第5話

ここんとこ忙しかった。


なんかバタバタしてて、まるで、引越しと結婚式をいっしょにやってるようだった。


それでも、


そんな日々でも


ジロは俺のわきの下で眠る。


ときどき、脚をぐうんと伸ばしてみたりする。


ねむる。ねむる。


そんなジロを見ていて、


自分がねむっているのかいないのか


わからなくなったんだよ、


俺。


今朝、時計の針が5分進む間に


1時間くらいの出来事の夢を見た。


とても短い時間に


長い人生を生きることは可能なのかもしれないな。


逆にどんなに長生きしても


あっという間の人生を送る事だってありそうだ。


ジロの人生は、今、俺の想像を超えて


猛烈な早さで過ぎていっているのかもしれない。


なあ、ジロ。


おまえが俺と遊んでいる10分は、


ひょっとすると5時間ぐらい遊んでいる感じがするんじゃないのか?


「10分は10分ニャ。」


あっそ。


「ネコと遊ぶのが面倒だから、そんなこといってるんじゃないのかニャ。」


そ、そんなことないよ。俺はだな・・・


「怪しいもんだニャ・・・」


そう言えば、こないだ『ミッション・インポッシブル』観てきたんだけどさぁ・・・


「話をそらすニャ!」


昨日は演劇観て来たぞ。


「何の劇ニャ?」


山田太一のさ、「私のなかの…なんとか」ってやつなんだけど結構豪華キャストだったんだけどな・・・


「誰、誰が出てたニャ?」


ええっと、細川俊之とか、有森也美とか、佐藤慶とか、・・・


「そ、それはすごいニャ。」


だろ?はなしもけっこー面白くてさあ・・・


「どんな話ニャ?」


それがさあ、不動産屋がさあ、あ、これが細川俊之なんだけどね・・


「うんうん・・」


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