第32話 実物を見に行く

 とある日曜日、先日亡くなった母の納骨の準備などで朝から出かけた帰り道、とても天気の良い日だったので、思い切って欲しい候補に挙がっているバイクを販売店に見に行くことにしました。


 目的は実物を見ることもありますが、もうひとつ試乗について確認するもの目的のひとつにありました。

 大型二輪免許を取得したとはいえ、こちらはまだ取得後1週間も経過していない大型二輪素人です。そんな素人に本当に高価なバイクの試乗をさせてもらえるのか、これは実際に行って聞いた方が早いという判断です。

 駐車場に車を停めいざ店内へ入ると、天気も良いこともありお客さんは少なかったです。ただこの販売店、輸入車の店で輸入車を買ったことが無い僕は、若干緊張してました(汗)。


 ほどなく店長さんが来てくれて、どんなバイクが良いか聞いてくれて、中古車や新 妻は店内の休憩スペースで頂いたコーヒーを飲みながら時間を潰していたようですが、女性の店員さんと何やら楽しいそうに話をしていました。

 僕が良いなぁ~と思っていた車種は試乗車のみあるということで、店内ではなくガレージの方へ案内してくれて、あれこれ説明を頂きました。やはり動画ではなく、実物を前にすると、俄然欲しくなってしまうものです(汗)。


『あの・・・実は免許は持っているのですが、先週取ったばかりなんですが、試乗することは出来るものでしょうか?』

『はい、もちろん大丈夫ですよ!』


 ま、何十年前に免許取ったとしても、それまでバイクに乗ってこなければ、取得した時期などあまり意味はないですからね(汗)。

 入り口に試乗するさいに貸してくれるウェアがありましたが、流石にヘルメットとグローブは自前のものを使いたいので、その日は見学だけで後日改めて試乗をお願いすることにしました。

 妻は女性店員さんと話をしていましたが、店員さんが僕が戻るのを見ると


『最近はお客様のような年代の方が、夫婦タンデム(二人乗り)でご旅行に行かれる方が多いんですよ』


 と妻にも旦那のバイク購入を勧めてくれる援護射撃、流石営業さんです(笑)。

 でも、バイクに乗ったことも無い妻ですから


『怖くて乗れませんよぉ、もし居眠りしたら落ちちゃうし(汗)』

『大丈夫ですよ、リアキャリアといってものを入れることが出来る箱を付けると、それが背もたれ代わりになりますし、そうそう落ちるようなことはありませんから(笑)』

『でも・・・』

『では、一度経験してみましょう!旦那様のお目当ての車種は〇〇でしたよね?』

『あ、はい』

『それでは、申し訳ありませんが、もう一度ガレージの方にお越し頂けますか?』

『いいですよ』


 妻と2人で、僕が良いなと思っていた試乗車のところへ。


『では旦那様、一度バイクに跨ってください』

『こうですか?』

『はい、ご自身の足でそのままバイクを立てておいてくださいね』

『は、はい』

『では奥様、そのまま自転車に乗るように、ここに足を掛けて乗ってみてください』

『あ、え?この状態で乗るんですか?』

『はい!』

『ここに体重掛けても大丈夫ですか?』

『はい、全然問題無いです!』(ここでチラっと僕を見る営業さん)


 えぇ、わかってますよ・・・もし、ここでしっかりバイクを支えられず、妻が体重掛けたときにバランスを崩して妻を怖がらせようものなら、妻はバイクに乗るなんて絶対思わないでしょうからね・・・でも、少し目が怖いんですけど・・・。


『うわぁ、怖い怖い・・・』

『はい、そのまま右足を後ろに回すようにして跨っちゃって下さい』


 えっ?もう乗ってたの?

 結婚当初に比べるとだいぶスリムになったのは実感していましたが、気が付いたらタンデムシートに座ってました(笑)。

 バイクも大型で重量もあるのが安定している原因だとは思いますが、実は僕が一番びっくりしてたと思います。なんせバイクで2人乗りなんて、ほとんどしたことが無かったですからねぇ。

 妻を後ろに座らせたままバイクを左右に振ってみても、別段重くなった感じも無く、これなら問題なく2人乗りは出来そうです。

 いや、こればかりはほんと、大型バイクに跨っても両足が地面にベッタリ付く、大きな体に生んでくれた両親に感謝ですね。


 バイクから降りた妻に


『ねぇ、このバイクに跨ってるのを見て、バイクが小さく見える?』

『ううん、ちょうど良いくらいだよ』

『うん、それらな良かった』


 近いうちに試乗しに来ることをお店に伝えて、初の大型バイク見学が終了しました。

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