第35話デリラ視点

 母上に言われてもう一度よく考えてみました。

 確かに視野が狭くなっていたのかもしれません。

 レナードが殺されていたら、王太子も生きていないと言う点と、その場合に帝国の後継者争いが勃発して、帝都が大騒動となると言うのも、母上の申される通りでしょう。


 ですが、根本的な所は間違っていないと思います。

 正しい判断を下すには、正確な情報が必要不可欠です。

 本当ならば、帝都屋敷に使い魔を送って情報を集めたい所ですが、帝都屋敷にはまだドルイガが居座っている可能性があります。


 こうなったら仕方ありません。

 送りたくはないですが、レナードに使い魔を送りましょう。

 後は王太子です。

 私が王太子のレナードへの想いを感づいたのと同じように、王太子も私が御姉様をお慕いしている事に感づいていたので、互いの利益を図るために、密かに手を組んで情報交換をしているのです。


 他人に知られたら、私と王太子が密かに通じていると思われてしまいます。

 王太子の寵愛争いなど興味ないですし、権力にも興味ないですから、誤解で政争に巻き込まれたくないですので、絶対に誰にも知られてはいけない関係なので、頻繁に連絡するわけにはいけません。


 ですが今回は特別です。

 王太子の生死を確認しなければ、ハント男爵家の行動方針が立たないのです。

 御姉様を護るための基本方針を決められません。


「デリラ。

 私、レナードに使い魔を送りたいのだけれど、いいかしら?」


 私が隠れて使い魔を送ろうと考えていると、御姉様が御自身でレナードに使い魔を送ると言いだされました。

 御姉様はレナードと色恋で結婚されたわけではありませんが、とても御優しい御性格ですから、幼馴染としての情は厚いのです。

 私や母上が、レナードが死んだ前提や、ドルイガが負けた前提で話を進めているので、心配になられたのでしょう。


「そうしてください、ヴィヴィアン。

 ヴィヴィアンは最初から最後まで隠しの間にいるので、一番魔力が回復する可能性が高いでしょう。

 ドルイガに見つかる可能性が低い所に使い魔を送り、現在の帝都の状況を聞いて下さい」


「はい、母上」


 御姉様は一番最初にレナードに伝令用使い魔を送られました。

 ブリーレ謀叛事件の時に親しくなった、王太子親衛隊の女騎士にも伝令用使い魔を送り、王太子の現状を確認されました。

 流石に直接王太子の生死を聞くのは不敬過ぎるので、自分がドルイガに襲撃を受けたが、他に帝都で襲撃を受けた者はいないかと、遠回しに聞かれました。


 ですがハント男爵家の本領地は、帝都から遠く離れています。

 いくら伝令用使い魔でも、送って直ぐに相手に届きません。

 返事が戻って来るにも時間がかかります。

 その間にもう一度話し合いました。

 

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