまいました!

 レナードを追い込み過ぎてしまいました!

 私も今回の件では冷静な判断と行動がとれていないです。

 ドルイドの迫力に圧倒されてしまっていたのかもしれません。

 私の希望としては、レナードに勝ってもらいたかったのです。


 別にレナードの方がドルイガより好きだというのではありません。

 レナードの方が操り易く、御姉様を独占するのに都合がいいというだけです。

 レナードならば、王太子殿下と共同する事で、遠方に追いやれるからです。

 少しでもレナードと一緒にいたい王太子殿下を唆せば、大魔境遠征軍を編成してレナードを連れて行ってくれます。

 前回の時のように、大魔境の辺境伯に任命して、単身赴任させてくれます。


 ですが今回は追い込み過ぎてしまったので、レナードがひねくれてしまいました。

 前回辺境伯を返上した時以上に頑なになっています。

 レナードがドルイガを殺したら、平気で辺境伯位を返上して完全にハント男爵家に婿入りしかねません!

 そんなことになったら、一瞬たりとも御姉様の側を離れないでしょう。

 邪魔をすれば、私はもちろん、父上であろうと母上であろうと、容赦なく斬り殺す事でしょう。

 それくらいの狂気を感じました。


「父上、母上、どうすればいいでしょうか?」


「何を慌てている、デリラらしくもない」


「でも、父上」


「心配するな。

 デリラの判断も言動も間違ってはいない。

 婿だったレナードよりも、姉であるヴィヴィを優先して当然なのだ。

 あとの手当てをしておけばいい。

 レナードがドルイガを斃すことができたら、今回の戦いの大手柄だ。

 これを褒賞しなければ、帝室の威信にかかわる。

 それに今までの動きを見れば、王太子殿下の力が帝王陛下を上回るのも確実だ。

 王太子殿下が簡単にレナードを手放すはずがない。

 大魔境や遠方に単身赴任させることは出来なくても、隠居を阻むことくらいは簡単にできる。

 日中は宮廷に出仕させることができれば、夜までヴィヴィを独占しようとは思わないことだ。

 ハント男爵家も跡継ぎは必要なのだ。

 デリラは結婚する気も子供を産む気もないのであろう?

 だったらそれくらいで手を打っておけ」


 父上の申される通りでした。

 母上も大きくうなずいておられます。

 御姉様も微笑んでくれています。

 レナードが勝ってくれたらそれが最良の結果かもしれません。


 ドルイドが勝ったら、御姉様は皇后に成れるかもしれませんが、私は御姉様から引き離されてしまうでしょう。 

 最悪の場合は、殺されてしまうでしょう。

 それくらいなら、レナードに勝ってもらった方がいいです。

 問題は、相討ちになった場合です!

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